「環境」
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「経済」
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「世界」
ヨーロッパと日本を比較し
政治経済の視点から
環境について考えます。
社会システム学科
長岡 延孝特任教授
北欧における環境政策、企業や市民の協働を研究してきました。
私は、政治経済と環境政策の関連を研究するにあたって、北欧を中心としたヨーロッパに関心を持ってきました。いま、環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんが注目を浴びているように、彼女の母国スウェーデンでは地方自治体の動きが活発で、市民の声が政治に届きやすいシステムがあります。政治家と市民の日常的なコミュニケーションがあり、市民の中から生まれた環境運動が「緑の党」という政党になり、実際に政治の世界に入って環境政策を変えています。市民の声が政治に届きにくい日本との最大の違いは、制度の違いです。
政治経済と環境は非常に密接な関係にあり、私は専門である政治経済の視点から、環境に適合した社会をテーマに、ヨーロッパを中心に研究を行っています。スウェーデンの大学でも研究活動を行い、北欧各国の自治体、企業、市民の方々にインタビューを実施しました。スウェーデンでは、一時環境政策がアップグレードした時期があり、その際に各々が環境保全のためにどういった活動をし、どんな役割を果たしたか実態調査を行ったのです。この研究により、政府だけではなく、地方自治体、企業、市民が自分たちの役割を果たしながら協力し、うまく協働できたときに環境政策がアップグレードし、成果が出ることが明らかになりました。
日本でも積極的な環境活動が行われている地域があり、そこに足を運んでフィールドワークをし、ヨーロッパと日本との比較など研究成果を論文で発表し、本を執筆しています。
環境問題の原因は、経済活動にあります。歴史を振り返るとわかりやすいのですが、工業化や近代化を進めるにあたり、公害は悪ではなく発展の象徴と捉えられていた時代がありました。「煙が立ちあがっている私たちの街や会社は豊かである」。そんな考えです。ところが公害による被害が明らかになり、裁判や住民運動が行われ、1980年代頃からようやく企業も変わり始めました。環境問題は経済問題そのものであり、環境を考えるには、経済の動きと歴史を考える必要があります。
特に日本では、政界とビジネスの結び付きが強いため、政府から公害や環境の規制に関する指針が示されると、企業も比較的早く対応するという傾向が見られます。
地球規模で環境問題が深刻化するなか、途上国の貧困対策として策定されたMDGsの後継として、2015年にSDGs(持続可能な開発目標)が国連サミットで採択されました。国際社会共通の目標として環境保全の取り組みが挙げられ、SDGsの目標に沿った企業活動が求められています。一方、米中対立による分断の危機やコロナ禍による世界的な貧困の増加など、現代社会は先の見えない難しい局面を迎えています。こうしたときだからこそ、国、地方自治体、企業、そして市民の協力・協働が重要でないかと私は考えています。
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ゼミ活動で国際的な視野を身につけ、英語運用能力向上を目指します。
「ヨーロッパの社会経済」をテーマに掲げる私のゼミでは、国際的な視野で世の中の動きを理解し、世界の中での日本を考えることを重視しています。卒業論文のテーマは学生が自分の興味関心に沿って設定するため、バラエティに富んでいます。とくにヨーロッパや北欧の女性労働に関心を持つ学生が多く、働き方改革の推進が課題の日本に対し、改革が進む北欧の実態を調査しています。また高い教育水準を誇るフィンランドに興味を持つ学生は、日本の教育との違いを追究しています。国連の世界幸福度ランキングで常に上位となるフィンランドやデンマークの幸福度指数について研究する学生もいます。女性労働、教育、幸福度指数は、学生にとって身近なテーマであり、自分の将来に直結する課題です。いずれも比較を通じて現状や課題が明らかになるため、論文作成においては日本との比較を学生に求めています。
社会システム学科はフィールドワークを重視する学科ですが、さすがにヨーロッパでのフィールドワークは難しいため、学生は文献や現地在住の日本人の方からの情報を収集するなど工夫しています。また、本学の卒業生にインタビューをしたり、ユニバーサルデザインがテーマの場合は住宅展示場に足を運ぶなど、可能な限り現地調査に取り組んでいます。
ゼミ活動においては、ヨーロッパの芸術作品を集めた美術館の見学や、企業活動と環境の取り組みを知るための工場見学といったフィールドワークを行っています。ビール工場の見学では、事前にその企業の環境報告書を読み、現場では廃棄物の有効利用など最前線の環境対策を工場長に取材します。見学後はゼミでディスカッションを行うなど、体系立てて学んでいます。
国際的な視野を持つために英語の運用能力も重視します。お昼休みに研究室の扉を開けておくと、ゼミ生がやってきて英語での雑談が始まることもあります。社会システム学科では独自の英語プログラムCASE(Career and Academic Studies in English)で学ぶ学生もいます。英語運用能力の高さはもちろん、国際問題や経済問題もネイティブスピーカーの教員から学んでおり学生の知識も豊富です。ランチタイムのリラックスした雰囲気のなかで話題は尽きません。
こうして身につけた知識や能力を就職活動でも発揮してくれている学生たちは、金融機関やIT企業、エアラインなど多様な企業へ就職しています。
社会システム学科が設置されたときのスローガンが「タフ&エレガント」。エレガントな部分と社会人としてのタフさを持って、社会のさまざまな場面で活躍していてたのもしく感じます。
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同女の卒業生に対する企業への信頼と期待はとても大きい。
同志社女子大学では毎朝礼拝を行うなど、教育理念のひとつである「キリスト教主義」が日々の生活に根付いています。最近は自分の利益を優先したり、自分さえよければという風潮が強まっていますが、他者への思いやりや連帯性を重視するキリスト教の精神を自然に養うことができるのは、とてもよい学びの環境だと思います。
また6学部11学科を擁する総合大学でありながら、6000人ほどの学生数であるため、教職員と学生の距離感がほどよいと感じます。親身に指導できる距離であって、逆に近すぎることもない。学生にとっては居心地のよい学生生活を過ごせる空間だと思います。
こうした恵まれた学びの環境と140年を超える歴史、学生の資質もあり、高い就職率を維持しているのも本学の特長です。私はキャリア支援委員として、さまざまな企業を訪問してきましたが、人事部のご担当者から「同女の卒業生はまじめで、高い能力を発揮してくれています」と褒めていただくことが非常に多いです。卒業生たちの奮闘が、就職率の高さにつながっていると実感します。
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受験生のみなさんへ
日本人に足りないのは国際的な視野だと思います。世界で起こっていることにもっと関心を持ち、積極的に情報を得て、自分自身で考える力が必要です。内側から世界や社会を見るだけでなく、外側から見るグローバルな視点をぜひ磨いてほしいと思います。そうした視点を身につけ、社会で活躍できるビジネスパーソンを目指してください。
卒業論文テーマ例
- ヨーロッパ連合(EU)の発展と課題
- 「水の都」と呼ばれる都市:ベネチアと大阪市
- ドイツの再生可能エネルギーについて
- オランダのワーク・ライフ・バランス研究
- ドイツ経済から働き方改革を学ぶ
- CHANELの愛される理由はどこにあるのか
- フランスの結婚制度と女性のライフスタイル
- ハプスブルク家のお菓子の歴史