dwcla TALK ようこそ新しい知の世界へ

教員が語る同志社女子大学の学び

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「遊び」
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「環境」

こどもの発達・成長に
大きな役割を果たす
「砂遊び」を追究しています。

現代こども学科

笠間 浩幸特任教授

全国で砂場づくりに関わるなど、実践的に取り組んでいます。

一人のこどもが0歳で砂場に出合ってから6歳まで、保育園での砂遊びの様子を7年間観察し続けました。1歳でお座りができ手を使えるようになると、スコップなどのモノで遊び始めます。1歳5か月になるとスコップを道具として使うようになり、2歳で型抜きを始めます。しかも型抜きをした後、意に沿わないものは自分で壊し、気に入った形ができると制作を続けていく。自分の評価基準を持ち作品を作る2歳児は、すでにアーティストです。やがてトンネルを掘り、泥だんごを作り、4、5歳になると友だちと砂場に大きな造形を作ります。全身を使って遊んで達成感を味わい、想像力と創造力を養う。砂遊びは、こどもの発達に大きな役割を果たしていることがわかります。

幼児教育学を専門とする私は、こどもの成長・発達に関わる環境づくりを研究しています。テーマは遊び、なかでも「砂遊び」に特化しています。
「砂遊び」に注目したきっかけは、30年以上前に当時3歳の娘が砂場で一人遊びを続ける姿を見たことです。砂しかない場所が、こどもを1時間以上も夢中にさせる遊び場になることに興味を持ち、歴史を調べたところ、幼児教育の分野でまとまった文献が見当たりませんでした。
そこで日本国内から海外へと足を伸ばし調査した結果、200年前のドイツに砂場の起源を見いだしました。こどもの教育の重要性と遊びの大切さが注目され始めた200年前、近代幼児教育のスタート地点に砂場が登場したことがわかりました。やがてドイツからアメリカに広がった砂場ですが、その後は滑り台やブランコが加わり児童公園へと発展していきました。

砂場の魅力は、0歳から大人まで年齢を問わず、誰もが自由に、一人でも複数でもそれぞれが主体的に遊べることです。こうした遊び場が教育環境に存在することの素晴らしさを感じています。
しかし、最近の日本では、衛生面への不安などから砂場に対してあまりよい評価がなく、それをなんとか変えていきたいという思いもありました。そこで冒頭に述べたような保育園での調査研究を行い、砂場がこどもの年齢に応じた発達課題を手助けする環境を提供してくれる重要な場であることを明らかにしました。研究結果をまとめた映像は、幼児教育に携わる教員・保育者向けの教材として全国で活用されています。

これらの知見をもとに、全国各地で砂場づくりにも関わってきました。そのひとつが釧路市こども遊学館に完成した世界トップレベルの屋内砂場です。企画・監修を担い、寒さで長期間外遊びができない北海道で、屋内に砂場をつくる大切さを伝えています。
こどもの遊び環境を整えることで、大人にもこどもと一緒に遊ぶ楽しさを知ってもらい、こどもの発達・成長への理解を深めてほしいと考えています。
砂場遊びのワークショップも全国で開催しています。とりわけ原発事故でひとたび屋外活動に厳しい制限が設けられた福島県を中心にワークショップを重ね、砂場の復活運動にも関わってきました。失って初めて人々が砂場の大切さを見なおし、砂遊びを取り戻そうという動きが活発で、私もそのサポートを行っています。

また、全国の保育園・幼稚園・小学校の砂場環境をよくしたいと考え、「砂ラボ」を研究室内に設置しました。砂の粒度を測定する機器をそろえ、砂遊びに適切な砂の物性を追究しています。研究結果を各教育機関にフィードバックすると同時に、将来的には科学的なデータにもとづいた適切な砂の基準を定め、その基準を満たした砂を取り入れることで日本全国の砂場環境を良くしたいと考えています。

