dwcla TALK ようこそ新しい知の世界へ

教員が語る同志社女子大学の学び

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「食育」
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「調理」
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「栄養」

調理を通して
こどもを育む食育の
実践的な研究を続けています。

食物栄養科学科

小切間 美保教授

小学校で3年間実施したプロジェクトが研究のヒントに

生きる力を育む、食育。その重要性が高まるなか、調理を伴う食育でこどもたちがどう変わるのか、調理行動がもたらす効果をテーマに、実践栄養学研究室の学生・大学院生と共に10年以上研究を続けています。
そのひとつの取り組みが、文部科学省の食育の指定を受けた小学校で、家庭と連携して行った「朝食づくりプロジェクト」です。朝ごはんづくりにチャレンジしようと銘打ち、「朝食お手伝いポイント制」や料理レシピ集配付など児童が楽しみながら朝食調理に挑戦できる工夫を考案。朝食習慣を身につけ、朝食づくりを手伝う意欲を高め、その継続化を目指しました。
3年間のプロジェクトを経て、児童・保護者への質問調査のデータを分析した結果、調理経験が食への知識・関心を高めるだけでなく、自尊感情を高めることが観察されました。プロジェクトを通して自信がつき、家族に喜んでもらうことで「自分は役に立つ人間なんだ」と実感し、さらに、学習意欲につながる可能性も観察されました。

また、プロジェクトの経験を活かして歴代ゼミ生と食育ワークブックを制作しました。その家庭内学習教材『楽しく作る家族ごはん わくわくクッキングBOOK』は、近々出版されることも決定しました。料理の作り方を紹介するだけでなく、子ども自身がシールを貼ったり、書き込んだりすることができるスペースを設けています。また社会や理科など、学校の授業で扱う教科とも関連付けた内容を掲載することで、調理や食を通じて学びを深めることができます。コロナ禍で学校の家庭科の調理実習が制限されるなか、自宅で調理を楽しむこどもたちをサポートする1冊です。

この「調理を伴う食育、調理行動がもたらす効果」は、私の専門であるライフステージ別の栄養学における研究テーマのひとつです。もうひとつ私が25年以上取り組んでいる研究テーマが「必須微量元素である亜鉛の摂取状況と摂取量向上の方法」です。亜鉛は動物性食品や穀類などに多く含まれるミネラルで、ヒトの遺伝子発現や免疫機能などに関与しており、体内の約300種類の酵素が正常に働くために欠かせない栄養素です。私は日本人の亜鉛の摂取状況の調査を行ってきました。結果、偏った食生活の人や低栄養に陥りがちな高齢者の亜鉛不足が明らかになりました。そこで、どうすれば意識して亜鉛を摂取できるのか、セルフモニタリング方法の開発にも取り組んでいます。例えば、1食あたり10食品の摂取を目標として、摂取できたかできなかったかを誰でも簡単に把握できる方法の確立です。この方法では、亜鉛を摂取しようと食生活を工夫すると、ほかの栄養素もバランスよく摂れることになり、食育につながると考えています。

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科学に根ざした食育を追究。ゼミ活動でも授業でも重視しています。

実践栄養学研究室では5つほどテーマを提示し、その中から学生が関心のあるテーマを選択して卒業論文に取り組みます。例えば、研究室で制作した「食育ワークブック」を使った、小学生に対する朝食内容改善のための介入プログラムの実施と評価を行うテーマがあります。
また「中学生の食生活の現状分析と食育教材の作成」もこれからのテーマのひとつです。
そのほか「高齢者の低栄養を防ぐための摂食機能に適した食事形態の検討」として、本学卒業生で高齢者施設の管理栄養士と共同研究も行っています。
いずれのテーマも実践栄養学研究室ならではの現場に即した研究です。地域や社会へのフィードバックを目指して、大学院生、ゼミ生それぞれが研究に取り組んでいます。

すべてのテーマにおいて、私は高い精度での実験や調査、データの集計・解析、また文献の収集・考察を求めます。学生にとっては大変ですが、物事を客観的・論理的に理解する力を養うためには欠かせない学びです。また頻繁にチームディスカッションを行い、管理栄養士に不可欠な自分の考えを正確に相手に伝え、相手の気持ちを正確に受けとめるコミュニケーション力を磨いていきます。
緻密な調査・分析、科学的な考察を重ねて論文を完成させ、発表会を終えたときの達成感に満ちた学生の表情を見ることは、私にとって何よりの喜びです。

