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教員が語る同志社女子大学の学び

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「福祉」
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「こども」
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「人権」

こどもの福祉が
社会にどう根付いてきたか
変遷を研究しています。

社会システム学科

倉持 史朗教授

「携帯乳児」(刑務所で生まれ・育つこども)の実態を初めて明らかにしました・・・。

かつて、日本では刑務所で生まれた赤ちゃんが、3歳まで刑務所で暮らしていた時代があります。
2009年ごろまで女子刑務所には保育室があり、服役中の女性が産んだ赤ちゃんが育てられていました。「携帯乳児」と呼ばれ、法律上は人ではなく、持ち込み可能な荷物の一部として扱われてきたのです。明治時代は乳幼児を3歳まで刑務所に携帯できる法律(現在は1歳半まで)があり、多いときで数千人の乳幼児が収監されていました。しかし、親は自由に授乳することができず、赤ちゃんの栄養状態は非常に悪い。さらに刑務所は基本的に私語禁止であるため、こどもに話しかけることもできず、結局こどもの発達が遅れてしまう。刑務所を出た後も、こどもにとっては過酷な人生が待っていました。現在日本の刑務所では、服役中の女性が出産する場合は約1週間、刑の執行を一時停止して刑務所外で出産。その後、赤ちゃんは親戚や里親、あるいは乳児院に預けられるようになっています。しかし現在でも、携帯乳児はその言葉とともに存在しています。

この携帯乳児という制度については、人権の歴史の中で触れられることがなく、福祉の研究者もほとんど知りませんでした。そこで私は、刑務所に関する資料や帝国会議議事録などの資料を調査して、携帯乳児に関する実態とその問題性を明らかにするために論文で発表したり,『監獄のなかの子どもたち』という本を出しました。

社会福祉学のなかでも児童福祉を専門とする私は、こどもの人権・福祉が、近代国家のなかでどう根付いてきたかの調査・分析を研究の柱としています。特に戦争や災害では高齢者やこどもが犠牲になりやすく、そうした環境下で人権や福祉がどう守られ、保護されてきたか、を追究しています。

私がこどもの人権・福祉に関心を持ったのは、社会福祉について学んでいた学生時代、学習塾講師の経験がきっかけです。恵まれた環境に育った才能豊かなお子さんの指導を担当し、こどもの成長に、養育環境がどれだけ重要であるかを痛切に感じました。
その後、犯罪や非行行為などをしたこどもが生活する児童自立支援施設で実習させていただき、職員としても勤務するなかで厳しい家庭環境に育ったこどもたちと接し、人権・福祉について深く考えるようになりました。

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社会福祉を学び考えることは、困難から立ち直る力になる。

私のゼミは、こどもの人権・福祉がテーマです。「社会福祉論」や「女性と社会保障」といった私の授業を受講してゼミに興味を持ってくれた学生もおり、広く社会福祉についても考えていきます。
学生の卒業論文のテーマは多彩で、子育て支援や待機児童問題といった自分たちの将来に直結するような社会課題を取り上げる学生や、一人親家庭の問題、精神疾患について研究するゼミ生もいます。
卒業論文の制作にあたっては、調査やインタビューをしたいという意欲的な学生が多数います。しかし、テーマが非常にデリケートで学生個人が当事者に直接話を聞くことが難しいことから、クラスや教員である私も立ち合って支援する人や当事者に話を聴きに行ったり、彼らをゼミに招いて現場の話をしてもらう機会を設けています。

最初は興味本位であったり、どこか他人事だと感じさせる学生の論文も、指導を経て何度か手直しをするうちに真剣味を増してきます。私が学生に厳しくなるのは「文面にあなたの苦悩(葛藤したり,考え込んだりした跡)が見えない」時です。大切なのは、最初から着地点を決めてきれいな文章にすることではありません。例えば児童虐待について、「あなたの卒業論文を読んだ人、あるいは誰かがあなたに話をしてくれたことで、1人でもお子さんに手をあげるお母さんが減る、そういう研究になりましたか」と尋ねます。
学生が本気になって研究に取り組むと、紡いでいく言葉からもその学生の努力が見えてきます。ものごとを深く追求する姿勢は、社会に出てからどの世界でも求められることであり、自分の力でものごとを突きつめた経験は、社会のどんな場面でも生かされます。

ひたすら福祉の専門職資格の取得を目指すのではなく、社会福祉について学び、考え抜くことは、一人の人間として、女性として生きていく上でゆるぎない知恵になると思います。自分自身のみならず、家族や友人が困難や壁にぶつかったときに、それを乗り越え、立ち直るための手助けができたり、前もって逃れる術も教えてあげることもできます。

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学びも将来の道も、自由に選びとることができる大学です。

リベラル・アーツを教育理念のひとつとする同志社女子大学。社会システム学科は、まさにその象徴と言える学科だと思います。現代社会について広く学び、そのなかで関心を持った学びについて、専門家である教員のゼミに入って究めていくことができる。他大学ではなかなか経験できないでしょう。私の専門である社会福祉についても、福祉の専門家を目指して国家資格の合格に突き進むという選択肢だけではなく、学び方や将来の進む道を自由に選びとることができます。

学部・学科の枠を超えて、興味・関心のある科目を自由に履修することもできます。学生時代に広い視野をもって社会や世界について知り、考える経験は、先の人生の確かな支えになるでしょう。
リベラル・アーツを教育理念に掲げる同志社女子大学で学んだ人たちが、これからも社会で活躍していくことは、大学教育の「古くて新しい」ひとつの模範になるのではないかと思います。

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受験生のみなさんへ

自分が大学で勉強した内容が100点満点中、何点だったかは、卒業してから気づくことが多いように思います。同志社女子大学らしい学生に押しつけない学び、柔軟に自由に学べるよさを享受して、豊かな教養と知識を身につけてください。卒業後の人生の途中で、本学での学びの意味と意義の深さを実感できるのではないでしょうか。

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倉持 史朗教授

現代社会学部 社会システム学科 [ 研究テーマ ] 児童福祉、社会福祉歴史・思想

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 日本における育年期までの自殺と犯罪・非行の共通素因の検討ー原因・対策の先行文献から考察を行う試み
  • 「ゲーム障害」を取り巻く現状とその予防策について
  • 動物の命を大切にできる社会への実現ー殺処分を「O」にするには
  • 児窟虚待防止のための子育て支援に関する研究
  • 若者の醜形恐怖症についてのさまざまな側面からの要因と治療
  • 障害者の外出支援(同行援護)に関する研究
  • 乳児を持つ親の子育て支援の研究
  • 鉄道における移動制約者のモビリティ確保
  • 児童養護施設における自立支援ー地域社会とのつながりから見出す自立支援
  • 現代社会の子育てにおける病児保育の役割一子どもと保護者に寄り添う最適な病児保育とは
  • 子育てにおける「食」の役割