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教員が語る同志社女子大学の学び

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「アントレプレナー」
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「地域経済」

起業・事業創造に向けた
心構えと実現力を研究。
とくに女性起業家に
着目しています。

社会システム学科

加藤 敦特任教授

不確実性に挑戦するアントレプレナー、地域企業、IT企業が研究対象です。

経営情報論をフィールドとする私の研究のキーワードは、IT、中小企業、アントレプレナーシップです。いずれも「不確実性への挑戦」という共通項があります。例えば中小規模のIT企業が厳しい経営環境のなか、どう課題を克服していくか。アントレプレナーがどのように新しい事業を創造していくか。リスクに挑みながらの新しい価値創造について調査・研究しています。

アントレプレナーシップは「起業家精神」と訳されることがありますが、実は精神論だけではありません。本来の意味は、起業や社内ベンチャーなど新事業を生み出す「心構え」と「実現する力」です。では「心構え」「実現する力」はどのように養成していくべきでしょうか。このテーマを特に女性起業家に着目し、研究しています。ジェンダーを専門とする先生と共著で「ジェンダー平等とアントレプレナーシップ」についての書籍を公刊する予定です。

「心構え」の養成に不可欠なのが、心から共感できるアントレプレナー、言い換えると起業家や社内ベンチャーを興した女性と出会うことです。そうした場を創出するために、本学では「女性のための起業家セミナー」を開催してきました。
同セミナーは、在学生・卒業生を対象に女性の能力向上と社会貢献を支援する「女性アクティベーションセンター」のプログラムのひとつで、多様な分野で活躍する女性起業家を講師に迎え、体験談を語ってもらいます。セミナー最終回にはビジネスプランコンテストを実施しており、起業家育成を目指す取り組みのひとつとして実施しています。
私はセミナー開催を担うとともに、女子大学での学びがアントレプレナーシップの養成にどう影響を与えるかといった点にも着目し、研究を行っています。

起業・事業創造に向かう上で、鍵となる「心構え」は、3つあると言われます。1つはリスクを過度に恐れない強さ、2つ目が従前のやり方にとらわれずイノベーションを目指す革新性、そして最も重要な3つ目は、マーケットを見極め、何が求められているのか、事業機会を追求する探求心です。こうして自分が取り組みたいことが決まったら、それを皆にわかってもらうよう、ビジネスプランを作ってみます。ビジネスプランは銀行などに出す融資申込書ではないので、キッチリとした緻密さは不要で、イラストなどを用いたわかりやすさ、メッセージ性が重視されます。小さなことでも、商品・サービスや仕事の方法などに独自性や工夫が含まれていれば、また熱意が感じられれば、きっと誰かが注目してくれます。

それに対して「いいね」という仲間が5人集まれば起業できると言われており、世界のアントレプレナーシップ教育ではビジネスモデル作成が重視されています。
ビジネスモデルの作成は、学生、会社員、子育て中でも取り組むことができ、環境が整えば「起業する」「社内ベンチャーを立ち上げる」など人生の選択肢を増やすことが可能です。

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このほか「不確実性への挑戦」のテーマのもと、「グローバル」と「ローカル」の複眼で地域企業、特にIT会社の研究に注力しています。ウクライナ紛争など、先が読めない国際社会の動向は企業にとって、リスクとして認識されています。これは世界市場を標的とする大企業だけでなく、地域企業・中小企業にとっても同様です。インバウンド需要、海外進出、技術研修生などの言葉は、地域社会と国際社会が結びついていることをよく示しています。ビジネスについて学ぶためには、地域社会の延長に国際社会がある、国際社会と言っても一つ一つは地域社会から成り立っている、という見方をすることが大事だと考えています。
もう一つ、大きな不確実性の源泉としてITの急速かつ予測不可能な進展があります。AIやロボットなど技術進歩で、会社のビジネスや働く人の仕事は大きく変わる可能性があるとされています。すでに、大手企業を中心に事務作業の自動化、対面取引のオンライン化が進み、マニュアルにもとづく定型的な仕事はどんどん減少しています。もちろん地域企業にとっても、ITをどうビジネスで活用してゆくかは、将来を大きく左右するでしょう。こうした中、企業の「不確実性への挑戦」に対する研究を深め、新しい時代を生き抜く本学の学生をはじめとした若い世代へ向け、その成果の還元を目指しています。

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卒業研究を通してビジネスを知り、地域に役に立つ経験を積みます。

「起業家の創発と地域経済」を掲げる私のゼミでは、経営学の基礎知識を修得し、企業について実践的に学ぶため、3年次春学期は大企業、秋学期は中小企業・地域企業を取り上げます。企業情報の収集・分析、基礎的な財務分析のスキルを身につけたうえで、中小企業の動向を調査・分析した『中小企業白書』や『小規模企業白書』を読み、地域企業への理解を深めていきます。そして企業をとりまく環境や課題についてグループごとにテーマを設定し、仲間と研究を行い、その解決策を探っていきます。
グループ研究を経験することで、学生一人ひとりが自分の関心のある業種やビジネスに当てはめて考えられるようになり、4年次生で取り組む卒業論文のテーマ設定へとつながっていきます。

