2024年11月 今月のことば

2024/11/01

先日、私たちは同志社女子大学の職員であり、心強い存在だった方を突然失いました。秋学期の初日、ほとんど人がいない新島記念講堂での始業礼拝にも、彼は静かに参加してくれていました。彼との思い出は、具体的にいつから始まったのか覚えていませんが、彼の提案で奈良県の教育プログラムを持つ3つの高校で出張授業を行う事になりました。この活動は10年以上続き、彼は毎回、私と一緒に高校の出張授業に同行してくれました。

出張授業は先生を目指す高校生たちに向けたもので、大学の通常授業とは異なる内容でした。中学・高校での出張授業は一期一会の緊張感があり、ある種とても難しいミッションでもありました。この授業は私のイズム満載の授業で興が乗るとすこし突飛な内容になることがあり、高校の先生も少し苦笑いすることすらありました。授業が上手くいこうがいかなかろうが、彼はいつも教室の後ろで見守り、授業が終わるといつも明るい笑顔で「ご苦労様」といって声をかけてくれました。彼の忍耐強さ、寛容さと明るさに助けられてその授業を10年以上続けることが出来たと思います。一方、彼は厳しさと公平さを兼ね備えた人でもあり、困難な決断が必要なときでも、彼は常にフェアな選択を重んじたように思います。私もその姿勢を尊敬していましたし、多くの人々が尊敬する理由の一つだったと思います。

聖書の「コリントの信徒への手紙一」13章4-7節には、「愛は忍耐強い。愛は情け深い。ねたまない。愛は自慢せず、高ぶらない。礼を失せず、自分の利益を求めず、いらだたず、恨みを抱かない。不義を喜ばず、真実を喜ぶ。すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える。」日本聖書協会『聖書 新共同訳』より と記されています。この聖書箇所は彼が私にしめしてくれた人間として大切な精神を象徴しているように思います。

今、彼の魂が穏やかに休まることを心から願い、彼の温かな笑顔とその優しさがこれからも私の心に生き続けます。私は彼の遺した精神を大事にして残りの人生を歩んでいきたいと思います。

(T.K)