2021年7月 今月のことば

2021/07/01

事実、御自身、試練を受けて苦しまれたからこそ、試練を受けている人たちを助けることがおできになるのです。 

(ヘブライ人への手紙 2章18節)
日本聖書協会『聖書 新共同訳』より


 

陸上競技の400mハードルという種目がオリンピックに男子100m、男女マラソンと並んで日本がフルエントリーで参加し続けていることを皆さんはご存じでしょうか。この現状を築き上げた1人の陸上選手の人生について紹介させていただきます。その人の名は、岡山県出の長尾隆史さん(63)といいます。

長尾選手は元々400mが専門で、高校時代にはインターハイで全国優勝しています。筑波大学へ進学後、400mハードルの選手に転向しました。転向後、めきめきと頭角を現し、それまでの日本選手権の優勝記録を一気に数秒も引き上げました。そして、アジア人で初めて50秒という大きな壁を突破します。その実績が買われ、彼はモスクワオリンピックの代表に選ばれました。しかし、日本はモスクワオリンピックをボイコットし、出場することができませんでした。

その後、彼は次のロサンゼルスオリンピックを目指して選手を続けます。一方、長尾選手の活躍でそれまであまり目を引くことのなかった400mハードルという種目に多くの後輩選手が参入してきました。中でも、大森、吉田という2人の選手は長尾さんの記録を追い抜き、世界レベルまで達してしまいました。長尾選手も決して記録が落ちていたわけではないのですが、大森、吉田の2選手がロサンゼルスオリンピックの代表に選ばれ、彼は落選となりました。これを契機に日本は代表選手を送り続けるようになりました。

長尾さんはロサンゼルスオリンピックのあと現役を引退し、地元の公立高校の教員となり、若手の育成に努め、校長で定年を迎えました。その直後に、オリンピアン枠として2020年東京オリンピックの岡山県の聖火リレーのメンバーに有森裕子、森末慎二、高橋大輔らとともに選ばれました。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行により大会は延期となり、友人からは、「長尾はよっぽどオリンピックの神様に嫌われているんだなあ。」と言われ苦笑いをしたそうです。

2021年5月19日に、長尾さんは延期されていたオリンピックの聖火ランナーとして岡山県で聖火をつなぎました。長尾さんにオリンピックの神様が試練を与え続けられるのか、最後は微笑んでくれるのか、このChapel Newsが出るころにその結果がわかることでしょう。

(Ikki)