2022年5月 今月のことば

2022/05/06

家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられた。彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。

(マタイによる福音書 2章11節)
日本聖書協会『聖書 新共同訳』より


 

これはイエスが生まれた時、3人の賢者がイエスに黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた内容です。これはまさに、世界で初めてのクリスマスプレゼントと言えるのではないでしょうか。

黄金は「金」のことで、イエスが王位の象徴であることを意味しています。

では、乳香や没薬はどんなものかご存知でしょうか。どちらもカンラン科の植物の幹に傷を付けて浸出した樹脂を固めたもので、香料として使われます。

乳香は祈り(神権)の象徴で、別名をフランキンセンス Frankincenseと言い、そのレモンのような清楚な香りから神を表す聖なる香料として寺院などで使われます。また、丁香柿蒂湯(ちょうこうしていとう)という漢方処方にも配合されています。柿蒂はいわゆる柿のヘタのことで、それに乳香をはじめとする10種類以上の香りのある生薬で構成され、しゃっくりを止める効能があります。

一方、没薬は死の象徴で、防腐剤として死者の体に塗られていました。ミイラの防腐剤としても使われていたため、別名をミルラ Myrrhといいます。イエスが亡くなった時、その遺体に没薬が混ざった香料を添えて亜麻布につつまれています(新約聖書 ヨハネによる福音書 19章39~40節)。没薬も香料のほか、生薬として用いられます。西洋では、殺菌、脱臭作用を有することからミルラチンキとして風邪によるのどなどの炎症に塗布剤、うがい薬として用い、中国では、駆瘀血、消腫、止痛などの効能があることから打撲傷、心腹の諸痛、腫れ物による腫れや痛みになどの治療に用いられています。

黄金は現在でも高価ですが、乳香や没薬も当時は金と並んで大変な貴重品で同じ重さの金と取引されることもあったようです。しかし、現在ではどちらも2~3千円程度でネットで簡単に購入することが可能です。実際の香りに触れてみたい方は、京田辺キャンパスの宗教部内に現物がありますので、ご覧いただければと思います。

(Ikki)