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アドバンス・ケア・プランニング(ACP)で考える自分らしい人生の終え方
皆さんは、アドバンス・ケア・プランニングという言葉を耳にしたことがありますか? アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning)は、医療の現場では「ACP」と略されていて、「あなたの大切にしていることや望み、どのような医療やケアを望んでいるかについて、自ら考え、また、あなたの信頼する人たちと話し合うこと」(※1)とされており、厚生労働省は「人生会議」という愛称をつけています。
人生を考えるときに見落としがちな『その後』の大切さ
ご自身の人生について考える時、例えば「素敵な人と出会って、結婚して、子どもをもって、老後は夫婦で楽しく暮らしたい。」そんなことを考えておられるかもしれません。また、将来の出来事を設定するのではなく、「自分らしく、楽しい人生を送りたい。」など、どのような人生のイメージなのかを想像する人もおられるでしょう。しかし、楽しいことを中心とした人生を想像できても、その後についてはどうでしょうか?ずっと健康で過ごせるとよいのですが、私たちにはいずれ「死」が訪れます。
長寿時代における『いのちの終え方』を考える重要性
日本では令和4年の平均余命は男性81.05歳(※2)、女性87.09歳(※3)と長寿ですが、人は必ず老いますし、認知機能も低下します。また、若かったとしても事故などにより突然いのちの終わりを迎えるかもしれません。人のいのちは永遠ではないのです。認知機能が低下していたり、ご自身の意思を伝えられない状況になってしまい、いのちの終え方を自分で決められなかったり、伝えられない可能性もあります。その時、あなたの意思は反映されるでしょうか?また、あなたの代わりに重要な決定をすることになる大切な人々はどうしたらよいのでしょうか?
調査結果から見るACPの現状と課題
令和4年の「人生の最終段階における医療ケアに関する意識調査報告書」(※4)(一般国民3,000人を対象、以下、一般国民のデータを示します)では、アドバンス・ケア・プランニングに関して「よく知っている」と回答した人は5.9%、「知らない」と回答した人が 72.1%で、残念ながらアドバンス・ケア・プランニングは一般の人々にあまり知られていません。また、人生の最終段階における医療・ケアに関する希望について、考えたことが「ある」と回答した人は51.9%ですが、実際に家族等や医療・介護従事者と話し合ったことがある(詳しく話し合っている、一応話し合っている) と回答した人は29.9%で、人生の最終段階における医療・ケアを考えたことはあっても、話し合ったことのある人は少ない結果となっています。あなたの人生はあなたのものです。あなたらしく生きるためには、あらかじめ自分が人生を終える時どうしたいのか考え、大切な人と共有しておく必要があります。
自分らしい人生を実現するために
あなたにとって大切なことは何ですか? 大切な人と一緒に過ごすことでしょうか、それとも仕事をすることでしょうか。大切にしていることが複数あるかもしれません。何を大切にしているか考えることは、アドバンス・ケア・プランニングをはじめるきっかけになるかもしれません。また、どのような医療をしてほしいでしょうか、反対にしてほしくない医療があるでしょうか?ご自身のことを自分で決められなくなったとき、誰に代理で決めてもらいたいでしょうか?
もしあなたが20歳であれば、30歳、40歳と年を重ねればご自身の状況も変わりますし、考えも変わって当然です。また、健康な時と、大きな病気にかかった時では、大切にすることも変わるかもしれません。アドバンス・ケア・プランニングで大切なことは、その都度話し合いを重ね、大切な人とあなたの考えを共有することです。
厚生労働省は、いい看取り・看取られとして11月30日を「人生会議の日」と定めています。どうぞご自身の人生をより豊かにするために、ご自身の人生の終え方について考えてみましょう。あなたのために、そしてあなたの大切な人のために。
参考
※1 厚生労働省:人生会議とは? | ゼロからはじめる人生会議 (2024年10月27日閲覧確認)
※2 厚生労働省:令和4年簡易生命表(男)(2024年10月27日閲覧確認)
※3 厚生労働省:令和4年簡易生命表(女)(2024年10月27日閲覧確認)
※4 厚生労働省:人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査 報告書(2024年10月27日閲覧確認)
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