dwcla TALK ようこそ新しい知の世界へ

教員が語る同志社女子大学の学び

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「多文化」
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「わたし」
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「現代社会」

相対化することで
“当たり前”から自分を解放し
現代社会を見つめ直します。

社会システム学科

大西 秀之教授

少数民族から近代社会を見つめ直す。
石器からITまで技術で人類史を読み解く。

アイヌ民族を含むユーラシア大陸北東部の先住民と呼ばれる人びとが、人類学を専門とする私の主要な研究対象です。
北海道の先住民として知られるアイヌ民族は、近代になって文明と出合った狩猟採集民との誤解が未だにありますが、これは江戸時代以降に植え付けられたイメージに過ぎません。
江戸時代、幕府は長崎の出島から中国市場に干しアワビなどを輸出していましたが、これら高級食材の生産や流通の一端を担っていたのがアイヌ民族でした。さらに最後の中国王朝である清は、北方地域に暮らす満州民族が支配していたのですが、アイヌ民族は樺太(サハリン)経由で独自にコンタクトし朝貢品などの文物を入手していました。日本列島の北と南で経済活動に参画し、国際交易においても重要な役割を担っていたのです。

「未開社会は歴史が発展しないまま今に至る」という勝手な印象を私たちは持っていますが、アイヌ民族の例でも明らかなように、自ら独自の歴史を築いてきました。一方、近代社会の歴史的発展は、どこかで必然と思い込んでいますが、果たしてそうなのか、未開社会から近代社会を再検討してみよう、というのが私の研究テーマのひとつです。
自然科学から人文社会学まで、現在の学問のほとんどは、近代社会が形作ったものです。このため、どこかで近代社会のあり方が、われわれにとって物事を考える前提になっています。そういった意味でも、人類史という長い時間軸で育まれてきた人類社会の多様なあり方を考察し、近代社会を相対化する意義は決して小さくありません。

また技術の人類史も研究テーマとしています。知識や技能の総体である「技術」が、社会にどのような役割を果たし影響を及ぼしているのか、ルソン島の先住民族社会における伝統工芸などを対象として研究を行っています。
歴史の教科書によると、新石器革命によって農耕・牧畜が始まり、ルネサンス期に発明された火薬や羅針盤で西洋が世界を制覇した、すなわち技術が文化社会や自然環境を変えてきたことがわかります。現代はインターネット技術が社会のみならず、私たちの考え方や行動パターンも変えています。技術と社会の関係を考えることは、今後ますます重要になるでしょう。

これまで大きな研究プロジェクトに複数関わってきました。国立民族学博物館との共同研究では、学問のための研究ではなく、アイヌ民族の方々が自らの文化をどう継承していくべきか、という社会課題を追究しています。
また、地球環境問題の解決に向けて多様な研究を行っている総合地球環境学研究所のプロジェクトにも関わっています。学術研究の成果を社会還元することによって、政治的・社会的なマイノリティとしての少数民族の権利保護や環境問題の解決などに貢献することを、ひとつの目標としています。

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ポップカルチャーはじめ、現代社会の多文化性を読み解くゼミです。

「今を理解するためには、今までを見ないといけない」。学生には常にそう話をします。目の前で起こっている民族差別がなぜ起きるのかは、歴史を見て理解しないといけない。たとえば隣人がケンカをし、その原因が10秒前か10年前なのかで解決方法は違ってきます。

学生にはこうも伝えます。「異文化理解が必要なのは、異文化を通して自文化を深く理解するためだ」と。異なる社会や文化を知って自文化を相対化することによって、当たり前から自身を解き放って社会を改善するひとつの視点を得ることができます。

異文化は国外にあると思われがちですが、国内でも多文化が広がっています。たとえば同じスマートフォンを使っていても、K-POPのファンと韓国政府の対日政策に批判的な人物では、同じ韓国と検索しても、そこから得られる情報は全く異なります。同じ文化だと思い込んでいても、性別・世代・個人の趣味により区切られた世界に私たちは生きている。まさに多文化共生です。社会を多文化と見て追究していくのが本学科の「多文化共生コース」です。

本コースの私のゼミでは、現代社会の文化を科学的に読み解くための調査方法を学ぶ「社会調査ゼミ」を掲げています。3年次生の秋学期にゼミに配属されると、日常の当たり前を読み解くために学生それぞれが身近なテーマを見つけ出し、プレゼンとディスカッションを重ねていきます。たとえば、唐揚げ専門店がなぜ流行っているのか。調べていくと、コロナ禍で飲食店の営業が制限され、持ち帰りとしての需要があるのではないか、といった社会の現象が見えてくる。
重要なのは批判力と多角的視点、関西弁で表現するならば「なんで?」「ほんまに?」です。クリティシズムを持って、別の可能性がないのかを考える力を磨いていきます。この積み重ねでプレゼンとディスカッションの能力は副産物として自然に身につくと考えています。

