dwcla TALK ようこそ新しい知の世界へ

教員が語る同志社女子大学の学び

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「がん」
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「生きる」

がんとともに生活する
患者さんの看護を
考えていきます。

看護学科

葉山 有香准教授

患者さんの課題・対応を調査し、情報共有を目指す研究です。

かつて私は、多くのがん患者さんが入院する病棟で看護にあたっていました。手術療法ではなく、抗がん剤による化学療法と放射線療法を受ける方が中心で、終末期で症状の緩和を中心にした治療を受ける患者さんも担当していました。
5年ほど経ったころ、肺がんの患者さんの息苦しさや倦怠感といった症状のコントロールの難しさを感じ「もっと勉強をして、よい看護を実践したい」と考え、大学院への進学を決意。大学院では、臨床での課題を焦点化し、文献で過去の研究成果を調べ、新たな視点で研究するというプロセスを経て、看護研究の手法を身に付けることができました。臨床の現場で実際に看護を経験したからこそ得た学びだと思います。
研究者として活動する今も、私のテーマは「がんとともに生活する人々への看護」です。

現在は放射線治療を受ける患者さんの研究を行っています。たとえば前立腺に放射線治療を受けると、副作用でトイレが近くなったり、腹痛が出ることがあります。放射線治療は外来での治療が中心なので、患者さんは一定期間毎日通院する必要があります。すると通院の電車の中でトイレが心配だ、急行電車は怖くて乗れない、といった困りごとが出てきます。そうした患者さんの課題を調査し、対処法をまとめたリーフレットを作成して、新たに治療を受ける患者さんに配布しています。
患者さんからは「同じ副作用に悩む患者さんの経験談から、ゴールが見えたようで安心した」「工夫点を真似したい」といった声をいただいており、患者さんの経験を情報として共有する重要性を感じています。

また、放射線治療の際に医療者が放射線を浴びないためにどんな工夫ができるか、といった研究も行っています。各施設での医師や看護師、放射線技師の工夫を調査し、勉強会で発表するほか、医療者の薬剤による健康被害を防ぐための全国調査に参加するなど、医療者に役立つ情報の共有にも力を注いでいます。

とくに化学療法では次々と新しい治療薬が開発されており、がん治療の選択肢が広がる反面、医療現場では経験したことのない事象が発生することがあります。新たな副作用の可能性もあり、日々の患者さんの観察やケアは欠かせません。そうした臨床における情報の更新・共有は研究の重要なテーマです。

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授業、実習、卒業論文をリンクさせて看護力を磨きます。

成人看護学領域のなかでも慢性期看護学領域を担当する私のゼミでは、がんの化学療法や放射線療法、また終末期の患者さんに関心を持つ学生が集まります。日本人の2人に1人が何らかのがんに罹患する時代だと言われますが、治療薬の開発が進み、生存率も年々上がっています。だからこそ、がんとともに生きていく患者さんへの看護観を養いたい、と学生は考えているようです。

卒業論文のテーマは、たとえば初めて化学療法を受ける患者さんの思いや、終末期における治療の意思決定などがあります。また、病院の相談支援センターに患者さんや家族からどんな相談が寄せられているかを調べ、それに対してどんな看護をすればよいのかを考える、といったテーマもあります。文献を調査し、それぞれが考察を深めていきます。

卒業論文は、日々の授業や実習とはまた違った学びが経験できます。学生の多くは近親者の死に直面したことがなく、実習でも終末期の患者さんを担当する機会は少ないため、死は未知の世界です。もちろん授業では、終末期の身体の状況やその後訪れる死について私たち教員が話をしますが、学生にとっては想像でしかありません。
そうしたなかで、ゼミで文献調査などを通して終末期の患者さんについて学び、死について深く考える時間を持つことは重要です。

