「国際政治」
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「平和の模索」
戦争の防止への関心。
そこから始まった学問が
国際政治学です。
社会システム学科
鳥潟 優子准教授
ベトナム戦争、インドネシア独立戦争に関する
実証的な研究に取り組んでいます。
国際政治学は、第一次世界大戦を経て、いかにして戦争を防止できるのか、という問題意識に基づいてヨーロッパで誕生し、第二次世界大戦後、アメリカで発展しました。そのうち私が取り組んでいるのは、外交史の領域です。軍事・安全保障のみならず、国際経済や国際文化交流も視野に入れながら、主権国家の外交政策決定過程を解明し、外交による平和や秩序の構築を考察します。
なかでも私は、戦後アジアを舞台とするアメリカとフランスなど西欧諸国との外交に関する研究を続けてきました。超大国アメリカや米ソにより形成された国際構造に対して、中級国家がどのように影響力を及ぼせるのか、またアメリカに対する同盟国の役割や同盟諸国間のネットワーク形成について分析しています。
日本は西ヨーロッパ諸国と同様、安全保障をアメリカに委ねていますが、日本とは対照的な対米外交を繰り広げているのがフランスです。私は、日本にはできないアメリカ外交に対する批判をなぜフランスができるのか、どうして国際政治でフランスが存在感を持っているのか、と疑問を持つようになりました。
その代表例が、1960年代のベトナム戦争に関するフランスのアメリカ外交批判です。周知の通り、アメリカは50年代中葉フランスのインドシナ戦争敗北後、フランスのあとを引き継いでベトナムで非共産国家を建設させようと介入していきます。ところが、フランスの方では、59年から大統領をつとめたドゴールが、アルジェリアでの植民地戦争をようやく終結させると、アメリカのベトナム戦争を「侵略」だと糾弾し始めたのです。そして、ベトナムのナショナリズムの力にはアメリカといえども勝てない、と言い張ります。当然、アメリカは激しく反発します。アメリカとの応酬を経てフランスは、植民地主義の歴史を糊塗しただけでなく、旧植民地諸国の盟主として振る舞うことに成功しました。米仏関係は極度に悪化したものの、フランスは第三世界と社会主義陣営から拍手喝采を浴び、国際的な威信と地位を高めたのです。
最近はインドネシア独立戦争に関する実証的な研究にも取り組んでいます。現地のナショナリストや共産主義者の動きを踏まえ、当時のアメリカ、ソ連、中国といった大国がインドネシアおよび東南アジア地域にどう関与し、どのような影響力を及ぼしたか、欧米の外交文書・政府史料に基づいて分析をしています。
こうした東南アジアをめぐる外交史・国際関係史の研究は、例えばアメリカの学界では、ベトナム戦争の教訓を学ぶべく、インドシナ戦争およびベトナム戦争の起源や展開に研究の関心が偏る傾向があります。しかし、アメリカが脱植民地化に初めて本格的に関与したのは、戦後初期のオランダとインドネシアの植民地戦争であり、また地域の大国であるインドネシアの視点を加えてこそ、アジアをめぐるアメリカの関与や戦後国際政治史をより包括的に理解ができるようになると考えています。
そこで、私は長年手がけてきたベトナム戦争研究にインドネシア独立戦争に関する研究を接続させて、アメリカの戦後アジアにおける冷戦戦略や地域秩序形成の全体像を解明したいと考えています。
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ゼミで議論を重ね、国際政治の構造や潮流を掴み、
各自の研究テーマを掘り下げます。
国際政治を学ぶには、やはりアメリカについて知っておかなければなりません。そこでゼミでは、まずアメリカ外交史を中心に学びながら、国際政治への理解を深めていきます。
同時に、今、国際社会で起こっていることに目を向け、ゼミで議論します。例えば、ウイグル問題をめぐってユニクロや無印良品の製品がどうなるか、また国によるコロナ対応の違い、アメリカのブラックフライデーの売上など、関心のあるトピックをそれぞれが選んで問題提起をし、議論を重ねながら、国際社会の構造や国際政治の大きな潮流の理解へとつなげていきます。3年次の終わりごろにはゼミ生それぞれ関心のある対象を絞り込み、卒業研究のテーマを固めます。
