「女性の生涯」
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「睡眠」
妊娠から育児期の
睡眠を研究し、母子の
心身の健康を支援しています。
看護学科
宮川 幸代准教授
睡眠の課題をクリアにして、お母さんもこどももHappyに。
女性の生涯にわたる健康支援のなかでも、特に「睡眠」に焦点を当てた研究を続けています。「睡眠」は、人の健康を支える大切な時間であり、その中でも妊娠・出産・育児期の女性にとってその重要性が注目されています。2023年度からは母子健康手帳(通称:母子手帳)に、保護者とこどもの「睡眠」の記録項目が追加されました。
私が睡眠に着目したのは、助産師として臨床現場で働いていたときです。妊婦さんの睡眠に関する悩みを聞くなかで「眠気」の現象に関心を持ち、大学院で研究を続けました。
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)においても眠気が出現するため、妊婦さんのSASの可能性を探るほか、睡眠が分娩時にどのような影響を与えるかについても研究しました。すると、7割ほどの妊産婦さんが、睡眠の問題を抱えて妊娠期を過ごしていることがわかりました。
妊娠中と出産後では、生理的には脳波のレベルが変わることもわかっています。妊娠中は脳波レベルが高齢者のように変化をしていて睡眠が浅くなり、少しのことでも目が覚めてしまうため、妊娠前よりも寝返りを多くうつようになります。この妊婦さんの寝返りは、胎児の低酸素状態を防ぐことにつながるため、悪くは働いていないという結論に至っています。睡眠が浅くなることも「赤ちゃんのため」に必要なことだとわかれば、妊婦さんの気持ちが少しは救われるでしょう。
一方、出産後はまた脳波レベルが変わり、今度はお母さんは横になるとすぐ眠れるようになります。深い睡眠が短時間でとれて、育児に必要な体力を温存できるようになります。
こうした妊娠中・出産後の睡眠の変化をお母さんたちに伝えて理解を広げていくことが私の研究の社会還元の形だと考え、本学の所在する京田辺市の地域子育て支援センター事業の一環として「睡眠教室」を開催しています。
ご自身の睡眠や、こどもの寝かしつけに悩む子育て中のお母さんを対象に、前述のような妊娠期・出産後の睡眠のメカニズムなどをお話しし、具体的な睡眠の悩みをうかがってアドバイスを提供しています。医療的な支援が必要であれば専門家の受診を勧めるなど、問題の背景にも配慮しながら丁寧にお話を聞くようにしています。睡眠教室の開催にあたっては、ゼミの学生も協力してくれており、とても心強いです。
お母さんたちは自分の体を二の次に子育てをされていることが多いので、睡眠に関する問題がクリアになれば、母も子もHappyになれると考えて、今後も研究を深めていきます。
さて、私が看護の道に進んだきっかけをお話したいと思います。高校時代にたまたま、アフリカで活躍する日本の助産師のことを知り、こんなに女性が自立して活躍できる職業があるんだと心を動かされました。
そして助産師として臨床現場で経験を積み、その後大学院で研究を続けるなかで、自分の自立のみならず、女性の自立と健康を支えたいという想いが強くなっていきました。
日本人の私たちにとっては当たり前の「母子手帳」ですが、日本から始まった優れたツールであることはみなさんご存知でしょうか。お母さんと赤ちゃんの健康状態を記録して、母子が必要なケアを継続的に受けられるよう支える母子手帳は、世界的にも注目されています。そのため、学会への参加で海外へ行くときは、いつもその国の言語で書かれた母子手帳を持参し、プレゼントしています。
また、プライベートでもアフリカをはじめ海外に出ることが多い私は、授業やゼミで各国の女性の健康支援や母子支援に関する情報を紹介しています。海外の妊婦健診の様子や子育て、国によって異なる倫理観について、学生は興味をもって話を聞いてくれており、国際保健に関心をもって意欲的に学ぶ姿に、自立して活躍する未来の女性像を見ています。
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将来の選択肢が広く、一人ひとりが目的意識を持って学んでいます。
「ウイメンズヘルス」をテーマに掲げるゼミには私を含め3人の教員がおり、学生はそれぞれ女性に関するテーマで卒業論文の執筆に取り組んでいます。産婦人科で働きたい学生や助産師を目指す学生が多く、睡眠や月経に関するテーマや、日本では立ち遅れている包括的性教育に目を向けて社会課題に取り組む学生もいます。
