現代社会学部公開講座 第24期 町家で学ぶ京都の歴史と文化 ~第3回 『日本の眠りの文化ー京都西川の歴史を中心に』~
講師:森田 直樹 [株式会社京都西川]
毎日の生活に欠かす事が出来ない“睡眠”。健康な日常生活を送るためには、食事・運動と並んで睡眠によるしっかりとした休養は必要不可欠です。本日は、そんな私たちの日々の健康を支える寝具づくりに真摯に取り組み、「ふとん」という新しい生活の文化を発信し続けておられる株式会社京都西川の森田直樹さんに起こし頂き「日本の眠りの文化―京都西川の歴史を中心に―」と題してお話しを伺いました。
さて、寝具に関わる会社で「西川」という名前で思い当たる会社はどれだけあるでしょうか?実は西川産業、東京西川、西川リビング、などなど全て同じ布団メーカーと思いきや会社はそれぞれ別とのこと!しかし、上記の会社の源流をたどると、すべて「西川甚五郎商店」に行き着くようになっています。つまり、最初はすべて同じ会社だったのです。
「西川甚五郎商店」は、1566年に西川仁右衛門(初代)によって開かれたもので、当初は近江から全国各地に麻布、呉服、綿織物、蚊帳(かや)などを運び、行商をしていました。この西川甚五郎商店は、近江商人の代表的家系で俗に「近江八幡の御三家」といわれる名門商家だったそう。その後 五代目である利助の時に江戸京橋の弓問屋「木屋久右衛門店」を買い取り「弓」の販売を手がけ、京都にも進出。京都製弓具の江戸での販売権独占に成功し、
更に京都の弓問屋を買収し西川京都店を開設しました。これが京都西川の原型とのこと。その後、明治20年前後からふとんの製造販売に着手。その頃のふとんは各家で女性が作るのが一般的だったそうで「ふとん」を製造販売するのは革新的なことだったようです。蚊帳のような季節商品から年中需要のある「ふとん」で売り上げを安定させ、優良な企業へと京都西川が成長していくまでの歴史を詳しく知る事が出来ました。
後半は、森田さんに代わり京都で長年にわたり座布団を製作しておられる(上杉寝具加工所社長)上杉義明さんに座布団づくりの実演をしていただきました。布の準備や綿の入れ方、房の付け方などを上杉さんや上杉さんの奥様から丁寧に教えていただき、みなさん初めて間近で見る職人技に目が釘付けです。ちなみに手作りの座布団は、長時間座っていても血管が圧迫されにくいため、機械で作られた座布団とは違って足がしびれにくいそうです。座布団が完成すると会場からは拍手が沸き起こりました。さらに実演では、上杉さんが一つ一つの工程を手際よく丁寧に進めておられる様子を見て、職人さんの技へのこだわりや仕事の緻密さを感じ取ることができ、京都西川の歴史とともに京都の職人の技に触れ学ぶことの多い楽しい講座となりました。