dwcla TALK ようこそ新しい知の世界へ

教員が語る同志社女子大学の学び

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「分析化学」
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「生体内医薬品」

創薬や医薬品製造に欠かせない
新しい分析法の開発に
取り組んでいます。

医療薬学科

山内 雄二准教授

生活習慣病をターゲットに
酵素活性を数値化する新しい分析法の開発を。

私たちが普段何気なく服用している薬ですが、その製造過程では非常に厳しい品質管理が行われています。精密な品質の評価・管理によって有効性や安全性が確保されているからこそ、私たちは安心して服薬できるのです。医薬品の品質管理を支えるひとつの分野が分析化学であり、さまざまな物質を正確・精密に数値化する学問です。私の研究室では、薬学における分析化学をテーマにしています。

薬学における分析化学には大きく分けて3つの領域があります。ひとつは上記の医薬品製造における品質管理、次に薬のもとになる化合物の探索、そしてその化合物の生体内での作用、すなわち生体メカニズムの解析です。
「医薬品分析学研究室」では、これらすべてに取り組んでおり、私は主に薬のもととなる物質の探索を目指した新しい分析法の開発・改良をテーマとしています。

例えば、お茶に含まれるカフェインを分析する場合、多様な物質が混合された状態では分析機器にかけることができず、カフェインだけを抽出する方法が必要です。そこで、試料のなかの有機物を選択的に除去するなど前処理を行います。こうした適切な前処理を含む分析法の開発が研究テーマのひとつであり、漢方薬の品質管理への応用を進めています。
病院での処方も増えている漢方薬ですが、原料の生薬は天然素材であるため、産地の違いなどによって有効成分の含有量が異なります。そこで私たちの開発した分析法を使うことで、必要な成分だけを簡単に選択的に分離させ、正しく数値化することを目指した研究を行っています。

この研究を発展させた新たなテーマにも取り組み始めました。化合物の生体内の生理活性や酵素活性を正確に観察するため、共存物質が及ぼす影響を減らすための分析法の開発です。ホルモンや酵素が体内で作用する機能を生理活性や酵素活性と言いますが、新しい医薬品を開発するなかで、この生理活性・酵素活性を数値化できなければ薬の有効性を正確に判断することができません。そこで最近は、酵素活性と関わりの深い糖尿病を中心とした生活習慣病をターゲットに、新しい分析方法の開発に取り組んでいます。

分析化学は決して目立つ学問ではありませんが、薬学のみならず工学や医学、どんなサイエンスにも欠かすことのできない、縁の下の力持ち的な分野だと思っています。薬学の領域では、必ず患者さんの役に立つ。そして私たちが数値化したデータからさまざまな研究が進み、創薬をはじめ医療の進歩に確実に貢献できます。

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「同女の学生さんは倫理・道徳から外れない、なぜですか」。

薬学における分析化学は非常に幅が広く、分析技術は血液や組織などの検体を分析する臨床検査やCT検査などの画像診断学にも応用されており、学生はその原理も学びます。1年次から始まる医薬品分析化学、そして機器分析学や生体分析化学までを学び、興味を持った学生は3年次の秋学期から「医薬品分析学研究室」に配属となります。

研究室に配属されると、まず先輩から実験のスキルをひとつずつ学んでいきます。正確な濃度での溶液の作り方や各分析装置の使い方を習得し、正確なデータを取るための基礎を身につけます。同時に論文を読み、研究論文や科学論文とは何かを学んでいきます。
実験の基礎を身につけて正確な数値が出せるようになると、先輩とチームを組んで研究テーマに取り組みます。例えば酵素活性のテーマのもとでは、基礎的な条件検討をするグループ、その条件のもとで実験を行い数値化するグループなどに分かれます。

実験では、予想と異なる結果が出ることが往々にしてあります。重要なのは、予想と違っていても再現性をもった結果であれば真実だということ。結果に真摯に向き合い、自分たちの考えを修正してまた新しい理論のもとで実験を重ねていく。この点は厳しく指導しています。さらに重要なのは、コツコツとデータを出し、最終的には「倫理観・道徳観・責任感」を持って数値を判断していくことです。「倫理観・道徳観・責任感」は、科学者や医療従事者になくてはならない資質です。

