2023年6月 今月のことば

2023/06/01

すべての人が食べて満腹した。そして、残ったパンの屑を集めると、十二籠もあった。

(ルカによる福音書 9章17節)

日本聖書協会『聖書 新共同訳』より

 


 

「これしかない」「ない」ととらえ何もしないのか、「こんなにある」「ある」ととらえ行動するのかによって、その先の結果は大きく異なるものになるのではないでしょうか。

イエス・キリストが空腹の五千人を満たされた「五千人の給食」と呼ばれる有名な奇跡があります。今回は弟子たちの態度に注目してこの出来事について考えてみたいと思います。

夕暮れとなり集まった大勢の人々が次第に疲れてお腹を空かせていた時に、弟子たちは自分たちにできることがあるとはまったく考えず、人々を解散させるようイエスに願います。イエスはそんな弟子たちに「あなたがたが彼らに食べ物を与えなさい」と促します。それに対して弟子たちはパン五つと魚二匹「しかない」から無理だと答えるのです。

イエスは、そのパン五つと魚二匹を祈って祝福し、弟子たちに手伝わせて人々と分かち合いました。するとなんと男性だけで五千人、女性や子どもを入れればもっとたくさんいたとも考えられる大勢の人々が食べて満足しただけでなく、残ったパン屑を集めたらなんと十二籠「もあった」といいます。

とても不思議な話です。しかし、弟子たちの姿は、私たちの姿によく重なる点があります。それは、私たちは与えられているもの、例えば才能、環境、金銭、家族や友人など、を過少評価しがちで、感謝することも行動を起こすこともなく最初からあきらめてしまいがちだという点です。

イエスは、「これしかない」だから「できない」と考える弟子たちと一緒にいて下さり助け導いてくださいます。そして弟子たちはあなたたちには「こんなにある」、周囲の人々のために「できることがある」と行動するように励まし、その結果として生じるさらに豊かな恵みについてもはっきりと示されました。この奇跡は弟子たちの「しかない」との思いが「もあった」との思いに変えられた奇跡ともいえるのではないでしょうか。

(B.D.)