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教員が語る同志社女子大学の学び

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「デザイン」
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「服飾造形」

被服はその人自身を表し
時代や社会を明確に
映し出す文化です。

人間生活学科

藤本 純子教授

日本の女性が着物よりも洋服を着るようになったのは男性よりずっと後です。

私たちが今、当たり前のように着ているブラウスとセーター、スカートの組み合わせは、20世紀初頭まで女性のスタイルではあり得ないものでした。今では定番のニット製品も、かつては男性の下着の素材に過ぎませんでした。女性がこうしたファッションを楽しめるようになったのは、ココ・シャネルの功績が大きいと言われています。

コルセットで体を締め付けるドレス形式ではなく、女性にとって実用性と美しさを兼ね備えた衣服をつくりたい。そんな情熱をもちブランドを起ち上げたシャネルは、革新的なスタイルを次々と生み出しました。パンツスタイルやジャケット&スカートのように、メンズの服からヒントを得たものも多数あります。また、女性の社会進出に伴いバッグのニーズが生まれると、小物が入る内ポケットをつけたり、持ち手の部分にチェーンを用いてアクセサリー的な要素を表現するなど、シャネルが考案した新しいバッグも誕生しました。

19世紀末から20世紀は、被服の歴史が大きく動いた時代です。ヨーロッパでは、それまで続いたドレス形式からシャネルに象徴されるように女性の衣服が大きく変わり、日本は着物から洋服への転換期となりました。こうした近現代の服飾造形が私の研究テーマです。

日本では、女性が和服ではなく洋服を着るようになるのは男性よりずっと後です。男性は社会で活動する機会が多かったため、明治維新前後、軍服や国会議員の礼服といったオフィシャルな場で着物から洋服への変化がありました。
一方、女性は皇族や国会議員の夫に帯同するような一部の人のみが洋服を着ていました。そうした洋服は、コルセットで締め付ける窮屈なドレスで非常に高価だったため、ほとんどの女性は洋服を着る機会がありませんでした。

大正時代初頭には、洋服のテイストを着物に取り入れる動きがあり、ヨーロッパのモチーフや流行を反映した和服文様のコンテストが呉服店主催で開かれました。ちょうど大きな呉服店が百貨店へと変わる時期であり、被服の歴史の背景に産業・経済の変化が見て取れます。

ヨーロッパでシャネルが活躍したころ、日本でも被服の歴史が大きく動きました。ヨーロッパの流行を受け、ドレス形式からウエストを絞らないワンピース形式へとスタイルは変わり、「モボ(モダン・ボーイ)・モガ(モダン・ガール)」と呼ばれる洋服を楽しむファッションリーダーが誕生しました。
戦争が起きるたびに女性が社会的な活動をする機会が増え、洋服を着る女性も増えました。第二次世界大戦後は家庭での洋裁が普及。ミシン教室が増えて「洋裁を習う」ことがブームになっていきます。こうした洋裁学校を含む洋服文化の発展についても研究を続けています。

近代の歴史をたどってみると、被服が社会や時代を色濃く反映する文化であることがよくわかります。同時に、個人そのものを語るのが被服であり、一人ひとりがファッションの担い手であることもわかります。

私は、研究の延長線上に「技術を育ててきた文化を継承したい」という思いがあります。効率性や利益を重視することで、培った技術を失うのではなく、衣服という日用品にこそ、ものづくりの大切さを伝えていきたいと考えています。
同時に、現代社会に呼応したアイデアソースを追究し、衣服の形で発信していくことにも注力しています。これら研究成果を学生に還元し、一人ひとりが被服の歴史や表現性を知り、その価値に気づき、生活科学として見つめてほしいと考えています。

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衣生活の課題を見つけ出し、解決策を作品として提案するゼミです。

人間生活学科では被服製作実習の授業があり、学生は実際にスカートやブラウスの作り方の基本をしっかりと身につけます。緻密なものづくりは大変ですが、それだけに達成感が大きく、自分でデザインして製作した服を愛用している学生も多いです。丁寧なものづくりの大切さを理解できる授業を心がけており、ファッションへの関心と表現への情熱をもって、私のゼミを選んでくれる学生もいます。

ゼミに所属するまでの2年間、学生は被服だけを専門的に学んでいるわけではないため、ゼミ配属直後の3年次生では、被服デザインに関わる見方や考え方を知ることから始めます。例えば「素材を作る」取り組みとして、真っ白な布にミシンのステッチをかけたり、毛糸や羊毛を埋め込むことで、どれだけ素材の表情を変えられるかを学んでいきます。
また、独自のこだわりを持ってデザイン活動を展開しているファッションクリエーターについて学生が調査をし、自分がそのクリエーターのチームの一員ならばどんなデザインをするかを考えて発表する、といった取り組みも行っています。さらに繊維製品を扱う工房を見学する機会を設けるなど伝統産業を体験することで、思考の枠組みを外し、表現の幅を広げることに力を注ぎます。

