【学生インタビュー】第21回ACジャパン広告学生賞 テレビCM部門 優秀賞受賞 野村紗楽さん・小城優さんにお話をお聞きしました!

2025/07/15

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ACジャパン広告学生賞は、若い世代が広告制作を通して公共広告への理解を深め、「公」への意識を育むことを目的に2005年に設立されました。本年度の優秀賞受賞作品「それ、ヤングケアラーかも」制作チームのメンバーである、学芸学部メディア創造学科3年次生の野村紗楽さん(写真左)・小城優さん(写真右)にお話をお聞きしました。

試行錯誤の制作段階

Q. ヤングケアラーというテーマに興味を持ったきっかけはなんでしたか?また、作品制作に向けてどんな準備をしましたか?

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野村さん:「ヤングケアラー」という言葉を、私は最初、どこかで聞いたことがある程度でした。ニュースで目にしたことはあっても、自分の言葉で説明できるほどの知識はなく、正直、遠い世界の話のように感じていました。 そんな中、このプロジェクトのリーダーがテーマを提案する機会に「ヤングケアラー」を取り上げていました。調べていくうちに、世の中で重要な問題であるにもかかわらず、まだまだ認知されておらず、「もっと多くの人に、この現実を知ってもらいたい!」という思いが芽生えてきました。

その思いが制作の原動力になりました。準備段階では、チーム全員で情報収集を行い、関連するドキュメンタリーや映像作品を何本もリサーチしました。どんな表現なら伝わるのか、どんな言葉が心に残るのか。何度も話し合いを重ねながら、作品の方向性を少しずつ形にしていきました。

Q. 制作段階で苦労したこと、それを乗り越えられたエピソードを教えてください。

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野村さん:映像制作は、想像していた以上に大変なものでした。

社会問題をテーマにすることで、重圧みたいなものを感じていたチームが特に悩んだのは、「どう表現するか」という部分です。話し合いを重ねるたびに、さまざまな意見が飛び交い、全員が納得できる案にたどり着くまでには、かなりの時間を要しました。

ようやく構成が固まり、撮影に入ったものの、実際にカメラを回してみると「なにか違うな・・」。でも、そうした違和感をそのままにせず、意見交換しながら思い切って構成を見直し、別日に再度集まって撮り直すこともありました。制作中に自分とは違う視点に触れることで、表現の幅が広がり、チームとしての一体感も深まっていったように思います。締め切りギリギリまで粘って、細部までこだわる姿勢を貫いた結果、チーム全員が「これでよかった」と思える作品を完成させることができました。

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小城さん:映像制作の準備段階では、想像以上に多くの壁にぶつかりました。特に苦戦したのが、キャストの手配です。今回の作品では、子どもから高齢の方まで幅広い世代の方々にご出演いただく必要がありましたが、その調整が思った以上に難しく、スケジュールの調整や連絡のやりとりに多くの時間を費やしました。

締め切りが迫る中、急遽キャストの出演が難しくなったり、撮影場所の許可取りが難航したり、スケジュール変更を何度も余儀なくされました。想定外のタスクが次々と発生し、そのたびに柔軟な対応力が求められました。それでも、私たちが最後までやり遂げることができたのは、チーム全員が「話し合い」を大切にすること、役割分担を明確にしながら、限られた時間の中で効率的に動くことを意識していたからだと思います。

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苦労したからこそ、見えてくるものがある

Q. 制作してみて、気づきや学びはありましたか?

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小城さん:映像制作を通して、私が最も強く実感したのは、「細部まで作り込むことの大切さ」でした。撮影してみて、自分たちには、ある程度の達成感があっても、先生や他の学生に映像を見てもらった際に「もう少し細部までこだわって作り込んだ方が良い」と言われたことがありました。

たとえば、学校のシーンでは、キャストに制服を着用させるだけでなく校内掲示板を自作する、コンビニのシーンでは、店員の制服に付ける名札まで忠実に再現するといった細かな部分にも気を配ることで、よりリアルな雰囲気づくりにこだわりました。初めて映像を見る人にとっては、もちろんすべてが新しい情報。だからこそ、瞬時にかつ自然にシチュエーションが伝わるように、細部の演出に手を抜かないことの大切さを学びました。

野村さん:最初は漠然とした知識しかなかったこのテーマの学びを深めていくうちに、日常的に重い責任を抱えながら生活している子どもたちが、想像以上に多く存在していることを知り、大きなショックを受けました。同時に、こうした社会的なテーマを「映像で伝える」ことの難しさにも直面しました。ただ事実を並べるだけでは伝わらない。映像という限られた時間の中で、「伝えたいこと」を見る人の心に届けるには、演出や台詞の一つひとつに意味を持たせ、細やかな工夫が必要です。

映像の技術だけでは、伝えたいことは伝わらない。大切なのは、テーマをきちんと理解し、真摯に向き合う姿勢だと強く感じました。今回の制作を通して得たこの気づきは、今後どんな表現に取り組むときにも、私の中で大切な軸になると思っています。

経験を、未来の挑戦へ

Q. 作品制作を経験したことで、今後挑戦してみたいことや、将来の夢に影響はありましたか?

小城さん:今回の映像制作と受賞経験を通して、私は自分自身の変化を強く感じています。

日常生活の中でも、特にゼミ活動や就職活動に対して、以前よりも積極的に行動できるようになりました。以前は迷ったりためらったりすることも多かったのですが、「挑戦してみよう」と思えるようになったのは、この経験のおかげだと思っています。

最後までやり遂げ、受賞という形で評価されたことで、「すべての努力には意味がある」という確信を得ることができました。将来は、どのような形であっても、仕事で誰かの助けになりたい——そんな思いが、はっきりと自分の中に芽生えています。これからも、目の前のチャンスに臆することなく、一歩ずつ前に進んでいきたいと思います。

最後に

Q. 後輩や同じ分野を志す高校生にメッセージをお願いします。

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小城さん:映像制作に限らず、少しでも興味を持ったなら思い切って挑戦してみてください。私も最初は強い関心があったわけではありませんが、メディア創造学科で授業を受ける中で映像に惹かれ、学びを深めるうちに貴重な経験を得ることができました。「あの時頑張ってよかった」と思える経験は、きっと自信となり、未来を切り拓く力になるはずです。

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野村さん:最初は不安もありましたが、仲間と意見を出し合いながら試行錯誤を重ねた時間は、かけがえのない宝物になりました。ヤングケアラーという繊細なテーマに真剣に向き合ったことで、人の心に届けたいという強い思いを持てました。思いを込めて取り組めば、きっと誰かに届きます。興味があることには、ぜひ挑戦してみてください。

プロフィール

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同志社女子大学 学芸学部メディア創造学科 3年次生 野村紗楽
同志社女子大学 学芸学部メディア創造学科 3年次生 小城優

第21回ACジャパン広告学生賞 テレビCM部門 優秀賞受賞