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教員が語る同志社女子大学の学び

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「臨床」
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「潮流」

「医薬品の適正使用」を
キーワードに、トレンドに
着目した研究を行っています。

医療薬学科

成橋 和正准教授

不安なく漢方薬を使用できる、そのための研究です。

私は医薬品の消化管吸収に関する基礎研究を行うとともに、患者さんに近い臨床現場で活動したいとの思いから、大学病院で薬剤師として患者さんへの服薬指導を経験しました。その後も定期的に調剤薬局で服薬指導を行いながら、「医薬品の適正使用」をキーワードに研究を行ってきました。
薬剤師の業務が発展するなかで、特定の距離感をもって臨床現場を見てきたこれら経験を、研究者として、薬学教育の教員として、生かしていくことを目標としています。

私の研究のキーワードである「医薬品の適正使用」は、まさに本学科の名称である「医療薬学」の領域、医薬品を正しく使うことを目的とした研究分野です。
医薬品は、適切に管理した上で、正しい服用・使用をしなければ、期待する効果が得られないばかりでなく、毒ともなり得ます。患者さんを守り、医療現場で医薬品が効力を発揮するためには、その適正使用が不可欠です。
また医療は日進月歩であり、難治性の疾患であっても、新薬の開発により、ほとんどの患者さんの治療が可能になる、ということが生じます。医療や医薬品にはトレンドがあり、潮流を視野に入れた研究は重要です。

こうした医療のトレンドを意識したいくつかの研究を行ってきました。例えば、抗生物質の使用頻度に関する調査・研究、抗がん剤の副作用の増悪因子について、あるいは後発医薬品(ジェネリック医薬品)の品質に関する研究などがあります。
そして現在は「漢方薬の使用」に着目した研究を行っています。

高度先進医療を担う大学病院では、漢方治療を行う「漢方外来」が開設され、認知症に伴う精神症状の改善、あるいは抗がん剤の副作用対策にも漢方薬が使われるようになってきました。多様な診療科で漢方薬が使用され、医療の潮流のひとつとなっています。

最近は、飲みやすい顆粒タイプの漢方薬が使われるようになってきました。処方箋が必要な医療用医薬品の漢方薬は成分や品質の規定がはっきりしていて、正しく管理されていますが、ドラッグストアなどで処方箋なしで購入できる一般用医薬品の漢方薬は非常に種類が多く、名称が同じでも中身には相当な違いがあります。一方で、昔ながらの生薬を煎じて服用する方法が見直されて使用を好む患者も増えていますが、同じ漢方でも生薬の配合比率が異なったり、煎じ方や服用の仕方が異なります。
そこで漢方薬を不安なく使えるよう客観的なデータを出し、分析・検証を重ね、成分量の観点からメリット、デメリットを科学的に証明することを研究の目標としています。

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学生は学会発表を目標に、研究に取り組んでいます。

私の研究室では、現在学生が根気よく漢方薬の使用に着目した研究を進めてくれています。最初に行ったのが、どんな一般医薬品があるかの情報収集、内容がどれだけ異なるのかといったデータ収集です。
さらに、昔ながらの生薬を煎じて飲む場合、従来通りの煮出し方がよいのか。最近普及してきたIPCD法という生薬を粉末化して成分を抽出する方法でも、服用の仕方は従来通りでいいのか、さらに、煎じ方の違いによる成分の出方の違いについて実験を行っています。

私が指導で最も重視しているのが、実験条件を明確に定めることです。例えば、漢方を粉々に砕く際に、砕いた状態が違えば実験結果は異なります。臨床現場での砕き方に差異はありますが、その中で一定のラインを決めて実験を行っていく。煎じる時間はどうするか。こうして最初に実験条件を決めることが、最終的に必要な全データを得るうえで重要になってきます。

実験を立ち上げて1年ほどですが、6年次の学生が工夫を重ね、6年次生も5年次生・4年次生をしっかりとサポートするなど、学生個々の成長が見て取れます。
漢方や有機化学に関する疑問点について生薬学研究室の先生にアドバイスをいただき、また、漢方軟膏剤の安定性を見ている学生は物理化学的な評価法について製剤学を専門とする先生に相談するなど、他の研究室の協力も得つつ研究を進めています。
漢方薬の味やにおい、飲み方も研究対象としているため、生活科学部 食物栄養科学科の先生のアドバイスも心強い限りです。総合大学の強み、本学の学部間の連携のよさを学生も感じているようです。

自分の研究に責任を持ち、多くの人に研究内容を知ってもらうというモチベーションを維持するため、私の研究室では在学期間6年の間に一度は学会発表することを目標にしています。
実験が思い通りに進まず必ずしも完遂できないことはありますが、自分のデータに責任を持って研究を遂行し、その結果を説明するということは、科学者に不可欠な経験です。

