「キリスト教」
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「女性」
人生のお手本になる
そんな女性たちの
生涯に迫っています。
社会システム学科
山下 智子教授
明治時代、一夫一婦運動に力を尽くした湯浅初。
キリスト教史を専門とする私は、新島襄とその周辺の人物、とりわけ女性を中心に取り上げて研究を続けています。明治時代、ほとんどの女性が教育を受けられず、結婚後もさまざまな苦難を背負うなかで、女性の生涯にキリスト教信仰がどう影響したかを追究しています。
多くは本学と関わりの深い女性たちです。女性の生涯は歴史に埋もれがちで、男性リーダーに比べると記録が残りにくく、わからないことは多数ありますが、そのなかで現在取り組んでいるのが本学の創設期の学生だった湯浅初です。徳富蘇峰・蘆花の姉であり、新島襄の盟友・湯浅治郎の妻として同志社を支え、一夫一婦運動に力を注いだ女性です。
資料が豊富にあり、研究の蓄積もある新島襄とは違い、新島の周辺の人とくに女性は、本人の書いたものが非常に限られています。そのため外堀を埋めるかのように、徳富蘇峰・蘆花の残した史料などの中にお姉さんに関する記述を調査し、そこから湯浅初の生涯に迫っています。
湯浅初は、本人の証言から同志社女学校(現:同志社女子大学)在籍中にキリスト教的な考えの影響を受け、新島襄の学生一人ひとりを大切にする誠実な生き方に大きな印象を持ったという証言が残っています。
そして公私ともに多忙ななか、一夫一婦制の実現に向け、請願運動に力を注ぎました。当時は、夫には妻の他に女性がいても問題とされず、時には妻とその女性が一軒の家に住み、葛藤を抱えながらそれぞれの子供たちを養育する家庭があった時代です。キリスト教の価値観を持つ初は、すべての女性の幸せを願って、一夫一婦運動に身を捧げました。
初の意志の強さを伝えるエピソードがあります。独身時代、後の総理大臣となる犬養毅とお見合いをした初は、犬養にこう尋ねたそうです。「あなたは一夫一婦制についてどう思いますか」。犬養も正直な人で「自分がひとかどの人物になったときに、そのことを約束できるかどうかはわからない」と答えたそうです。初は怒ってその場を立ち去り、縁談は成立しませんでした。
人間は誰しも幸せに生きたい、よりよく生きたいと願って学び、挑戦をしています。時代は違っても、現代を生きる私たちが人生のお手本を持つことは重要です。壁にぶつかったとき、この人だったらどう乗り越えるだろうと考えるきっかけになるはずです。リアルな世界での話し合いも大切ですが、歴史上の人物など、自分の生き方と照らし合わせて考えられる対象を持つことは、人生を豊かにすると思います。女性としてお手本になるような人物の生涯を探究し、その研究成果を本学で学ぶ学生に発信していきたいと考えています。
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宗教・人・社会をテーマに学生が活発に語り合うゼミです。
牧師でもある私は、キリスト教主義を教育理念に掲げる本学で、「キリスト教・同志社関係科目」の授業を担当しています。
日本人のなかには宗教に抵抗感を持つ人もいますが、さまざまな悩みを抱え、つらい時間を過ごすときに、ひとつの支えとなるのが宗教だと思います。イスラム教であれ、キリスト教であれ、人が幸せに生きるための知恵の蓄積と実践という面があります。
世界全体で見ると、3人に1人はクリスチャンであり、キリスト教を学ぶことは、世界の3分の1の人と共通の理解を持てることになります。また、世界の5人に1人にあたる人が信仰するイスラム教はルーツがキリスト教と同じであり、キリスト教を知ることは、異なる文化・歴史的背景を持つ多くの人を理解するうえで助けになると思います。
社会システム学科においては、社会とキリスト教と人を結びつけることを重視し、授業を行っています。宗教が身近ではない学生もいますが、新たな世界を知ることは大学の学びの最も重要な点であり、面白さです。共生社会や経済活動と実は関係の深いテーマであり、卒業後、学生の人生に少しでも助けにもなる学びを伝えたいと考えています。
