【椎名亮輔教授メッセージ】

この本は私の10年越しの研究の成果です。20世紀スペインの作曲家、モンポウはそれほど知られていないかもしれませんが、静謐で香りの高いピアノの作品を多く残しました。ふつう現代作品というと不協和で八釜しく耳を逆撫でするようなものをイメージしますが、彼の音楽は寡黙で控えめ、心に染み入るもので、みなさんにぜひ聴いてほしいと思います。地中海、カタルーニャ、フランス、ピアノなどの要素が相俟って、矛盾と軋轢に満ちた強引な前衛性に対するアンチテーゼとして、「再び始めること」を主張した独自の美学は、今こそ高く評価されるべきでしょう。