3年次秋学期からは、フィールドワークやアンケートなど具体的な調査方法を学びます。2014年までは奄美大島で、2015年からは北海道の知床でフィールドワークを行いました。景観保護をテーマに、行政の依頼を受けて社会調査を実施し、現地のマスコミにも取り上げられました。夏休み中の自由参加ですが、北海道では、第二次世界大戦後に北方領土から引き揚げてきた高齢の方々に聞き取り調査を行うことができ、学生にとって貴重な経験となりました。

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調査方法を学びつつ卒業研究のプランを作成し、研究の経過発表はゼミ合宿で行います。また研究が進むと、4人で1グループを作り、自分の研究ではなく、仲間の研究を発表したりもします。他人の研究を正しく理解し発表するのは難度が高いですが、社会に出るためのよい経験になります。

卒業研究のテーマは実にさまざまです。たとえば、アイドル、アニメ、マンガなどのポップカルチャーやサブカルチャーから現代社会を読み解くものが毎年あります。コンビニのおにぎりや京都の観光情報の媒体別比較など、身近でビジネスに直結するテーマもあります。徹底的に調査・分析をして2万字の論文を書く経験は貴重です。どうせやるなら楽しいことをしよう、とゼミ生には伝えています。

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女子大で社会学を学ぶ意味の大きさを実感できると思います。

私自身が同志社女子大学に着任した際「女子大だからといって特別な教育をするつもりはない」と考えていました。しかし、数年経って気づいたのは、世の中の政治学・経済学・法学などはどれも「男の学問」だということでした。裁判官や弁護士は多くが男性であり、男性目線の考え方がいまだ基本になっているのだと思い知らされました。女子大での教育から、これまでの教育を相対化し、世の中の偏りを見ることができると考えています。

本学の現代社会学部 社会システム学科は2000年に創設されました。それ以前は政治・経済・法律といった社会科学を学ぶ学科が全国の女子大にほとんどなく、今もその状況はあまり変わっていません。だからこそ、同志社女子大学で社会科学を学ぶ意味は非常に大きい。その大きさは、学生が社会に出たときに実感するのではないかと思います。

社会システム学科は、自分で学びをデザインできるのが特長です。5コースに分かれてはいるものの、興味を持つコースを軸に、多様な学び方ができます。たとえば法律に興味をもてば、「公共政策と法コース」で法学的な学びを中心にカリキュラムを組むことができます。あるいは「ビジネスマネジメントコース」を選んだけれども、ジェンダーにも関心があるので「ライフデザインコース」と組み合わせて学んでいく、そういったことも可能です。

大学で何を学びたいかわからない、いろいろなことに興味があって絞りきれない、という人もいるでしょう。迷うことは、可能性を広げるためにとてもよいことです。可能性を追求したい人、自分の可能性がまだ見つからない人にぜひ選んでほしい学科です。

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受験生のみなさんへ

「大学の勉強は、高校までの勉強より面白そうですね」と受験生に言われることがあります。ありがたいお言葉ですが、大学で勉強の面白さがわかるのは、高校までの勉強の積み重ねがあってこそだと思います。自分の興味・関心を追求するためにも、今の勉強に力を注いでください。

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大西 秀之教授

現代社会学部 社会システム学科 [ 研究テーマ ] 文化行動の科学的理解

研究者データベース

卒業論文一覧

dwcla TALK

卒業論文テーマ例

  • No more!フェミニン男子!?~女性が作り出すジェンダーバリア~(2018年度)
  • 熱いぜ!クールジャパン!!~ジャパニメーション受容の国際比較~(2018年度)
  • ムーミン谷の向こう側~ムーミン童話に見られる排除の構造~(2018年度)
  • You は何買いにJAPAN へ?~訪日韓国人観光客の消費動向~(2018年度)
  • 正義が奪った茶の間の笑顔~お笑いバラエティ番組の衰退の社会要因~(2018年度)
  • 留学は往復チケットで!!!〜留学生意識に見るグローバル格差〜(2019年度)
  • It's a big market !〜ディズニーが生み出す市場循環〜(2019年度)
  • あなたとのお話買います〜”出会い系”ビジネスの誕生の社会的需要〜(2019年度)
  • 自由なメイクが人気の秘密〜美容系youtuberに見るネット動画の市場価値〜(2019年度)
  • Not idol but K-POP♪〜日韓アイドルを巡るファン心理の相克〜(2019年度)
  • The one operation~YouTubeコンテンツの制作・編集の多角解析~(2020年度)
  • 未来をリサーチ~ポスト新型コロナの市場動向と販売戦略~(2020年度)
  • 來々チャイボーグ~ネット情報に見る中国文化の受容可能性~(2020年度)
  • 視線の監獄~鉄道車両内における乗客行動の生態~(2020年度)
  • Music, Every Chance~マルチメディア社会における音楽消費の動向~(2020年度)
  • Music and Stay Home♪♪~コロナ禍における音楽消費とweb対応~(2021年度)
  • 東大王の誕生~ネット検索時代のクイズ番組の変容~(2021年度)
  • 許される女と許さない男~遅刻をめぐる意識とジェンダーギャップ~(2021年度)
  • AIが映す…~ネット広告の消費選択を巡る感性~(2021年度)
  • RTるバズる炎上:SNSコミュニケーションの多角解析~(2021年度)