ゼミも、社会と宗教、そして人をテーマにしています。学生それぞれが関心を持つ女性の生涯や女性に関する事柄を探究する卒業論文が多く、作家の佐藤愛子さんや黒柳徹子さんといった長く活躍している女性を取り上げるゼミ生が目立ちます。「年齢を重ねても、なぜ、あんなに生き生きとしているのか」という点に興味を持つようです。最近では、女優の李香蘭(山口淑子)さんを研究したゼミ生がいます。中国、日本、アメリカで活躍した女性で、後半生はジャーナリスト、政治家としてもパレスチナ問題の解決などに力を尽くした彼女の生涯に迫る力作でした。
どんな人物を取り上げるかは学生次第です。まず自分で下調べをし、ゼミでディスカッションを重ねて仲間の意見を聞き、考えを深めてテーマを絞りこんでいきます。
ディスカッションでは宗教や社会についても取り上げます。宗教とは無縁だと思われる、いわゆる朝ドラの主人公にもクリスチャンがいて、その生き方について語り、テーマを掲げて発表することもあります。活発なディスカッションを行うことで、仲間の意見をきっかけに知らなかった自分に気づくこともあるようで、学生個々の成長がとてもよくわかります。
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「何を学んでいいのかわからない」を前向きにとらえられる学科。
新島襄は「よりよく生きるためには、知識や技術を身につけるだけではなく、心の教育が大切である」と言っています。同志社女子大学の教育理念にキリスト教主義が掲げられているのは、新島襄のこの考えが根本にあるからです。一人ひとりの個性を耀かせ、他者を大切に思い、よりよい人生のためにともに学ぶという価値観です。
卒業後、社会に出ると、自分で意志決定をし、納得して次の一歩を進めていくことが必要になります。だれかに強いられて選択するのではなく、自分の力で前に進むときに、本学で学んだ価値観が支えになると思います。学生時代を振り返り、「そういえば授業で先生が話をしてくれたことがあった」と思い出してもらえるような心の教育が学生の力になると信じて、私も教壇に立っています。
社会システム学科は5つのコースがあり、幅広い学問領域を扱う学び豊かな学科です。何を学びたいか、将来どんな道に進みたいか、あらゆる可能性を探っている学生に最適な学科です。実際にそうした学生が在籍し、学科での学びのなかで自分の興味関心を突きつめています。何を学んでいいかわからない、という気持ちを前向きにとらえてほしいと思います。私自身も18歳のときを振り返ると、将来自分が何になりたいのかがまったくわからず、大学入学後に自分の道を見つけることができました。
専門性をもった個性豊かな先生がいらっしゃるため、先生との出会いから得ることもたくさんあり、目的意識をもって本学科で学びたいという学生も徹底的に学びを深められる環境です。4年間で自分なりの何かをつかみ取ってほしい、つかみとれる学科だと思います。
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受験生のみなさんへ
大学での学びの楽しさは、自ら学びとることです。教員がそれぞれ新しい知の世界のドアを開けて待っており、皆さん自身がその世界に飛び込んでいくことができます。ドキドキワクワクしながら、少し勇気を持って新たな世界へと最初の一歩を踏み出してください。その向こうには輝く未来が続いているはずです。
卒業論文テーマ例
- 華岡青洲ー「垣内池」における社会的貢献ー
- 樹木希林ー彼女最大の魅力「人間力」とはー
- 草間彌生ー彼女の創作意欲を突き動かすものー
- メリー・フローレンス・デントンの同志社に対する犠牲的精神
- 黒柳徹子ー活躍の原点ー
- ジャーナリスト山口淑子を支えた「恥しい怒り」
- 佐藤愛子ー人を惹きつける強さとはー
- BLM(ブラック・ライヴズ・マター)における非暴力思想
- 朝ドラ主人公とキリスト教
- コロナ禍における宗教団体の地域貢献
- 自殺予防と隣人愛精神ー「いのちの電話」の取り組みから考える