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遊び研究の実践の場として、プロジェクトに挑むゼミです。

「遊び」をテーマに掲げる私のゼミでは、学生が力を合わせてプロジェクトに取り組み、その成果を卒業研究としてまとめています。この7年ほどは、本学の京田辺キャンパスに近い同志社山手地区で、まちづくりを担う独立行政法人や地域の方々と共に活動をしてきました。子育て家族が集える場所づくりとして公民館予定地に遊び場を作ったり、保護者がまちづくり会議に出席する間、こどもたちの遊び場を提供するなど、多様な活動を展開しました。いずれも学生が計画を立案、実行し、活動後はその振り返りを行い、次の取り組みを考えてきました。自分たちが学んできた、こどもの遊び環境づくりを実践する場であり、地域社会への貢献にもつながるプロジェクトです。

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上記のプロジェクトが落ち着いた現在は園庭プロジェクトが動いており、保育所新設に伴う園庭づくりや、市立保育所の砂場リニューアルに取り組んでいます。
学生は改めて園庭とは何かを学びつつ、京田辺キャンパス内に設けた「こども砂場」で実践的に考えるとともに、よりよい園庭を求めて調査にも出向きました。そしてモデルプランを作成し、保育所・行政の合同協議会において学生自らがプレゼンテーションも行いました。その成果のひとつとして保育所に新しい砂場が完成し、学生たちは大きな達成感を得たようです。保育の現場を知り、行政のシステムを学ぶなど、社会を知る貴重な経験となりました。学外の方との活動は大変な側面もありますが、強固なチームワークで取り組み、一人ひとりの成長は目を見張るほどでした。

卒業研究のプロジェクトを通して課題の発見・設定を行い、その解決策を考えて役割分担し、チームで取り組む。社会で実践されるこのプロセスを学生時代に経験しておくことは重要です。幼稚園、保育所、小学校など現場でがんばる卒業生や、こども関連の民間企業に勤務する人、卒業後のゼミ生の活躍ぶりをみるにつけ、その意義の大きさを感じます。

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粘土の専門家と砂の専門家がそろう、現代こども学科。

研究室に設置した「砂ラボ」では、各所の砂場の砂を採取して砂粒の大きさである「粒度(りゅうど)比率」を解析し、砂場遊びに適した砂の研究を行っています。実はこのラボで共に研究を行っているのが、本学、現代こども学科の竹井史教授です。竹井教授は「幼児の造形活動を活性化するスーパークレイの開発」を研究テーマに掲げる、幼児教育における粘土・土研究の第一人者です。竹井教授と砂の研究者である私のコラボレーションによって完成したラボであり、ここから新しい知見を得たいと考えています。こどもの遊び場環境の研究者がそろい、そのコラボのもとで学べるのは、本学科の特長のひとつではないかと思います。

さらに教育の側面だけでなく、社会や世界といった広い視野でこどもを取り巻く課題について考え、自分の興味関心を見つけ出すことができるのが現代こども学科の特長です。「なぜ」「どうして」「私はこうしたい」という主体性を持って自分自身と向き合い、そこから生まれてくる好奇心や疑問に対峙し、思う存分、学びを深めることができる環境が整っています。

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受験生のみなさんへ

受験勉強は大変だと思いますが、大学では受験勉強とは異なる、面白い勉強ができると思います。大学は自分で課題を見つけて、その課題解決に挑戦していく面白さがあります。そのために、いまがんばってほしい。いまの学びが必ず役に立つはずです。

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笠間 浩幸特任教授

現代社会学部 現代こども学科 [ 研究テーマ ] こどもの遊びの権利と遊び環境

Lab Mag. ゼミの学びを知るWeb Magazine

研究者データベース

卒業論文一覧

dwcla TALK

卒業論文テーマ例

  • 園庭環境改善に関するプロジェクトの実践と課題
  • 公園遊具の「危険」と「魅力」
  • 子どもたちの遊び場づくりに関する一考察
  • YYプレイパーク ~アウトリーチ型あそび場づくりとその実践~
  • 子どもが生き生きと生活できる保育室とは
  • 幼小連携としての学習につながる保育
  • 「ガラガラ」と乳児の発達
  • 日本での知育玩具の存在と価値
  • 食育から見る家族コミュニケーションに関する研究
  • 日本の待機児童問題と解決に関する一考察
  • 男性の育児参加促進に向けての課題と考察