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教員が語る同志社女子大学の学び

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「推し」
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「ポップカルチャー」
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「ジェンダー」

アイドル、アニメ、BLなど
ポップカルチャーを通して
社会の多様な側面を探ります。

社会システム学科

張 瑋容准教授

歴史・政治・経済をはじめ、ポップカルチャーは社会と切り離せない文化。

アニメ「美少女戦士セーラームーン」をきっかけに、日本のポップカルチャーにすっかりハマってしまった私は、小学5年生のときにアニメソングをひたすら聞き、日本語を学びました。現在、オタク文化と「推し」を中心に、ジェンダーと社会学を融合するポップカルチャーを研究しています。

ポップカルチャーの定義は「一般大衆が楽しむ商品化された文化」であり、歴史・政治・経済などと切り離すことができません。ポップカルチャーを通して社会のさまざまな側面を見ていくのが研究の軸であり、インタビュー、言説分析、フィールドワークといった手法を用います。日本のポップカルチャーでは、アイドル、マンガ、アニメなど幅広く研究対象としています。

私の出身である台湾における日本のポップカルチャーのファンについて、歴史的経緯やポップカルチャーの受容から考察した論文をもとに、著書「記号化される日本―台湾における哈日(ハーリー)現象の系譜と現在」も出版しました。 この研究から、台湾における日本のポップカルチャーの受容について、研究を広げていきました。

そのひとつとして、例えば男性同士の恋愛を描いたドラマ「おっさんずラブ」は、日本だけでなく台湾でも人気を博した作品です。台湾人ファンがこの作品をどのように受け入れ、どう語っているかをSNSの投稿から言説分析しました。 最終回について、日本人ファンの多くが絶賛したのに対し、台湾人ファンは「がっかりした」という声が圧倒的でした。ネタバレになるので詳細は割愛しますが、ラストシーンへの経緯が丁寧に説明されていなかったことに台湾人ファンの多くが不満を示しました。まだ分析中ですが、台湾人ファンは感情の変化や心の機微といった細かい描写を求める人が多い一方、日本人ファンはハッピーエンディングを求める傾向が強いと考えています。こういった反応からは日本と台湾の文化の違いが見えてきます。

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最近は研究対象をBL(ボーイズラブ)にも広げており、テキスト分析や描写分析を通して、その世界観や男性同士の 関係性に対する妄想の構造を研究しています。 とくに着目しているのが、BLマンガにおけるキャラクターの描写、体の描かれ方です。なぜなら社会における男性の体に対するジェンダー規範が、そこに色濃く反映されているからです。初期のBLマンガでは男性キャラクターの体は平面的に描かれていましたが、BLでは筋肉の凹凸や立体感が丁寧に描かれています。女性たちが「見たい」と思う男性の理想的な形が変わってきたことを示します。

BLファンは女性が中心だと思われがちですが、最近は男性ファンも増えています。しかし女性と男性では読み取り方がかなり違い、男性は自分とキャラクターを重ねたり、男同士の性的描写に抵抗を感じる人もいます。一方、女性は傍観者の立場でマンガを楽しむパターンが多いなど、ジェンダーの側面からもBL研究を深めています。 BLが市民権を獲得するに従って関連市場が活況になり、新たなクリエーターが誕生するなど、文化・経済面でも影響を与えています。日本だけでなくタイでもBLドラマの人気が高まっており、私の「推し」もタイ人の俳優です。「推し」を含めて好きな対象の存在が、私の研究のモチベーションになっています。

ポップカルチャーと政治・経済との関係性の深さを象徴するのがK-POPです。日本のアイドルとは異なり、SNSや動画を上手く使った戦略のもと、政府も総力を挙げてサポートしているため、世界的に成功しています。その背景には、韓国は日本と比べて国内マーケットが小さいなど社会構造の違いもあり、ポップカルチャーが政治・経済と切り離せないことがよくわかります。

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自分の「推し」を徹底的に追究し、社会との関連を考えていくゼミです。

私のゼミは、ポップカルチャーと観光を関連づけて追究する「ポップカルチャーの世界」をテーマにしています。聖地巡礼やコンテンツツーリズム、ロケ地巡り、 アニメの舞台巡りがわかりやすい例です。

私は本学に着任してまだ数年ですが、毎年ゼミ生の個性に合わせてゼミ活動を柔軟に変えています。例えばK-POPファンが多い学年では、K-POPファンが集まる大阪・鶴橋のコリアンタウンでフィールドワークを行い、どんなショップがあり、どういった人が訪れるのかを調査しました。
ジェンダーへの関心が高い学生が多いときは、ジェンダー研究の図書や資料が充実している「名古屋大学ジェンダー・リサーチ・ライブラリー」を訪問し、当研究所の院生とゼミ生との交流会を実施しました。