薬剤師の仕事は多岐にわたり、しかも医療にはトレンドがあります。そのときどきに何が重要で、何をクリアにしなければ医療が正しく行われないのか、臨床現場での課題や問題点を自ら抽出し、解決できる薬剤師を養成したいと考えています。
知識の習得は言うまでもなく、薬剤師として情報を正しく理解し、それを患者さんや他の医療従事者に説明し、適切に指導できるかが重要です。単なるコミュニケーション力ではなく、薬学的な知識を持って総合的に考え判断をし、自分の考えを述べる能力が必要です。
今後AIが医療現場に入り多様な選択肢が示されると、そうした能力が一層求められます。

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“同女生らしい”薬剤師が臨床現場で活躍中です。

同志社女子大学で教鞭を執り16年目になりますが、“同女生らしい”薬剤師が育っていることを実感します。卒業生の勤務先からも「患者さんに対して優しく丁寧なだけではなく、患者さんのことを第一に考えて仕事をしている」という高い評価をいただいています。
個人の気質もあると思いますが、このキャンパスで学び、成長するなかで、育まれる人間性があるのでしょう。多様な学部・学科の教員や学生との交流によって、これまでの卒業生が、同女生らしさを創り上げてくれていると感じます。

私は以前から、薬剤師は女性に向いている、とくに臨床薬剤師は女性の力を発揮できる職種だと感じています。実際にアメリカの薬剤師は、かなりの部分をアジア系の女性が占めています。アジア系の女性は、データの収集・分析を細かに行い、医療現場での細かい作業も根気よく行い、患者さんへの指導もきめ細やかです。同女生らしさと重なります。
国内においても、女性の薬剤師の貢献度が高く管理職も多いなど、他の業界に比べると非常に多くの女性が活躍しています。育児との両立ができるよう、産休・育休のサポートが整い、制度の選択肢が多い調剤薬局なども増えています。

医療の高度化に伴い薬剤師の仕事は変化し、今後変遷のスピードはさらに増していくでしょう。薬自体が小さな分子量の物質だったものが、現在は分子量の非常に大きな抗体製剤なども出てきています。今後iPS細胞の技術が進めば、薬剤でも医療機器でもない医療材料の使用を薬剤師が担う可能性もあります。
そのためにはできるだけ多くの知識を持っておくことです。iPS細胞技術を考えるならば生物の知識、応用であれば物理的な考えも欠かせません。多様な知識を総合的に捉え、臨床現場で役立てることができるのが薬剤師です。

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受験生のみなさんへ

薬学部の学びは6年間という長い時間になるため、入学時点でかなりの覚悟が必要になります。一方、4年制の学部よりも気持ちにゆとりがあるため、じっくりと学びを深めて卒業研究にも取り組めます。学習量は多いですが、6年をかけて自分の将来に向けて着実に準備ができるのが薬学部のよさだと思います。

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成橋 和正准教授

薬学部 医療薬学科 [ 研究テーマ ] 医薬品の適正使用、病態時の消化管におけるトランスポーター、
代謝酵素発現と薬物吸収の変動に関する研究、
薬物有害作用発現要因の特定に関する調査

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 葛根湯の生薬煎出法の違いとエキス製剤におけるグリチルリチン酸の煎出量に関する検討
  • 葛根湯の剤形、煎出方法の違いとグリチルリチン酸の含有量
  • 葛根湯の製品と特徴
  • 大黄甘草湯における常煎法とIPCD法の比較
  • 大黄甘草湯における煎液の色彩の経時的変化
  • 大黄甘草湯をはじめ下剤の選択において利用者が添付文書から得られる情報について
  • 紫雲膏の主成分シコニンの安定性と混合時の安定性に関する検討
  • 紫雲膏中のシコニンの定量方法の確立
  • 麦門冬湯における常煎法による煎液の経時的な色の変化に関する研究
  • 麦門冬湯における常煎法による煎液の経時的変化に関する研究
  • 麦門冬湯を用いた生薬の吸水量と煎じ時間の関連性
  • 六君子湯含有坐剤の院内製剤としての有効性に関する調査
  • 薬用芍薬の品質特性と代替栽培品種の模索に関する調査研究
  • パッチテスト用試薬ArbutinとTEGO Betain L10S水溶液の安定性と保存性
  • パッチテスト用試薬3-O-Ethyl-L-ascorbic acidとButylene Glycol水溶液の安定性と保存性
  • パッチテスト用試薬TEGO Betain F50 SpecialとPropylene Glycol水溶液の安定性と保存性
  • パッチテスト用試薬Dipropylene Glycol水溶液の安定性と保存性
  • 京都市全区および阿倍野区における病院・診療所、薬局に関する調査
  • アントシアニン・デヒドロジンゲロンのヒト小腸上皮細胞モデルにおける輸送特性
  • 抗リウマチ薬のラット単離小腸組織ならびにヒト小腸上皮細胞モデルにおける輸送