2025年7月 今月のことば

2025/06/27

『人間が生きてゆくのに大切なものは、パンではなくて希望だ。』

これは、学生時代にある恩師が私にかけてくれた言葉です。当時、運動部に所属していた私は、厳しい練習に追われる日々を送っていました。「雨が降って練習が中止になればいいのに」と願ってしまうことも度々ありました。そんな折に、恩師はこの一言を伝えてくれました。当時の私には、この言葉の意味を完全に理解することはできませんでした。パンは生きるために必要な食べ物。希望もまた大切だとは思うけれど…、「どちらも大切に」という意味なのだろうか―そんなふうに解釈しながらも、どこか心に残る言葉でした。

それから月日が流れ、様々な経験を重ねる中で、ふとこの言葉を思い出すことがありました。そしてある時、聖書の中にとてもよく似た言葉があることに気づいたのです。

 

『人はパンだけで生きるものではない。神の口から出る一つ一つの言葉で生きる』 
《マタイによる福音書 4章4節》
日本聖書協会『聖書 新共同訳』より

 

パンは、私たちの命を支える物質的な糧です。ただ、それだけでは人は生きていけません。言葉や信念、希望といった、目に見えない価値が、私たちの心を支えてくれるのだと、この聖句は語っているように思います。

おそらく恩師が私に伝えたかったのは、こうしたことだったのでしょう。日々の糧があっても、希望を失えば人は前に進むことができません。逆に、どんなに苦しい状況にあっても、希望さえあれば、再び歩き出す力が湧いてきます。学生時代に心に残ったあの一言が、年月を経て聖書の言葉と重なり、今では私自身を支える一つの真理となりました。

希望とは、未来を信じる力です。それを胸に、今日という一日を大切に生きていきたいと思います。

(E.Y)