同志社女子大学同窓会《Vineの会》第8回《Vine》講座

2020/10/09

開催日|2020年10月3日(土)

今出川キャンパスジェームズ館にて、講演「デザインでみる小津安二郎の世界」を開催しました。講師には、本学表象文化学部日本語日本文学科の宮本 明子助教を迎えて、総勢約30名の参加者がひととき日本映画の世界を覗き見ることができました。

宮本先生は、現在、大学で講義や演習、卒業論文を担当されていますが、授業では広く〈日本文化〉を対象とされています。来年度は京都を歩く「フィールドワーク」の授業も受け持たれることから、改めて京都の歴史や文化を学びたいと思っておられるそうです。

先生の小津安二郎氏研究のきっかけは、学生の頃に手にされた小津安二郎監督撮影台本だそうです。小津組スタッフのインタビューや、監督直筆資料群について調査も進めておられます。そして、その成果となる『小津安二郎大全』を2019年3月に、刊行されました。また、直近では、2020年9月9日にNHK総合チャンネル「歴史秘話ヒストリア」の「小津安二郎 日常というドラマ」の特集番組にも出演されました。

中高年世代なら、登場人物をみて、「あの人、水戸黄門に出た人。」「あの人、寅さん映画のお寺の住職さん。」と思い出せますが、今の若い人たちから見れば、映画スターといえども、知らない人ばかりです。私自身、小津安二郎の映画は、「失われた美しい日本語の教科書」であると思っていました。難解で退屈そうな映画だと。

ところが、先生はそんな映画の魅力とは、どこにあるのだろうと考えられて、小津監督の直筆台本に出会われました。丁寧に記された文字、軽妙洒脱なデザイン。敬遠していた世界は、実はもっと身近にあるのではないかと実感されて、監督と作品について調査を重ねてこられました。今回は小津安二郎監督作品のデザインに焦点をあてて、その世界の一端を紹介していただきました。

小津は東京の裕福な家庭に生まれましたが、10歳ぐらいのころ三重県松阪へ移住。幼少期から、デッサン力の才能を見せていました。学生時代には寄宿舎を追い出され、映画三昧の青春時代を送ります。写真班で中国戦線へ行く30代。軍報道部映画班員としてシンガポールへ行く40歳になる頃。その頃に各国の映画を見る機会に恵まれましたが、アメリカなど日本が太刀打ちできない相手だと痛感しました。50歳になるころから、1年1作、日本人の日常そのものを題材にした映画製作を続けます。そして60歳で人生を終わりました。

彼の作品には、まず美しい女優たち。さりげない演出で使われている素晴らしい絵画や、どこまでもデザインを追求した小道具の数々がみられます。ドキュメンタリーでもない限り、映画は無から始まるのですから、様々な要素を監督以下スタッフで作り上げているのですよね。うどん屋の看板やかつどん屋の屋号などで小津映画の世界観を出しているのだとは知りませんでした。日常って結構同じことの繰り返しですが、その中で淡々と人生を語っている役者たちにも気づかされました。

宮本先生の優しいお声にうっとりしている間に時間も過ぎていきました。最後に「一番のお気に入りの作品は。」と質問しましたら、「大人の見る繪本 生れてはみたけれど。」というお返事でした。機会があれば、みなさんもご覧になって下さい。

レポート:《Vineの会》役員