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教員が語る同志社女子大学の学び

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「高齢化」
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「人生」

地域の方の参加を得て
身体機能測定を実施。
介護予防支援を探っています。

看護学科

山縣 恵美准教授

学部連携による総合大学ならではの取り組みです。

少子高齢化が進み、多くの病院では、入院患者さんの約7割、外来患者さんの約5割が高齢者です。医療現場において、看護職は高齢者の方と関わることが非常に多くなっています。

高齢者看護学を専門とする私は、「地域で暮らす高齢者の介護予防」をテーマに、要介護状態や病気にならず、長く地域でその方らしい生活を継続するために、看護職としてどういった支援ができるかを研究しています。
そのひとつの取り組みとして、2017年から年に1度、40歳以上の地域住民の方約100名の参加を得て、本学の蒼苑館(看護学部関連棟)で身体機能測定会を実施しています。
歩行機能や柔軟性などについて12種類の測定を行い、筋トレ方法のアドバイスもします。

過去3回の測定結果から、介護予防には体力維持が重要だということがわかってきましたが、今後さらにデータを蓄積・分析する必要があります。毎年地域のみなさんと関わるなかで、介護予防の具体策を追究していきたいと考えています。

「病院で定期的に健康診断を受けるように、年に1度同志社女子大学で体力診断を受けている」ととらえ、毎年参加してくださる方がほとんどです。測定会翌日から、来年の測定を目指して体力の維持・向上に努めている、という前向きな声も多いです。
測定結果は前年までのデータと合わせて後日郵送しており、そのデータをかかりつけ医に見せて健康管理に役立てていただくなど、地域貢献にもつながっているようです。

身体機能測定会は、私だけでなく看護学部の広域支援看護学部門の教員はじめ、本学の現代社会学部 社会システム学科と同志社大学のスポーツ健康科学部の先生と共に取り組んでいるものです。総合大学ならではの学部間連携のもと知見を蓄積し、社会に還元できるやりがいのある取り組みです。
本学科の学生も、測定会のサポートをしてくれています。普段の実習では、治療が必要な患者さんや機能障害のある高齢者を受け持つことが多い学生にとって、健康な中高年の方と接し、会話を楽しむ貴重な学びの場になっています。

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卒業研究は、看護職の軸となる重要な学びです。

私のゼミの学生は、高齢者看護や在宅看護をキーワードに卒業研究に取り組んでおり、認知症に関する研究、高齢者施設入所者の主観的幸福感に関する研究など、テーマは多様です。

私自身は学生のときに卒業研究が進まず、四苦八苦した経験があります。しかし、当時はあまり知られていなかった高齢者虐待に対する学生の認知度を調査、分析することで気づきを得て、高齢者看護へ進むきっかけにもなりました。卒業後は卒業研究のテーマが看護職者としての軸のようなものになり、今もぶれることがありません。

そんな私が学生に伝えているのは、卒業研究を仕上げた段階で、その分野に関して最も自分が詳しいと自信を持っていい、そう思える研究をしてほしいということです。目的意識を持って取り組み、自分の中にしっかりと落とし込む。卒業研究で得た知識を、これからの自分の軸として持ち続けてほしいと思っています。

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よい看護とは、患者さんの人生に思いを寄せること。

看護を学ぶにあたり、多様な世代の方と接する経験が重要ですが、核家族で育っている学生の多くは、とりわけ高齢者との生活体験が不足しています。
そこで授業では、高齢者の身体の不自由さを知るために、シミュレーション教材や実習室を活用します。そのひとつが高齢者疑似体験教材を装着しての実習です。サポーターを着けて筋力低下や関節の動きにくさを体験し、特殊メガネをつけて見えづらさを体感します。
祖父母と暮らす学生が高齢者の見え方に驚いたり、手袋でものをつかむ体験をしてバイト先のレジで高齢者の方が小銭ではなくお札を出す理由がわかった、と言う学生もいます。

さらに学生が2人1組になって高齢者と看護職の役割を担い、「高齢者・在宅・公衆衛生看護実習室」で、高齢者への看護をシミュレーションします。実習室にはキッチン・浴室・トイレ・和室と在宅さながらの住環境がすべてそろい、口腔ケアモデルや経管栄養シミュレータなども装備しているため、在宅看護に必要な看護方法を実践的に学ぶことができます。

「在宅看護学実習」では、実際に学生が訪問看護師に同行させていただき、利用者のご自宅で看護援助を学びます。この実習をきっかけに「将来は訪問看護師になりたい」と考える学生も少なくありません。主治医の指示のもとで的確な判断をし、知識をフルに発揮して医療処置を行い、家族の支援までを担う訪問看護師の仕事ぶりに感銘を受けるからです。
卒業後はほとんどの学生が病院に就職しますが、看護職の仕事のフィールドは病院にとどまりません。企業や教育機関、また訪問看護を専門に行う事業所で訪問看護師として活躍する道もあります。

高齢者の看護において最も大切なのは、人生の大先輩に関わることへの意識と、自分たちが知らない時代を生き抜いていらっしゃった方々であるという認識を持つことです。そして現在の患者さんだけをとらえるのではなく、その人の人生に思いを寄せ、患者さんそのものを理解しようとする姿勢が欠かせません。

ここで生きてくるのが、同志社女子大学のリベラル・アーツです。患者さんの価値観を理解できる豊かな教養と知識があってこそ、その人の思いに寄り添ったよい看護ができます。
医療現場に入ると、周囲は医療従事者ばかりになりがちです。しかし、看護・医療だけの狭い価値観では、多様な患者さんを看ることはできません。学生時代から異なる学問を学ぶ人と交流を持ち、幅広い価値観に触れてください。それができるのが同志社女子大学です。

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受験生のみなさんへ

病院に勤務していた頃、ポジティブに生きる患者さんに逆に励まされたり、「将来こんな年の重ね方をしたい」と思う人生の目標となるような患者さんとも出会いました。だからこそ、患者さんの理想の生き方をかなえるために、看護職としてどんなサポートができるかをいつも考えています。人生の大先輩から生き方を学べる職種が看護職だと思います。

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山縣 恵美准教授

看護学部 看護学科 [ 研究テーマ ] 地域で暮らす高齢者の介護予防

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研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 高齢者や認知症患者への個人回想法の効果
  • 介護保険施設入所者の主観的幸福感の充足に向けた支援について―主観的幸福感の実態と関連要因から―
  • 高齢女性の整容・化粧行動に関する意識―後期高齢女性へのインタビューから―
  • 終末期にある高齢がん患者への家族を含めた効果的な退院支援の方法
  • 人工股関節全置換術後の患者の脱臼予防における効果的な患者指導
  • 認知症高齢者在宅介護における介護者のニーズと介護継続要因ー男性介護者と介護者を支える家族のインタビューからー
  • 失語症患者の障害受容プロセスと必要な看護を考える―フィンクの危機モデルを用いて―
  • 認知症高齢者に対して看護学生が困難感を抱いた場面とその対応方法