「オーケストラ」
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「吹奏楽」
合奏とユーフォニアムの
指導を通して、一本立ちできる
演奏家の育成を目指します。
音楽学科
牛渡 克之教授
約20年間、ユーフォニアムのリサイタルを開いてきました。
「人の声に似ているから」。管楽器の魅力をそう語る演奏家は多いようですが、ユーフォニアム奏者の私も同じです。とくにクラリネットが好きな私にとって、クラリネットの木のまるい響きや優しい雰囲気をこの金管楽器にも感じ、気に入っています。
今や吹奏楽には欠かせない楽器として定着しているユーフォニアムですが、管楽器としては最も新しく、私が中学生のときに吹奏楽部で出合ったころは、非常にマイナーな存在でした。レコードを買おうとしてもお店で数枚しか見当たらない、世界中探してもレコードを出しているプレーヤーはごくわずか。ほとんど吹奏楽でしか使うことがなく、オーケストラでも限られたレパートリーしかない楽器でした。
しかし幸運なことに、私は大学時代にプロのオーケストラと演奏する機会を得て、交響楽団の端っこに座ってさまざまな曲を演奏させてもらいました。
以来、ユーフォニアム奏者として吹奏楽団などで演奏するほか、2002年からは定期的にリサイタルを開いています。
同じ金管楽器でもトランペットなどとは違い、ユーフォニアムのための曲は少ないため、あちらこちらからかき集めて演奏できそうな曲を取り上げる、あるいは作曲家に委嘱してオリジナルの曲を書いてもらう、そんな形でリサイタルを続け、ユーフォニアムの可能性を自分なりに探ってきました。
そのほか、さまざまな楽器や声楽のための作品など委嘱作品を中心に100曲ほど作曲してきました。曲づくりにあたっては、楽器に関する研究が必要であることは言うまでもありませんが、楽譜から追究するほか、実際に演奏家にお話を聞くことがよくあります。オペラでも室内楽でも曲づくりで最も楽しいのは、こうした演奏家とのコミュニケーションです。楽器の可能性を学べることはもちろん、同じ作品でも演奏家によって表現が異なるので、演奏家と共に曲をつくっていくことは刺激であり、励みにもなっています。
例えばヴァイオリンであれば、弦楽四重奏などの膨大な作品がありますが、ユーフォニアムにはありません。その特徴を逆手にとり、さまざまな楽器とコラボレーションをしてきました。ユーフォニアムとテューバによるアンサンブルや、サクソフォーンとバンドネオンのちょっと変わったバンド編成、音のイメージが気に入っていたことからヴィブラフォンとコラボレーションするなど打楽器とのアンサンブルもあります。「この曲なら誰とコラボできるか」、あるいは「この楽器とコラボするためにはどんな作品が必要か」を都度考えてチャレンジしてきました。 また、ユーフォニアムのちょっと変わった世界を多くの人に聴いていただきたいと考え、委嘱作品も収録したアルバム『うしし』を発表しました。
これら演奏活動と並行して、吹奏楽団や地域の中学校・高等学校、大学の吹奏楽部の指揮活動も長く続けてきました。学生時代にオーケストラの端っこに座っていた経験が生きているのかもしれません。
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「吹奏楽」「オーケストラ」の授業を通して演奏家を育てます。
演奏専攻で私が主に担当する授業は「吹奏楽」、「オーケストラ」です。指揮の見方や総譜の読み方、和声や響きの調和技術など、吹奏楽・オーケストラでの合奏技術の基礎修得を目指します。
学生とはいえ、それぞれが訓練を積んできたその楽器の専門家です。私は指揮をしますが、専門家が集まって音楽を作る時間であり、授業というよりも「部活動」のような気持ちで取り組んでほしいと思っています。
まず楽譜を配布し、学生それぞれに予習してきてもらい、およそ10週先に控えた定期演奏会に向けて仕上げていきます。管楽器と打楽器だけを集めた管打分奏や、弦楽器だけの弦分奏の時間も設けます。
2020年度の吹奏楽の授業では、ホルストの『吹奏楽のための第一組曲』や、吹奏楽では演奏する機会の少ないジャズの作品など、スタイルの異なる曲を取り上げています。オーケストラの秋学期の授業では、リストの『ハンガリー狂詩曲第2番』、ハチャトゥリアンの『ガイーヌ組曲』を取り上げました。
演奏家養成を目指す専攻ですから、演奏家として生きてきた私としても、一本立ちできる演奏家を一人でも多く育成したいと考えています。管弦打楽器は、弦楽器・鍵盤打楽器・管楽器の特殊奏法を除いて、原則的に単音しか出せません。だれかと一緒に音楽を奏でるという宿命を背負っており、演奏家として非常に大きな要素のひとつだと思います。
だからこそ演奏・合奏の技術のみならず、個々人の考えや嗜好を超えて意見を交わし、1つの音楽をまとめ上げるスキルが必要です。そのためには相手の意見をよく聞き、自分の考えをしっかりと伝えられるコミュニケーション能力が欠かせません。
人と一緒に音楽を作るのは、音程やリズムを合わせる必要があるなど思った以上に大変です。例えばオーケストラであれば、楽譜に記載される音符が少ない楽器があり、よく知られているのが『新世界』交響曲(ドヴォルザーク)でシンバルが1音のみ、最弱奏です。しかし、それも重要なパートであることを、授業を通して学生のみなさんに認識してもらいたいと考えています。自分とは異なる役割について理解し、協働する姿勢は、卒業後に音楽以外の仕事に就いたときにも大いに役に立つと思います。
演奏家に求められるのは、自分の音楽観やプライドをもちながら、他者と合奏する際は可能な限り自分を出したうえで、必要であればどこまででも妥協できる演奏能力だと思います。また、それらを許せる幅のある人格を持ちたいと私自身も考えています。
ただし、音楽家としてどんなに優秀であっても、合奏の中で巧みに振る舞えたとしても、時間を守れない人は音楽の世界で生きていくことはできません。音楽そのものが時間を扱う仕事であり、1秒の100分の1の時間でもズレれば、演奏家として不合格の烙印を押されてしまいます。時間の厳守はモラルではありますが、日々の1分、2分を大切にしてはじめて、演奏の世界に踏み込むことができます。時間厳守の姿勢で、豊かな音楽表現ができる人になってほしいと思います。
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教育理念と歴史を感じさせてくれるキャンパスです。
私はこれまで主に東北・関東で活動していましたが、2020年度に同志社女子大学に着任しました。初めて本学の京田辺キャンパスを訪問したときの印象は忘れられません。
長いエスカレーターを上がっていくと、目の前に突然レンガ造りのモダンな校舎が現れ、奥には十字架がそびえる礼拝堂が見えました。同志社女子大学の教育理念である「キリスト教主義」「国際主義」「リベラル・アーツ」のすべてと、140年以上の歴史を感じとることができ、心からよい大学だと思いました。
本学着任からまだ日が浅いものの、リーダーシップのある学生が多い大学だと感じています。そうした学生を中心に、音楽学科全体でもよいチームワークが築けていると思います。
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受験生のみなさんへ
演奏専攻には、部活動で吹奏楽を続けてきた人、習い事として音楽に取り組んだ人、その楽器が大好きな人など、いろいろなタイプの学生がいます。どんなタイプであっても、自分の望む方向で勉強ができる大学なので、安心して入学してほしいと思います。