研究室の活動でも授業でも、学生がサイエンスに根ざした「食」を学ぶことを重視しています。私は栄養教諭の教員免許にかかわる授業も担当しています。そこでは学生に「なぜ朝ご飯を食べる必要があるのか」といったテーマを提示し、エビデンスとなる文献調査を指示します。学生は文献を読み込み、そこから科学的に考察する経験を積んでいきます。こどもに伝える食育においても、ものごとを論理的に判断し、エビデンスを評価できる力が必要です。管理栄養士が適切な情報発信をしなければ、対象者の栄養教育・栄養管理は不可能です。最良の情報提供や栄養介入ができる能力を持ったプロフェッショナルを目指してほしいと考えています。

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全国で活躍する管理栄養士の先輩たちとつながれる伝統校。

本学科を卒業した学生は、管理栄養士の資格を生かして行政、病院、高齢者施設、保育所、企業等のフードサービスで活躍するほか、栄養教諭として学校でも能力を発揮しています。また、食品会社・製薬会社や調剤薬局に就職する学生も増えており、管理栄養士の職域の広がりを実感します。

同志社女子大学は日本でも有数の管理栄養士養成の伝統校であり、先輩たちが全国で活躍しています。これは何にも代えがたい財産です。卒業生のつながりを生かして、仕事もプライベートも充実させることができるのが本学の魅力のひとつだと思います。
少人数教育と、それを支える教員のチームワークのよさも本学の特長です。どの研究室もゼミ生を囲い込むことがありません。「その課題なら、あの先生に相談してごらん」そんなことを言い合える学科であり、学生の可能性を最大限に伸ばすことを全教員が考えています。

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受験生のみなさんへ

教育に熱い教員と、学びに真剣な仲間たち。楽しく、熱く、学べる環境がそろっています。そして、学生のおだやかさや品位も同志社女子大学らしさだと感じます。一人ひとりの中にある品格を大切に育み、その上で発信力や行動力を磨いてください。周囲から信頼され、豊かな人生につながっていくと思います。

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小切間 美保教授

生活科学部 食物栄養科学科 [ 研究テーマ ] ライフステージ別栄養管理と食育

Lab Mag. ゼミの学びを知るWeb Magazine

研究者データベース

卒業論文一覧

dwcla TALK

卒業論文テーマ例

  • 小学生における朝食の栄養バランスに関連する要因の検討
  • 調理を促す食育介入プログラムによる朝食内容の変化について
  • 小学生の「調理経験」と「食事観」「自尊感情」「教科に対する関心」の因果関係モデルの再現性
  • 家庭での調理を促す食育介入プログラムが児童に及ぼす影響
  • 児童・生徒の朝食の簡易評価方法の検討
  • 学校給食提供量の個人差と児童のエネルギーおよび栄養素摂取量の評価
  • 小学校教員の食に対する意識と食物アレルギーに関する認識の実態
  • 児童の調理行動を促す教材の検討―「食育ワークブック」の作成とその評価―
  • 3年間継続した食育介入による児童および保護者の態度の変化に関する質的研究
  • 小学生を対象とした家庭における1食あたりの目標摂取食品数の検討
  • 「朝食作りプロジェクト」による児童への介入―朝食お手伝い継続方法の検討―
  • 高齢者施設での活用を目的とした調理食品のかたさの簡易評価法
  • 高齢者の摂食機能に適応した食事の客観的指標と調理法の検討
  • 高齢者の摂食機能に適した食事提供を目的とした実態調査
  • 軟菜食摂取高齢者を対象に物性測定によるかたさ調節を行った鶏肉料理摂取率の検討
  • 亜鉛摂取状況に関連する食品摂取パターンの検討
  • 継続的に軟菜食を摂取している施設高齢者の亜鉛を含む栄養素摂取量の評価
  • 1食摂取食品数を指標とした亜鉛栄養状態に関する研究―長野県東御市における調査―
  • 昭和30年から現在までの日本人の亜鉛摂取量の変化
  • 腹部大動脈瘤の発症予防に関連する食品摂取パターンの検討