「異文化」
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「女性」
多文化共生のカギは
多様性とリーダーの
育成だと考えています。
社会システム学科
Lisa Rogers教授
女性とマイノリティーをテーマに異文化関係学を追究。
マイノリティーと聞いて、何を思い浮かべますか。少数派、すなわち人の数の少なさをイメージする人が多いかもしれませんが、実は人数が多くても、社会的・政治的なマイノリティーになる例はあります。例えば、かつて私は沖縄から関西に移住してきた人たちのアイデンティティーに焦点を当て研究を行いました。移住した人の数は決して少なくはないけれども、社会的・政治的な力が弱いとマイノリティーになってしまう、そうした権力状態・社会におけるマイノリティーの研究です。沖縄の基地問題にも注目しています。政策として基地問題はマスコミでもよく取り上げられますが、女性問題として取り上げられることはほぼありません。人口の約半数を占めながらも、社会的マイノリティーである女性の視点からの問題提起は行われていないということです。私は長く異文化関係学の分野で研究を続けてきました。異なる文化背景を持つ人たちの間でどんな社会的課題が生まれ、どう共生していくかを追究する学問です。マイノリティーと女性が私の最大のテーマであり、最近では、移民や障害のある人、LGBTなど複合差別に着目して研究をしています。
最近、発表した論文が「容姿の異なる外国人女性に関する研究」です。日本で暮らす外国人女性の容姿に対する潜在的バイアスとその影響について追究しました。体格や肌・髪の色の違いなどから差別を受けた経験のある外国人女性は多く存在します。例えば、ヒジャブを被るイスラム教徒の女性が「テロリストか」と聞かれたり、健康診断で「体重を計れるかしら」と言われた経験を持つ、体の大きな白人女性もいます。偏見により他者を決めつけ差別することは、Black Lives Matterと同じです。日本の場合は黒人差別のほかに、体の大きな白人女性やチマチョゴリを着る女性への差別があり、様々な社会課題に関係すると考えて研究を続けています。
また、多文化共生社会の進展に向けて、私はマイノリティー女性の活動家のリーダーに注目し、日本各地で運動を続ける彼女たちの活動を調査し、分析しています。日本のジェンダーギャップが縮まらない原因の解明と解決策を探るなか、そのひとつの解として、マイノリティー女性の活動家のリーダー育成があると考えているからです。多文化共生のカギは、まずダイバーシティー(人材登用の多様性)であり、次にリーダーシップだと思います。
新型コロナウイルス感染症が世界中に広がったとき、最も対応が早かったと言われる国は台湾、ドイツ、ニュージーランドで、すべてトップが女性です。女性ならではのコミュニケーション力や協働する力が発揮されたと言えるでしょう。政治の場面のみならず、社会では男女問わず各コミュニティで望まなくてもリーダーにならなければならない場面が出てきます。リーダーを目指さなくても、リーダーの能力を持ち、いつでも行動できる女性を育てたいと考え、研究成果を教育の場にフィードバックすることを大切にしています。
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世界を視野に就職を考えるゼミ生も増えています。
同志社女子大学の社会システム学科には、世界に羽ばたく女性の育成を目指した学科独自の英語特別プログラムCASE(Career and Academic Studies in English)があり、外国籍の教員が中心となり指導をしています。アメリカ出身の私もCASEで指導をしており、ゼミにはCASEの学生を含め、世界的な視野で物事を捉えたいと考える学生が学んでいます。ゼミのテーマは「ダイバーシティーとリーダーシップ育成」です。授業は基本的に英語ですが、多文化を追究するゼミなので日本語をはじめ、どんな言語を使っても構いません。卒業論文は英語でアウトプットしなければなりませんが、選択肢が三つあります。一つは通常の卒業論文、二つ目は短めの文章と動画やプレゼンテーション資料をセットにしたもの、三つ目はポスターなどのビジュアル表現かビデオです。それぞれの卒業論文のテーマに沿った表現方法を学生自身が選びます。
テーマは自身の生活体験に根ざしたものから、社会的な視点で多文化を捉えたものまでさまざまです。旅行に行く前と行った後での韓国に対する印象の変化や、タトゥーに対する日本人と外国人の捉え方の違い、また卒業生にインタビューをして、企業における女性の働き方事情を研究する学生もいます。ゼミ活動としてフィールドワークも行っています。最近はコロナ禍で思うようには進んでいませんが、以前は学生が企画・運営をして外国人観光客に人気の高野山に行き、観光客への聞き取り調査を行い、そのデータを分析するといった研究活動に取り組みました。