5年次になると学生は研究活動と並行して、病院や薬局での実務実習に参加します。これまで多くの実習先の薬剤師の方からこんな質問を受けています。「同志社女子大学の学生さんはすごいですね。倫理や道徳から外れることは絶対にしない。どういう教育をなさっているのですか」と。
私は本学の教育の根本があるからだと考えています。すべての学生が1年次からキリスト教主義について学び、決して押しつけではなく、道徳・倫理を身につけていく。人の命を預かる専門職になくてはならない「倫理観、道徳観、責任感」を育む教育が日々行われているからだと思います。

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検査結果などデータを正確に読める薬剤師として活躍。

病院や薬局での薬剤師の仕事を外から見ると、調剤という作業に映るかもしれませんが、そうではありません。処方箋を受け取って調剤をし、患者さんに医薬品を渡すまでの流れの中では、あらゆるデータを見て数値を整理し、頭をフル回転して知的作業を重ねています。
臨床薬剤師に求められるのは、医薬品に対する専門知識だけではありません。臨床検査のデータを正しく読む分析化学者の視点も重要です。患者さんに関するデータを読み、さまざまなことを判断する。例えば、臨床検査のデータで高い値が出ていれば、それが本当に病気によるものなのか、医薬品の副作用など別の要因によるものなのか、正しく判断する能力が必要です。

卒業生の多くは、臨床薬剤師として医療現場に出て活躍しています。在学中の研究活動で身につけた分析化学の知識、データを正しく読み判断する能力、そして粘り強くコツコツ積み上げていく力を発揮してくれているようです。
また、同志社女子大学ならではの学生同士・学生と教職員との結束力の強さから、先輩・後輩と連携してチームで取り組む能力やコミュニケーション力を育み、チーム医療の現場でそれらを生かしてくれています。

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受験生のみなさんへ

コロナ禍で医療従事者に注目が集まり、薬剤師が主人公のテレビドラマも放送されるなど、薬学に興味を持つ人も多いと思います。人の命を預かる仕事はやりがいが大きいですが、倫理観・道徳観・責任感がなければ務まりません。覚悟を持って学んでください。それだけに学びがいのある学問であり、専門職です。

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山内 雄二准教授

薬学部 医療薬学科 [ 研究テーマ ] 生体成分や生体内医薬品の新規分析法の開発および臨床化学的応用

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • ポリビニルポリピロリドン固相前処理を用いる市販茶飲料含有カフェインの迅速分析
  • 迅速HPLCを用いたカフェインの分析
  • 天然材料由来サンプル分析のための簡便かつ迅速な試料前処理方法の開発
  • ビンロウジ及びビンロウジ配合漢方製剤・女神散に含有するarecoline及びその類縁体分析のための分析試料前処理法の検討
  • PVPPを用いた分析試料前処理法によるビンロウジ含有漢方薬・九味檳榔湯中のarecoline類定量法の確率
  • モッコウ及びモッコウ配合漢方薬製剤へのPVPP試料前処理法の適用
  • リパーゼ活性調節因子の探索に関する研究
  • 新規抗酸化物質の探索に関する研究(ORAC法による探索方法の改良)
  • チョウジ及びチョウジ配合漢方製剤へのPVPPを用いた分析試料前処理法の適用
  • PVPP試料前処理法を用いたキジツ含有成分の選択的定量分析法の検討
  • キジツ及びキジツ配合漢方製剤に含有するナリンギン、ネオヘスペリジンに対するPVPP試料前処理法の適用
  • オウゴン及びオウゴン配合漢方製剤・三黄瀉心湯及び黄連解毒湯に含有するバイカリンのPVPP吸着及び脱着特性の検討
  • PVPP前処理法を適用したDPPHラジカル消去法を用いた茶葉抽出液の抗酸化活性測定
  • ポリフェノール化合物によるα‐アミラーゼ活性評価~PVPP前処理法を適用した評価方法の改良~
  • PVPP前処理法を利用した酵素活性評価方法の改良~α-アミラーゼ阻害活性評価法への適用~
  • ポリフェノール化合物共存下における糖尿病薬アカルボースのα-アミラーゼ阻害活性評価