卒業研究のテーマは、さまざまな視角から国際政治の力学を掴もうとする意欲的なものばかりで、なかには日常的な視点から国際政治を考察していく研究もあります。例えば、スターバックスでアルバイトをしていた学生がフェアトレードを卒業研究のテーマとして選択したり、沖縄出身のゼミ生が沖縄の基地問題について県民の視点から掘り下げるという研究もあります。仲間の研究発表によって、書物や報道などから得る知識とその理解だけではなく、当事者視点を持って考える貴重な学びの機会になっています。
国々や国際機関、NGOなど多様な国際社会のアクターの立場を考えながら自分のテーマに取り組むプロセスで、イマジネーションを膨らませます。「なぜ、どうしてこうなったのか」「どのような影響があるのか」などを一人だけの考察ではなく、仲間とともに事実を調べて検証し、複数の視点からさらに問いを重ねながら考察を深めていくことがゼミの学びです。
そうして鍛えた分析力、思考力や想像力は、社会人になってから、自分の可能性を広げ人生を築いていくうえでとても役に立つはずです。
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社会へ、そして世界へ、外に開かれた目を持てるのが
社会システム学科です。
総合大学である同志社女子大学のなかでも、社会システム学科は、現代社会をめぐるあらゆる学問が学べる学科です。私の専門である国際政治学もしかり、社会は多様な要素で成り立っているため、その複雑性や矛盾と向き合い、考えを深められるのは本学科だからこそです。
また社会システム学科では、CASE(Career and Academic Studies in English)という独自の英語特別プログラムがあり、英語で専門領域の学問を学ぶことによって、高度な英語運用能力と国際的な視野を涵養することもできます。コロナ禍で海外に行きづらく、国内のニュースも新型コロナウイルス感染症に集中しがちななか、外に開かれた目を持つことができるのは、社会システム学科の魅力だと思います。
学科には5つのコースがあり、私は「公共政策と法」コースに所属していますので、国際政治においても人権や規範意識が重要になってきた昨今、本コースで憲法や刑法、民法も学べることをとても意義深く感じます。現代社会を体系的に学べる、理想の環境が本学の社会システム学科です。
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受験生のみなさんへ
日々のニュースに目を向けて、世界で起こるできごとに関心を持ちましょう。興味を持つ対象や視野をできるだけ広げておくことが、大学での専門や将来の仕事を選択する第一歩になります。豊かな学問と美しい自然・歴史に恵まれた本学では、生涯の友になるよい仲間との出会いも期待できます。
卒業論文テーマ例
- 感染症から見る国際協力の展開ー新型コロナ感染症におけるWHOの役割を事例としてー
- パブリック・ディプロマシー(広報文化外交)~アメリカ外交で、国同士の想いを繋ぐ文化の影響力と多様性~
- 米中関係と一帯一路~トゥキディデスの罠~
- 日韓関係改善の未来に向けて~歴史認識の違いから見える、問題解決の糸口~
- 自由と生きる香港ー香港の自由とは何かー
- 象徴と元首の天皇外交―日米安保とイギリスからみる昭和天皇の役割-
- 等しく生きていくために~アメリカでの黒人差別問題について~
- 西ドイツ「建国の父」が立ち向かった「ドイツ問題」
- 北朝鮮はなぜ核兵器やミサイルを開発しているのかー金日成の安全保障政策を中心に―
- 池田勇人首相はなぜ経済外交を重視したのか?
- 帝国日本の台湾統治―児玉・後藤時代を中心に
- 20世紀初頭カナダにおける日系移民問題
- ヒトラーに関する書物がなぜ現代で増加傾向にあるのか
- ブレグジットをめぐる迷走
- 沖縄と米軍基地
- 靖国問題~国家による追悼とは何か~
- ブッシュ政権と中東での戦争―テロとの戦いを中心に
- 原子力の平和利用と核兵器をめぐる国際関係
- 帝国日本の台湾統治―児玉・後藤時代を中心に
- ベトナム・ナショナリズムとアメリカの対決ーアメリカはなぜ勝つことができなかったのかー