ゼミ生の卒業後の進路は、日本の企業や外資系企業に就職する人などさまざまです。最近は、日本の企業であっても海外で働けるチャンスのある会社を選ぶゼミ生が出てくるなど、学生の目が世界に向いていることを感じます。英語運用能力を持ち、多文化への理解や知識があれば、どこの国でも働くことは可能です。日本の企業に就職したとしても、自分に合わないと思ったら世界中で自分に合った仕事や会社を探せばいい。幅広い選択肢があることを学生たちに知ってもらいたいと考えています。
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リーダーシップを育むチャンスに恵まれた大学です。
同志社女子大学のカリキュラムの特長として、物事を多角的に考えて適切に分析するクリティカルシンキングの養成を重視している点があります。他学部・他学科の先生と話をしていても、それぞれが授業や演習、学科のプロジェクトなどで実践されていることを感じます。社会システム学科でも、授業以外の場面でそうした学びの場を増やそうと教員が行動しています。直近では私のゼミで希望者を募り、フィリピンの大学とインターネットでつないで多文化共生について意見交換をする場を設けました。クリティカルシンキングを鍛え、世界の人々とディスカッションし、リーダーシップを育てていく。そうしたチャンスに恵まれていることも本学の特長だと思います。
だからこそ、自分らしく成長したいと考える学生には最適な学びの場だと思います。社会システム学科であれば、国際関係から歴史、福祉、金融など非常に幅広い分野から自分で学びたい科目を選び、自分だけの履修プランを組むことができます。本当に学びたいことは何か、どんな分野で成長をしたいのかを自分の力で見つけていく。学びたい気持ちを制限するものは何もありません。あらゆることに挑戦できると思います。
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受験生のみなさんへ
大学には選択肢がたくさんあることを意識してほしいと思います。授業だけではなく、学内外で新しい知識や経験に出合い、成長の機会を得ることができます。新しいことを体験することは自分をよく知ることです。自分を知らなければ、他者を理解することは難しいと私は思います。本学の恵まれた教育環境を駆使して、自己理解を深め、視野を広げ、無限の可能性を追求してほしいと思います。
卒業論文テーマ例
- A Study of Cultural Adaptation
- A Study of Travel and People’s Images of Korea
- Awareness of LGBT Issues in Japanese Companies
- Clothing and SDGs
- Cultural Diversity: Naruto and Multiethnic Symbiosis
- Discrimination of Japanese-Canadians
- How to Eliminate Prejudice
- Intercultural Conflict: Study of Conflict Between a Mother and Daughter
- International Marriage from the Point of View of Women College Students
- Issues in Japan and Attitudes of Young People Towards Tattoos
- Japanese’s Consciousness and Experience of Micro-aggressions
- Leadership Style of Female Leaders
- Multicultural Experiences in Japanese Education
- Music Marketing Differences Between J-Pop and K-Pop
- Self-help and Cultural Values in Japan
- Sexual Diversity and Asexuality
- The Importance of Collaborating Between NGOs and Companies for Achieving SDGs
- The Influence of Finnish Values and Perceptions of Acceptance of Immigrants
- The Relationship Between the Empowerment of Women and Corporate Performance
- The Situation of Vietnamese Workers and Working Styles in Japan
- Working Situation of Japanese Women