dwcla TALK ようこそ新しい知の世界へ

教員が語る同志社女子大学の学び

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「時間」
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「空間」
×
「薬効」

体の中の薬の動きを研究し、
臨床現場への
応用を目指します。

医療薬学科

喜里山 暁子准教授

できるだけ副作用を抑え、効果を発揮する薬の開発に貢献

体調がすぐれないときに、決められた用法・用量で薬を服用すると、いつの間にか薬が効いてきて体がラクになる。多くの人が経験していると思います。
こうした「薬の服用~薬効の発揮」に欠かせない学問が「薬物動態学」です。体の中に入った薬がどのように吸収され、体内に分布し、薬効を発揮して体から排出されるのか、薬の動きを時間とともに捉えます。効果を得るために必要な薬の量や投与の方法・頻度などを決めるため、体の中の薬の動きを経時的に追究し、効果のメカニズムを追究する「薬理学」の分野の学問と合わせて効果の現れ方まで追っていきます。

体の中はブラックボックスのようで、実際に薬が体の中でどのように動き、どう作用しているかは見えません。そこで「ある条件のもとであれば、薬がこう動く」というモデルにあてはめて考えていくと、動きや効果が説明可能となり、それを研究で明らかにしていきます。
現在私たちは病態モデル動物を使い、高血圧、糖尿病、認知症の治療薬の研究を行っています。静脈内投与や経口投与後、時間ごとの血中の薬の濃度を測定するとともに、高血圧の薬であれば血圧、心拍数や心電図の波形などの測定を通して効果を調べるほか、副作用として心不全などを誘発しないか実験を重ねており、これが1つ目の研究テーマです。

2つ目のテーマとして、薬の「吸収」に着目した研究も行っています。薬が体に入るとき、同じ薬物でも、結晶化した薬物と規則的な分子配列を持たない非晶質化薬物では水への溶けやすさなど性質が異なり、結晶形の違いと吸収との関係や非晶質化したときの安定性について調べています。水への溶解性が低い薬物は、薬物が消化管液に溶けにくいことから吸収されにくいという問題があります。そのような薬物の吸収性を上げる手段としてこの非晶質化を生かせないか、吸収のスピードや量の制御で、期待できる薬効が予測できることから、製剤設計への応用を目指しています。

3つ目の研究テーマがDDS(ドラッグデリバリーシステム:Drug Delivery System)です。体に入る薬の量や時間などを制御して薬を伝達するシステムで、服薬回数や注射の頻度を減らしたり、必要な部位に必要な量の薬を運び、薬の副作用をできるだけ抑えられるなど、たいへん注目度の高い技術です。例えば、ターゲットの臓器に特別に集まるよう工夫した製剤をつくることで、少ない投与量で効果が発揮できるなど、製剤設計に寄与できます。
いずれの研究においても、薬の動きを調べて分析し、それをどうすれば医療の現場に生かせるかを追究しています。

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授業・実習・研究の複合的な学びで能力を伸ばします。

「薬物動態学研究室」では、前述の3つのテーマのもと、学生が研究活動を行っています。
3年次生の秋の研究室配属直後は、文献を読んだり、実験技術の練習から始め、4年次生の前半までは授業と並行して実験を進めていきます。
技術が未熟なうちは実験で正しい結果が出にくく、とりわけ動物を使った実験は個体差による誤差が大きいため、正確なデータを出すのは困難です。学生への指導においては「なぜうまくいかなかったのか」といった対話を重視しています。

4年次生では学外実習に向けた実技試験の準備など、実験に集中できない期間もありますが、実習を終えて研究室に戻ってくると学生の研究活動への姿勢が大きく変わります。実験結果に対して深慮し、自発的に問題提起をするなど、成長は明らかです。病院や調剤薬局など実習先で考え抜く力が身につき、客観的に自分を見ることができるようになるのでしょう。授業と試験、実習、そして研究活動の複合的な学びにより、臨床で欠かせない課題設定力と課題解決力が身についていきます。

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患者さんに寄り添える薬剤師が求められています。

医療は日々進歩し、同じ病気に効果のある医薬品であっても、狙いどころの異なる新しい作用機序の薬が今後も続々と出てくるでしょう。それらに対応できる薬剤師になるためには、情報を分析し、考えを深めていく習慣が不可欠です。そうすれば、医療現場で期待した効果が得られない、副作用が現れたなどの問題が出たときに、医薬品の臨床試験や症例報告のデータから原因は何か、次はどの薬が使えるかを考え抜くこともできます。

これからの薬剤師に求められるのは、病院では、チーム医療において患者さんのライフスタイルを考慮した薬物治療を提案できる力、調剤薬局では、在宅医療が急増するなかで、患者さんのわずかな生活の変化・病状の変化にも気づける洞察力が求められます。
学生時代にこそ、こうした機微を感じ取れる力を養うことが重要です。薬学部は単科大学が多く、私もそうした大学の卒業生の一人ですが、学生生活では薬に関連した話が中心になってしまいがちです。その点、総合大学である同志社女子大学では、異なる分野の学びを身近に感じ、他学科の先生や学生との交流からさまざまな人の立場が理解できる機会が数多くあります。同志社女子大学で学び、さまざまな立場の患者さんに寄り添える薬剤師を目指してください。

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受験生のみなさんへ

医師であれば診療科ごとに仕事は異なりますが、薬剤師は薬について広い視野を持ち、診療科を問わず働くことが求められています。薬物治療の専門家として責任は重いですが、それだけにやりがいも大きく、すでに多くの女性たちが活躍しています。6年間の学びは長いと感じるかもしれませんが、生涯にわたり能力を高め、プロとして活躍できる職業です。

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喜里山 暁子准教授

薬学部 医療薬学科 [ 研究テーマ ] 実験動物を用いた体内動態と薬効および
薬物間相互作用の動態学的研究

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卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • GKラットにおけるGlimepirideのPK-PD解析-Normalラットとの比較-
  • 難水溶性薬物に対する新規吸収改善方法の開発ーフロセミドを用いた種々の検討ー
  • 新規生体膜透過機構に基づくシプロフロキサシン粉末吸入製剤化に関する検討 - 非晶質製剤作製及び in vitro 膜透過性評価 –
  • 新規膜透過機構に基づくシプロフロキサシン粉末吸入製剤化に関する検討 - In vivo ラット体内動態評価 -
  • 自然発症高血圧ラットを用いた nifedipine の 体内動態と血圧の関係および副作用発現
  • Donepezilのラットにおける体内動態と効果、および臓器移行性-単独投与時とCilostazol併用投与時の比較検討-
  • 糖尿病モデルラットを用いたグリメピリドの体内動態と効果 PK-PD解析による定量的検討