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こうして学んだ表現手法を活用して、4年次では卒業論文に取り組みます。単に作品を作るだけでなく、現代の衣生活における課題を見つけ出し、解決策を考えて提案・表現することを目指します。さらに、作品づくりを通して、生活の課題解決にどうつながるのかの考察を卒業論文としてまとめます。

卒業論文は、タカラヅカのスターの衣裳を分析したり、アニメの実写版の主人公の衣服を考えるといった、好きなことを突きつめたテーマがあります。また、布ではない素材を追究したり、同じ型紙でも布地が違えばシルエットにどんな違いが出るかといった実験的なアプローチをする学生もいます。
他にも伝統的な布の産地の織物についてリサーチして、その布の発信の仕方や活用方法を提案するゼミ生や、ウエディングドレスを製作し、そのドレスを使った写真集を作る学生もいます。ゼミ生が何を考え、どんなテーマに取り組むか、私自身も毎年楽しみにしています。学生に伝えているのは「卒業論文には正解がない」ということ。今までだれも知らなかった、気づかなかった点に着目して考えを深め、提案してほしいと指導しています。

ゼミでは卒論の進捗を発表する報告会を定期的に開いており、仲間の意見から新たな視点を得たり、他の卒論に刺激を受けるよい機会になっています。手を動かす時間を仲間と一緒に過ごし、それぞれが論文を書き上げたときの達成感を共有しているようです。

人間生活学科ならではの幅広い観点で生活科学を学んできた学生が、衣服をとりまく問題意識を高め、美しさや新しさへの感性をゼミ活動でさらに磨いてくれていることを実感します。そして、衣服を通して身につけた生活科学の知識を、卒業後も社会のさまざまな場面で発揮してくれると思います。

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伝統と新しい感性が共存する、京都で学ぶということ。

衣服を通して感じる古いものの良さと、新しい感性の美しさは、同志社女子大学の環境に通じていると感じています。伝統を守りながら現代に生かしている学舎で日々過ごすことで、豊かな感性を磨けると思います。

また本学には、一人ひとりのチャレンジを後押しするおおらかな雰囲気があります。例えば私のゼミでは、学生が集まるラーニング・コモンズで作品を展示するのですが、他学部・他学科の学生からも「がんばっているね」「すてきだね」という応援が届きます。仲間を応援する温かな空気感が学生の間にあり、自分を表現し、発信するには理想的な環境だと思います。

そして、京都という地で被服を学べることも魅力のひとつです。衣服のまちとして歴史があるのはもちろん、新しいことに挑戦する文化があるからです。老舗を継いだ若い方がSNSを駆使して世界に発信するなど、伝統文化をグローバルで大切にしようという動きが活発です。また、服飾に関する貴重な文献や資料を保存する京都服飾文化研究財団もあり、ギャラリーに出向いたり、学芸員の方から直接学ぶ機会もあるなど、貴重な資料に出合うこともできます。

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受験生のみなさんへ

衣服だけを専門的に学ぶのではなく、現代の生活をトータルで学べるのが本学科の良さ、面白さだと思います。また、衣服は誰もが毎日着用するものであり、自分自身を表現するための手法といっても過言ではありません。自分たちの思いを発信し、チャレンジする学生生活をぜひ経験してください。

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藤本 純子教授

生活科学部 人間生活学科 [ 研究テーマ ] 近現代の被服デザインと造形

Lab Mag. ゼミの学びを知るWeb Magazine

研究者データベース

卒業論文一覧

dwcla TALK

卒業論文テーマ例

  • ウール刺繍の魅力
     ―四季を表現したワンピースドレスの提案―
  • 宝塚歌劇団の舞台衣装におけるジェンダー表現
  • 魅せるコルセット
     ―見せて/魅せるファッションアイテムとしての提案―
  • ワンウェイプリーツの表現効果
     ―ワンピースドレスにみる印象の変化―
  • 農業をデザインの力で活性化する
     ―農作業着の提案―
  • ファッションと建築の蜜月
     ―空間に服を着せる試み―
  • リミックスファッションの可能性を探る
     ―20世紀×旗袍―
  • 持続可能な社会の視点から考える家庭科
     ―Tシャツを用いたリメイク教材の提案―
  • 未来に継承したい丹波布と手仕事の魅力
     ―現代を生きる人々に向けた魅力の発信―
  • カスタマイズできるバレエ衣装の提案
  • 和紙のおりがみスカート
  • ジューンブライドのためのカラードレスの提案
     ~アジサイをデザインソースとして~
  • ユニバーサルファッション
     ~高齢者に向けた洋服のリメイクの提案~
  • PEANUTS の世界観を表現したドレス
     ~チャーリー・ブラウンの片想い~
  • オリジナルを持たないライブアイドルへの衣装の提案
  • 子どもの自主性を育む衣服の提案
     ―絵本『11ぴきのねこ』をモチーフに―
  • 現代のヒストリカルファッション
     ―Fêtes GalantesのためのRobe à la Française―
  • 多様なスタイリングを可能にするゴスロリファッションの提案
  • 装飾結びで飾る現代衣服の提案
  • 金襴の装飾によるデザインの可能性
     ―ブライダルのためのドレスへの展開―