研究において重要なのは、自由な発想で自分の興味・関心を深めたうえで、研究テーマの概念、定義を確認し、その概念に関連する特徴などを把握するために、文献をしっかりと読むことです。そこでゼミでは、学生主体の「クリティーク」を通して、それぞれのテーマに関する文献についてディスカッションし、互いに協力しながら研究を進めます。
本学の図書館は文献や蔵書が豊富で、学生にとって使いやすいシステムがそろった素晴らしい施設なので、学生には積極的に活用して「図書館と友だちになって」と伝えています。
また、計画性も重要です。4年次生は病院実習や看護師国家試験の模試などの予定も入ってくるので、そのなかで計画的に自分なりの物差しを持って研究活動を進めなければなりません。学生にとってはすべて初めての経験なので、事前に長期的な流れやプロセスを説明したうえで、主体的に計画性を持って取り組めるよう支援しています。
本学には附属病院がありませんが、複数の施設での実習経験を通して、将来の進路や就職先を選択しています。学生は在学中に目標を見つけ出し、目的意識をもって学ぶなかで、一人ひとりが納得できる道をきちんと見つけています。
例えば、世界で活躍したいと考えて国際看護に力を入れている病院に就職したり、博士課程に進んで助産師を目指す学生もいます。保健師や養護教諭も含め、看護の専門性のあらゆる資格を学部・大学院で取得できる本学なら、自分らしい人生の選択ができます。
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国際保健を実践的に学ぶ、留学プログラムも始まります。
2025年3月からは多文化共生看護を学ぶ「国際保健研修プログラム」がスタートします。異文化に触れて日本の看護を見つめ直す機会となるプログラムで、ミクロネシア連邦ポンペイ島で8日間、看護学科2,3年次生を対象に実施します。国際保健の教員と一緒に現地の病院や保健所を訪問し、多文化共生看護を実際に体験します。このプログラムは国際保健を専門にする橋本准教授がつくりあげたオリジナルです。
こうした留学プログラムが実現するのも、キリスト教主義、国際主義、リベラル・アーツを教育理念に掲げる本学の看護学部ならではだと思います。多文化共生社会が進展するなかで、実践の学問である看護は、さまざまな背景を持つ人の看護援助が不可欠になっています。総合大学である同志社女子大学の豊富な教養科目から学び、広い視点で対象を理解して看護を実践できる能力はこれからの時代に必須です。
キャンパス全体はもちろん、居心地のよい図書館も上手に利用しながら、総合大学ならではのさまざまな知と出合える環境です。
英語運用能力が高く、海外の動向に対して関心を持つ学生が多いことも本学の特長のひとつだと思います。そんなグローバルな視点と人間力、そして確かな看護の知識・技術をもった本学の卒業生たちが、社会で活躍してくれています。
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受験生のみなさんへ
看護師も保健師も助産師も、また養護教諭も、学び続けるプロフェッショナルであり、その学びは自分のためだけでなく、看護の対象となる患者さんをはじめ多くの人の役に立ちます。学び続ける醍醐味を本学で感じてください。本学は自分がやりたいことに挑戦し、それを実現できる場であり、そのための環境がそろっています。
卒業論文テーマ例
- 産後うつ病の要因からみる母親への予防的看護支援についての文献検討 ―経産婦と初産婦の違い
- 新型コロナウイルス感染症の影響で立ち会い出産を制限することによる褥婦やその夫への影響と支援の考察
- 韓国の産後調理院(産後ケア施設)における産後ケアの実態と日本との比較
- 大学生の低用量ピルに関する知識の文献検討
- 産後1か月の母親と睡眠とストレス対処能力が産後うつ傾向に及ぼす影響と支援に関する文献レビュー
- 出生前診断を検討する妊婦の意思決定の特徴についての文献検討 ―超音波診断法、NIPT、羊水穿刺との比較―
- 産後12週目までの褥婦の睡眠不足と育児不安との関連
- 妊娠期から育児期までのメンタルヘルスと虐待との関係についての文献検討
- 児童・生徒における包括的性教育の内容と意識の文献レビュー
- 低用量ピルの内服による身体および心理の影響に関する文献検討
- 娘をもつ母親のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに対する知識・意識・ニードに関する文献検討
- ペリネイタル・ロスにおけるグリーフケアの具体的内容に関する文献検討