そして学生自身がテーマを設定して調査・プレゼンテーションを行うグループワークを重視しています。アイドル研究やファン研究など、テーマはさまざまですが、アイドルに詳しいロシア人研究者をゲストスピーカーに招いて行ったグループワークの発表会では、ゼミが大変盛り上がりました、 また、自分の「推し」への愛について、ゼミ生同士がひたすら語り合う機会を設けるなど、気持ちを共有する「自分の推し布教会」も行っています。

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卒業論文は、社会との関連性に着目し、それぞれが好きなテーマを好きなだけ追求してほしいと考えています。そのためには自分の発想が大切であり、発想を検証するための学術的なスキルや研究方法の修得が欠かせません。
そこで3年次では、ポップカルチャー研究とは何かを考えていくために文献を一緒に読み、ディスカッションを重ねます。研究の手法も学びながらテーマを絞り込み、卒業論文の計画を立案していきます。

卒業論文のテーマは、学生の「推し」の数だけあります。K-POPのアイドル研究や韓国の観光ガイドブックを分析する学生、また女性アイドルのミュージックビデオの分析をするゼミ生もいます。ヒーロー映画を取り上げ、そこに描かれているヒロインの表情や女性のイメージ分析など、私も面白いなと思う研究が多数あります。

コロナ禍でフィールドワークは積極的に行えていませんが、ゼミ生はインタビューやアンケート調査、映像分析などの手法を駆使し、意欲的に卒論に取り組んでいます。自分が掲げたテーマから社会の課題や矛盾に対して気づきを得て、社会への向き合い方が変わっていくのがよくわかります。 自分の関心のある分野を徹底的に掘り下げ、社会背景と関連付けて考えることにより、社会全体が見えてきます。その経験や思考力は、社会人になってから存分に発揮できると思います。

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落ち着いた雰囲気は本学ならでは。
女子だけで「推し」トークも盛り上がります。

同志社女子大学は大学全体の雰囲気がとても落ち着いていて、キャンパスのどこにいても安心できるのが特徴だと感じています。この安心できる環境のもとで、学生たちはのびのびと学んでいます。

心地よい安心感は本学だからこそですが、女子大という点も関係していると思います。台湾には女子大はありませんが、日本で研究を始めてから女子大の良さを私自身が感じています。

例えば私のゼミでは、自分の「推し」についてプレゼンするときに、女子だけなので気負わずオープンに話ができる、といった側面があります。 力仕事を含めて女子が自分の力でなんでもやってのけるので、タフな学生が多いのではないでしょうか。社会に出ても、タフなビジネスパーソンとして活躍してくれると期待しています。

社会システム学科は、本学で最も学生数が多い学科です。様々な個性を持った仲間と出会う機会に恵まれています。また、教員も多いため多様な専門分野を学ぶチャンスにあふれています。私自身は「ライフデザインコース」の担当教員ですが、他のコースの先生の研究分野もとても面白そうで興味を持っています。本学科で幅広い分野から現代社会の課題を見つめ、その解決策を考え抜くことができるのは、学生にとって何よりの魅力だと思います。

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受験生のみなさんへ

かつての私はニュースに関心がなく、大学進学後に「ニュースを読む習慣を身につけておけばよかった」と反省した経験があります。学校の勉強だけでは社会との関連性を感じにくいと思います。だからこそ、高校生のみなさんにはできるだけ日々、日本のニュースや世界情勢に触れていってほしいと思います。そうすれば大学受験の面接や小論文対策に役に立ちますし、そうしたベースがあれば、社会システム学科で学ぶ4年間はさらに面白くなると思います。

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張 瑋容准教授

現代社会学部 社会システム学科 [ 研究テーマ ] ジェンダーと社会学を融合するポップカルチャー研究

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 2次元に恋する女性たち
  • きょうだい構成・関係性が恋愛観形成に与える影響
  • ジェンダー視点からみる女性アイドル像の変容――MVの考察を通じて――
  • ホラー映画から読み解く女性の欲望――主演女優賞受賞作品における女性の役割とジェンダー観――
  • 旅行ガイドブックにみる日本人の韓国への眼差し
  • エイリアンシリーズにおけるヒロイン像
  • コロナ禍のメディア視聴習慣の変化に見る現代日本若者世代のメディア視聴のあり方
  • アニメ作品における聖地巡礼の原動力
  • コンテンツツーリズムのリピーターの経験にみる地域への愛着の形成
  • 少女マンガのヒロインとライバルの関係性から読み解く価値観とジェンダー観の変容
  • バラエティー番組におけるスポーツ選手
  • 若年女性の体型と自己肯定感の関係性
  • 令和時代における「かわいい」という言葉
  • 日本におけるK-POPの受容にみるポップカルチャーと政治の乖離