dwcla TALK ようこそ新しい知の世界へ

教員が語る同志社女子大学の学び

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「調理」
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「科学」

調理による
おいしさや機能向上を
サイエンスで解明していきます。

食物栄養科学科

村上 恵教授

冷凍処理で食材がおいしくなり、時短もできる、なぜか。

沖縄料理のひとつに、ゴーヤーチャンプルーがあります。炒め調理が水溶性のビタミンCをとどめるため、ゴーヤーに含まれる豊富なビタミンCを損失することなく摂取できます。最近の研究ではビタミンCだけでなく、ポリフェノールも損失しないことがわかり、チャンプルー(炒め)料理の豊富な沖縄の食生活が、健康長寿の要因のひとつだと考えられるようになりました。
このように調理をサイエンスから考えるのが調理科学です。調理科学と食品調理機能学を専門とする私は、食品の機能を追求すると同時に、「こう調理したらおいしい」という先人の知恵が科学的に理に適っていることを明らかにすべく研究を行っています。

調理は日常的であり、日本では長らくサイエンスとして見られてこなかった歴史があります。しかし最近はメディアでもよく取り上げられるなど、調理科学に注目が集まり、研究も進んでいます。焼くと甘くなるといった現象論だけではなく、その理由を科学し、おいしさに結び付けることが潮流になっており、現在は、食品メーカーをはじめとする複数の企業と共同研究を進めています。

これまでは主に、炒める、茹でるといった調理法によって、食品の物性や成分がどう変化するのかを追究してきました。現在は「冷凍処理が調理後の食材のおいしさに及ぼす影響」に着目しています。例えばダイコンを一度冷凍してから煮ると味がしみこみやすく、おいしくなるという昔ながらの知恵があります。私の研究室では現在、4年生と実験を行い、ダイコンの細胞の変化を顕微鏡で観察しながら解明に挑んでいます。理由を科学的に明らかにすることで、他の食材についても冷凍下処理による調理時間の短縮や減塩が可能になります。

私が調理科学に興味を持ったきっかけは、いつもおいしいものを食べるにはどうしたらよいか、と思ったことです。自分で調理をすると、おいしくできるときと、そうでないときがある。おいしくできる、には必ず理由があり、それを知りたいと考えました。そしていま、同志社女子大学の教員として、調理という観点から働く女性を応援したいとも考えています。冷凍の下処理も一例ですが、時短でおいしい料理ができれば、仕事の後もキッチンに立つ女性たちの負担が軽減されます。調理科学の研究者の立場から、仕事と家庭の両立に少しでも貢献したいと考えています。

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多様な知識を融合し、調理科学の実験に取り組みます。

研究室では、前述の冷凍下処理の研究はじめ、いくつかのテーマのもと学生が実験を行っています。
健康志向の高まりでさまざまなオイルが出回るなか、アボカドオイルを使った炒め調理の実験を行い、適切なデータを収集して、消費者への還元を目指しています。

調理は「この方法で行う」というグローバルスタンダードがないため、実験では条件設定をすべて自分たちで行います。とりわけ炒め調理は、ガスかIH どちらを使うかで前提が異なり、さらに火加減に影響するガスの圧力を一定にするため、実験室のガスコンロにはガス圧調節器を付けるなど、データの再現性を担保するための細かな設定が欠かせません。
そして、鍋の素材によって油をどれだけ入れるか、どう攪拌すると、熱がどのように伝わっていくのか、混ぜるスピードや時間、食品のどの状態をよしとするのか、それらをすべて理解した上で実験を行う必要があります。

失敗をするたびに仲間と試行錯誤し、私の厳しい指導を受けながら、学生は教科書に書かれていることだけでは決して解決しないこと、多様な知識を融合しなければ調理科学に迫ることができないことがわかってきます。
そうして収集したデータについて自分なりに考察をし、卒業論文にまとめ、卒業論文発表会の舞台に立ちます。卒論発表会の後は、どの学生も達成感でとてもよい表情をしています。

学生は、今まで何気なく食べてきたメニューや作ってきた料理に科学的な裏付けがあることを知り、調理を科学する面白さを実感しているようです。
知識の蓄積に比例して、普段の食事にも気づきが増えていく。
学びを日常にフィードバックしやすい学問ならでは、です。
だからこそ、理に適ったおいしさや利便性を多くの人に届けたいと、多くの学生が商品開発に関心を持ち、食品関連企業への就職を希望するのだと思います。

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京の食文化の基礎を徹底して身につけられる大学です。

私の研究室には、食物科学専攻の学生と管理栄養士専攻の学生がいます。両専攻の学生は、就職活動や国家試験、卒業論文などを控え、勉強方法や時間の使い方は異なりますが、互いの立場を理解し、助け合って非常にチームワークよく実験に取り組んでいます。
学生の気質も大きいと思います。素直でおおらかで、3年次生にもなると他者を認め、尊重できるようになってくる。上級生が新入生をサポートするビッグシスター制度に象徴されるような、同志社女子大学らしさを身にまとっているように感じられます。
また、教員同士のチームワークのよさも食物栄養科学科の特長です。各々専門分野を持ち、それぞれの考え方を持っていますが、「学生のため」であればいつでも一致団結できます。

何より、本物の京都の食文化を学べることは本学の大きな強みです。実習では、和食の基本である、だしの取り方を徹底して学びます。ポイントは、京都の食文化を支えてきた利尻昆布と花かつおを使うこと。今や貴重となった利尻昆布のなかでも、選び抜いたものを使って、丁寧にだしをとります。本物を知り、本物から学ぶ。本学の教育姿勢が表れていると思います。

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受験生のみなさんへ

「好き」であることがとても重要だと思います。食べることが好きであれば、調理も好きになる、食品に興味があれば調理科学の学問も面白くなります。そして「絶対に私はおいしい食品を開発する人になりたい」という気持ちがあれば、折れない気持ちでがんばれる。「好き」を大切にして、確かな「目標」にまで高めてください。

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村上 恵教授

生活科学部 食物栄養科学科 [ 研究テーマ ] 調理操作と食品の特性との関係

Lab Mag. ゼミの学びを知るWeb Magazine

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 水の硬度がパスタのゆで状態に及ぼす影響 
  • 天ぷら衣調製時に使用する水の硬度が衣の食感に及ぼす影響 
  • 葉酸卵、ほうれん草およびアスパラガスの葉酸量に及ぼす加熱調理操作の影響
  • 加熱調理による沖縄豆腐および京都の豆腐の抗酸化性の変化
  • 水の硬度の違いが牛肉の硬さに及ぼす影響
  • 野菜の機能性成分および物性に及ぼす干し操作の影響
  • ゆで水中への食塩の添加濃度の違いがスパゲティの硬さに及ぼす影響
  • アスパラガス中に含まれる葉酸の血栓溶解性の検討
  • 食事由来の水分摂取量の検討―調理による水分量の変化についてー
  • 冷凍処理が調理後の食材の物性に及ぼす影響
  • 完熟梅ピューレの調理特性-スポンジケーキへの応用-
  • 冷凍処理がダイコンの味の浸透に及ぼす影響
  • 炒め調理がアボカド油の劣化に及ぼす影響