2024年5月 今月のことば

2024/05/01

求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。
門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる。

《マタイによる福音書 7章7節~8節》
日本聖書協会『聖書 新共同訳』より

 


この3~4年、世界規模の新型コロナ感染症の対策の中不自由を強いられてきました。新型コロナ感染症は重症化を起こすことがありますが、昨年ノーベル賞を受賞されたカタリン・カリコ博士によって開発されたmRNAワクチンによって、多くの患者さんの重症化が抑制されたことがデータから明らかになってきました。

一見理不尽に思えることも、見方を変えれば、理にかなった状況に変えることができます。「不合理の合理性」、この言葉を私に教えてくれたのは、大学ラグビー選手権で史上初の3連覇を成し遂げた、今は亡き元同志社大学の平尾誠二さんです。
著作「理不尽に勝つ」の中でこのような言葉を述べています。

「人は理不尽な経験をすればするほど強くなる。」

カリコさんの研究人生は苦難の連続でした。
ハンガリーで生まれ、科学が好きで、研究者となられましたが、経済が停滞、研究グループが解散、ヨーロッパで研究職が見つからず、30歳の時に夫・娘と3人でアメリカに移住、ぬいぐるみに隠していた持参金はわずか1千ドルでした。ある大学からオファーがあるも上司に妨害され別の大学に移籍、その後研究費不足でチームが解散する中なんとか研究を継続、研究費を申請するも不採択が続きました。
42歳時にDrew Weissman博士と共同研究を開始、50歳時に非炎症性mRNAを発見、漸く研究助成金を得ましたが、この間も彼女は冷遇され続け、人事で2度降格され、またがんが見つかりました。
その後ビオンテック社に移籍、ドイツとアメリカを行き来する生活の中、mRNAワクチンの開発に成功、2020年に新型コロナワクチンのPhase3臨床試験で有効性が判明しました。

カリコさんは言います。

「ワクチンを打っている最中に、私を相手にしてくれなかった人たちのことを思い出しました。でも私は幸運だったと思います。彼らがいなければここまで辿り着かず、今回のワクチンもできなかったかもしれません。『もっといい実験をしたい効果を証明したい』と思ったことで研究が進み、科学が進歩しました。
(中略)どうか夢を追ってください。難題があれば、どうすれば克服できるか考え、夢を追い続けるのです。そして、自分が取り組んでいることを愛してください。一日中やり続ければあなたの趣味になり、人生そのものになります。私にとって科学は呼吸みたいなものです。すべてが科学なのです。あなたも情熱の対象が何であっても、それを追求すべきです。科学者は、生涯歌い続けるロックミュージシャンと同じ。私も命ある限り、研究を続けていきます。」

これからの人生、皆さんにも、そしてこれから先、大なり小なり、いろんな苦難が押し寄せてくるかもしれません。けれどある時は妥協し、ある時は目の前の状況にひれ伏し、そしてそれをなんとか乗り越える、その先にこそ本当の粘り強い自分というものが見えてくる、自分自身の人生を振り返ってみても、そんな気がします。

これからの皆さんの夢と、チャレンジに期待しています。

 (K.Y.)