2023年5月 今月のことば

2023/05/08

あなたがたはこの世に倣ってはなりません。むしろ、心を新たにして自分を変えていただき、何が神の御心であるか、何が善いことで、神に喜ばれ、また完全なことであるかをわきまえるようになりなさい。

(ローマの信徒への手紙 12章2節)

 

すると主は、「わたしの恵みはあなたに十分である。力は弱さの中でこそ十分に発揮されるのだ」と言われました。だから、キリストの力がわたしの内に宿るように、むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう。それゆえ、わたしは弱さ、侮辱、窮乏、迫害、そして行き詰まりの状態にあっても、キリストのために満足しています。なぜなら、わたしは弱いときにこそ強いからです。

(コリントの信徒への手紙Ⅱ 12章9~10節)

日本聖書協会『聖書 新共同訳』より


 

いつの時代もアイドルは人気です。誰しも一度はアイドルに憧れた経験があるのではないでしょうか。人気者の歌手やアーティスト、芸能人のイメージを持ちますが、英語の“idol”は偶像を意味します。崇拝の対象・虚像・幻想などを指し、私たちの持つアイドルのイメージとは異なりますが、憧れ、求める対象として、ある種の共通点があるようにも思えます。

私たちは日々、「もっとあの人みたいであれば良いのに」「あの人みたいでない私は価値がない」「言われたようにできない自分はダメだ」などの考えに安易に囚われてしまいます。それは他者からの評価を基準として自身を認識し、人間らしさでもある“不完全さ”を受け入れることに抵抗してしまう結果なのではないでしょうか。他者が持つ、自身には無い何かに憧れ、求め、それらによって自身の不完全さを補おうと、誰かの一部を真似て継ぎ接ぎしていくことで、理想とする“完璧”な自分になれるという“幻想”を見てしまいます。継ぎ接ぎされたものの内側に在る本来の自分と、自分のような“虚像”との間で葛藤し、結果的に惨めさや虚しさを感じてしまうという悪循環に陥ってしまうのかもしれません。

自分の理想とする誰かのように、自分を他者に似せていくために生きていくのではなく、困難や苦悩を通して、本来の自分は不完全で弱さや脆さがあるのだと気づき、「それも自分である、それで良いのだ」と、前向きに受け入れることの大切さを教えてくれています。もちろんそれは簡単ではないでしょう。そのためには助けが必要であり、謙虚さを持って神への祈りの中で声を上げること、それが“弱さを誇る”ことであり、不完全であったとしても、ありのままの私たちをさらけ出し、神によって満たされていくことこそが“完全なこと”だと伝えているのではないでしょうか。神はありのままの私たちの存在を、生まれる前からすでに無条件に愛してくださり、愛されようと自分を偽って見せる必要は無いと感じさせてくれます。

皆さんは今、どのようなことに対して自身の弱さや脆さを感じているでしょうか。弱さを偽ったり、隠そうとせず、それも自身の一部として受け入れ、その弱さを開示し、必要な助けを求める。その謙虚さと勇気による、本当の意味での“強さ”を持って解放され自由になりなさい、そう教えてくれているのではないでしょうか。

(T-S)