例えば、最近、若い女性に人気のある三重県伊賀市の商店街について研究した学生がいます。まず、徹底的に文献調査をして、なぜ人気を集めているか仮説を立てて、次に現地で取材やインタビューを行い、考察を深めて研究成果をまとめました。
独自視点でテーマ設定をし、自らアポイントメントをとって地域の方にインタビューをするという経験は、学生にとって成長のチャンスです。

学生が研究内容を丁寧に説明し、その地域や企業に「熱い思い」を抱いていることを伝えれば、インタビューやアンケートの協力をいただくことは難しくありません。もちろん中途半端な問題意識や研究テーマであれば、共感も協力も得られません。準備を徹底してから交渉することはマナーだと伝えており、実際に社会人に必要とされるマナーを磨くよい機会になっています。さらに、自分の考えを受けとめてもらい、研究成果を報告して喜んでもらって、地域の役に立ったという成功体験も積めます。

卒業論文への取り組みをきっかけに、卒業後の進路を見定めた学生も多数います。例えば、地元の商店街をテーマに掲げ、多くの方にインタビューを行い、多様な交流を持ったことで地元に貢献したいという新しい目標を見いだし、地域企業に就職したゼミ生がいます。
また、ゼミ活動を通して地方経済を徹底的に研究したという経験をアピールし、経済紙の記者として就職した卒業生もおり、それぞれ社会で活躍してくれています。

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ジェンダーフリー視点から、夢に向けての心構えと実現力を養える大学です。

たとえ将来、起業や社内ベンチャーに取り組まなくても、その「心構え」や「実現する力」を養うことは、先行き不透明な現代社会で、主体的に生きぬくうえで重要です。そしてもうひとつ大切なのは、グローバルとローカルを複眼的に見て考えることができる力です。国際スタンダードを理解し、地域の個別性にも目を向ければ、どんな状況にも対応できるでしょう。本学の社会システム学科には、こうした力を養うために、皆さんがトレーニングできる場が沢山用意されています。例えば、ビジネスマネジメントコースの講義科目でGoogleやAmazonなどがグローバル展開するサービスを学び、京都学・観光学コースのゼミで地域企業や商店街の取組みについてフィールドワークを行うことができます。しかも、女子大学ですから、授業やゼミ、課外活動などはジェンダーフリーの視点から精査して提供されており、学生達は問題意識を共有する仲間と、ジェンダーフリー社会をより進展させるためにどうすべきか、意見交換し合い、成長し合うことができます。

キリスト教主義、国際主義を教育理念に掲げる本学は、教員それぞれが国際的な問題意識と、地域の課題についても高い意識を持っています。なかでも社会システム学科は、京都学・観光学コースや多文化共生コースといった名称に象徴されるように、国際的でありながら地域のこともしっかりと見ていくことができます。
本学科での学びを通して、対象に近づいて見る「虫の目」、俯瞰で全体を見渡す「鳥の目」、社会の流れを見る「魚の目」を持つことができると思います。それはすなわち、多様な選択肢があることを知り、自分の可能性を見つけることにつながるはずです。

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受験生のみなさんへ

大学入学時は、将来自分がなりたい姿についてぼんやりしているかもしれませんが、自分の本当にやりたいことを探し出せる学科が社会システム学科です。私はこれまで400人ほどのゼミ生を送り出してきましたが、幅広い分野でそれぞれが活躍しています。企業に就職した学生も、市役所で働く学生も、社会保険労務士になった学生も、銀行に就職した後CAになった学生も、企業家になった学生も、さまざまです。多様な可能性に満ちた学科であることを実感しています。

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加藤 敦特任教授

現代社会学部 社会システム学科 [ 研究テーマ ] 起業家の創発と地域経済

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 焼酎の米国輸出拡大に向けたソーシャルメディアの活用
  • 女性のセカンドキャリア:パートの正社員転換制度を設ける企業がなぜ少ないか
  • 伝統工芸産業の海外進出とインフルエンサー・マーケティング
  • 伊賀上野「新天地Otonari」はいかに空き店舗対策を進めたか
  • コロナ禍からの地域商店街の在り方:大阪近郊における事例研究
  • 若者世代が兼業農家という働き方を選択するためには
  • サブスクリプション時代に中小CDショップが生き残るには
  • 地域ポイント制度はキャッシュレス化を推進するか
  • 京友禅、未来への開拓:生き残り続けるためには
  • 旧屋敷・町家「ならまち」におけるコロナ禍のリピーター増対策
  • 海外展開と人材確保:ベトナムとフィリピンにおけるリスクマネジメント
  • コンビニオーナーの財務シミュレーション:労働環境を改善し収益も得るには
  • Instagramが若者の消費行動に与える影響
  • 地価推移からみたニュータウンの復興:千里地区と泉北地区の比較
  • 古着市場で値下がり率が低いのはどのようなブランドか:売価比率調査と考察
  • バンビシャス奈良:Bリーグ運営会社の取組みと更なる発展
  • くらしの満足度を上げるために :淡路島の商店街活性化に向け
  • 公立動物園のマネジメント:収益性と公共性の両立を図るには
  • 韓国化粧品のマーケティング手法を日本企業はどう応用するべきか
  • 財務報告からみる美術館の収益多角化