「地理」
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「歴史」
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「観光」
まちの成り立ちを研究し
観光はじめ
地域活性化に活用します。
社会システム学科
天野 太郎教授
京都、富良野を中心に実践的な研究を行っています。
1200年の歴史を刻む京都。このまちを訪れる多くの観光客が平安神宮に参拝されますが、実は1895年、第4回内国勧業博覧会のパビリオンとして建てられたのがその出発点です。
平安神宮のみならず、京都の観光名所として知られるスポットは、1200年の歴史に裏付けられたものばかりではありません。同時に、それらをひもといていくと、観光都市・京都がどのように形成されてきたか、歴史的背景がよくわかります。
私は専門である地理学をベースに、人文地理学や歴史地理学、観光学を追究しており、そのテーマのひとつが「どのようにして京都が観光地になったか」です。現在の京都のまちづくりにおける観光の意義や課題についても研究しています。
研究対象は京都に限りません。観光とは人を集めることが目的ではなく、人が集まることによってまちの活性化を促す、ひとつの手段だと私は考えています。そこで古い歴史を持つ京都とは対照的に、明治時代後半に本州から多くの入植者を受け入れた新しい街、北海道・富良野の観光を通したまちづくりについて実践的な研究を進めています。
北海道は地域を輝かせるための取り組みが非常に活発で、富良野もそのひとつ。私は15年以上にわたって授業プログラムの一貫として学生を引率して富良野に入り、地域の方と共にこれからのまちづくりを考えています。
京都と富良野では、まちの歴史や形成プロセスが異なります。しかし、中心市街地で高齢化が進み空き家率が上昇する京都と富良野は、共通の課題を抱えています。
地理学は、単に現在の地域を考えるだけでなく、古い時代の事実を学び、それがいまにどう生かされているのか現代につながる地理的な課題を研究する学問です。それら知見を、多世代型・多地域型の視点から地域の課題解決にフィードバックすることを目指しています。
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現地調査を中心に答えを見つけ出すプロセスを学びます。
京都学、観光学を掲げる私のゼミでは、「地域」をどのように捉え、考えるかを切り口に、学生が各々のテーマで卒業論文に取り組んでいます。
例えば、「プロジェクト演習」として前述の北海道・富良野でインターンシップ(就労体験)に参加した学生は、その経験を元に卒業論文を作成しました。地元の高校生が立案・開発したご当地カレーの「富良野オムカレー」の実演・販売を手伝いながら、なぜこの食べ物を立案したのか、地域の人はどのように受容しているかなどを調査・研究しました。
ゼミ生の中には教職課程を履修している学生もいて、地域教育を研究テーマに選ぶこともあります。たとえば地域の特別支援学校がどういったプロセスを経てその場所に設置されたか、本当に必要な場所に設置されているか等、地域と教育の2つの観点から学校の立地について研究した例も見られました。
卒業論文の取り組みにおいては、現地調査を重視しています。知らない地域に飛び込み、現地の人に話を聞くために何度も足を運ぶことは、決して簡単ではありません。忙しいと断られたり失敗することもありますが、誠意を持って働きかけることで熱意は必ず伝わります。「はじめまして」ではなく、「お帰りなさい」と言われるぐらい地域に溶け込めるか、すなわち「場所の理解」が地理学では重視されます。大切なのは、自分の力で答えを見つけ出すプロセスを学んでいくことです。もちろん、知らない地域での調査に向けた下準備の指導や、安全性の担保など教員としてできる限りのサポートを行っています。
知らないまちで人々と交流を重ね、多様な価値観に触れることにより、知識の蓄積だけでなく、その面白さを感じてほしいと思います。出会いや交流をプラスに捉える力は、社会に羽ばたいていった際に、あらゆる場面で発揮することができます。
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奈良文化の最北端、京都文化の最南端にあるキャンパス。
社会システム学科のキャンパスがある京都府京田辺市は、京都・大阪・奈良の中間点にあたり、地理学や歴史学の観点からも重要なエリアです。例えば、キャンパスと最寄り駅の間にある細い道は日本最古の道路のひとつ、古代の山陽道です。奈良に都が置かれたときに、都と山陽地方を結ぶ最も重要な道として造られました。
キャンパスの近くには、奈良の興福寺と関係の深い観音寺があり、奈良文化の最北端と言われています。また、応仁の乱後に一休禅師が人生の後半を過ごした酬恩庵一休寺も近く、京都文化の最南端と言われます。京都市内から少し視野を広げることで、市内以上に古い歴史や文化を持つ場所があることに気づく。そうした京都全体を俯瞰できる視点が京田辺にあると考えています。
一方で本学には京都御所のすぐそばに今出川キャンパスもあり、社会システム学科ではここを拠点にした「京都フィールドワーク」や、京町家を活用して地域交流を行っている企業・団体にインターンシップとして参加する授業もあります。2つのキャンパスを有機的に活用し、大阪や奈良を見すえて京都のまちを学べるのが同志社女子大学です。
本学のもうひとつの特長は、非常に幅広い学問領域をカバーしている点です。社会システム学科だけでも、観光・歴史をはじめ、ビジネス、心理、福祉、教育などを学ぶことができます。さらに他学部である薬学や看護、音楽といった全く異なる学問領域の講義を受けることも可能であり、学生にはこの利点をおおいに活用してほしいと思っています。
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受験生のみなさんへ
京都は伝統重視の街だと捉えられがちですが、実は常に新しいものを取り入れてきた街です。日本初の水力発電所があり、三条通にはモダンな煉瓦建築の洋館が並び、京都御苑の前にはキリスト教主義の本学があって、IT関連企業も多い。新しいものへの挑戦が京都の魅力だと私は思います。このまちについて幅広い視点で学び、本当の京都を知る手がかりとしてください。
卒業論文テーマ例
- 伝統野菜が地域に与える影響と可能性
~守口だいこんを事例として~ - 地域の食文化の成立と展開
~富良野オムカレーを事例として~ - 奈良県における廃校施設活用の可能性と課題
~奈良県宇陀市を事例に~ - 商店街を中核とした地域活性化
- 神戸市のインバウンド観光の現状と「観光」の持つ力とこれからの可能性
〜酒蔵を事例に〜 - 中心市街地における伝統的町並みの保存と活用
~大阪市北区中崎町を事例として~ - 伝統産業が抱える課題と今後
~三輪そうめんと伏見人形を事例に~ - 復興イベントの持続性とその意義
~神戸ルミナリ工を事例に~ - 長野県内における観光連携の可能性
- 持続可能な伝統的祭礼のありかた
~福島県浜通り地域における「相馬野馬追」を事例として~ - 奈良におけるシカの観光的価値
- 持続可能な遊園地のあり方
~ひらかたパークを事例に~ - 市街化地域における廃校跡地の可能性
~京都市における旧番組小学校を事例として~ - 国境離島地域における観光振興のありかた
~壱岐市を事例として~ - コンテンツが地域に与える影響と課題
~滋賀県大津市『ちはやふる』を事例として~ - 写真による地域活性化
~京都八坂庚申堂を事例として~ - 尼崎イメジの成立と展開
~芦屋市との比較を通して~ - 近代日本の郊外住宅の形成と可能性
~池田市室町住宅を事例として~ - 旧天満市場を中心とした町の活性化
- 京都市における町家の保存と地域活性化について