そうやって授業、実習、卒業論文の学びをリンクさせていくことで、知識・技術が身につきます。とくに実習は生身の患者さんに接し「授業で学んだのは、こういうことだったんだ」という気づきを得るなど、非常に大切な学びの場です。
本学では3年次の秋学期から本格的に学外実習に参加します。コロナ禍のためイレギュラーではありますが、1つの病棟に3~5人1グループで参加し、教員も各グループに同行します。患者さんとのコミュニケーションで悩む学生は多く、どこに問題があったかを私たち教員と一緒に振り返りながら、実習での学びを積み上げていきます。
学外実習参加にあたっては、新型コロナウイルス感染症対策のための看護学部の行動方針を明確にし、実習前のアルバイトや多人数での外食の禁止など学生は徹底した対策を行っています。コロナ禍でも実習を受け入れてくださる病院や患者さん、ご家族のご厚意に心から感謝し、学部全体で学びの機会の確保に力を尽くしています。

実習前の学びに役立つのがプラクティカル・サポート・センターです。看護技術の基本を練習できるように血圧測定モデルをはじめとした設備がそろっており、いつでも学生が自由にトレーニングできます。看護師免許を持つ経験豊富なインストラクターが常駐し、サポートしてくださるのも学生にとっては心強いようです。酸素ボンベひとつをとっても、実際に自分の目で見て、触って、扱うことによって、実習に参加する前の心構えがまったく違ってきます。

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楽器の音が聞こえてくるキャンパス。恵まれた環境です。

私は長くがん患者さんの看護を担当してきたこともあり、患者さん個々の人生について考える時間がありました。「この方はどんな人生を過ごしてきたのだろう」と思いをめぐらせ、「これから、どう生きていきたいのか」を患者さんと語ることもよくありました。そして、患者さんとの会話から「じゃあ、私はこの先どうやって生きていくのか」を深く考えることができました。患者さんのおかげで、自分の人生を豊かにしてもらえている、と実感できました。看護職は素晴らしい仕事だと思います。

患者さんとの会話は、医療についてだけではありません。好きな音楽や家族、ペット、多様な患者さんと接するなかで、教養・知識がなければ会話が成り立ちません。
その点、総合大学である同志社女子大学なら、幅広い教養を身につけることができます。本学には看護学科以外に10学科あり、看護を学ぶ学生とは異なる分野に関心を持つ仲間と接する機会があります。学生時代にこうした経験を得るのは、何よりも大切です。楽器の音色が聞こえてくるキャンパスで看護を学べるというのは、恵まれた環境だと思います。

教員と学生の距離の近さも、同志社女子大学ならではかもしれません。とくに看護学科の教員は、看護師や保健師、養護教諭を経験してきた、人と接することが好きな人ばかりです。学生を見ていると「何か困っているな」ということがよくわかり、「いつでも相談に来てね」と声をかけることができます。必要なときに、必要なアクションが起こせる体制が整っているので、学生にとっては安心して学べる環境だと思います。

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受験生のみなさんへ

人の命に関わる看護の仕事は、当然厳しいですが、それに見合うだけのやりがいがある仕事だと私は思います。患者さんに専門職として関わり、患者さんのみならず、ご家族の人生にも貢献できる、そんな仕事は、他にあまりないと思います。ぜひ、看護を学んでください。

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葉山 有香准教授

看護学部 看護学科 [ 研究テーマ ] がんとともに生活する人々への看護

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 終末期がん患者を在宅で支える家族の苦痛を軽減させる支援
  • 余命宣告を受けた終末期癌患者をもつ家族の心理への看護師の関わり
  • 末期がんと宣告された患者が抱く心情と看護師の関わり方
  • 禁煙成功者や禁煙外来修了者の特徴と自己効力感
  • 脳深部刺激療法が適応されたパーキンソン病患者が抱える退院後の生活に対する不安と看護師の関わり方
  • 薬物療法を実施したがん患者の就労支援における現状と看護職が行う治療と就労を両立するための支援
  • 治療期にあるがん患者の家族の身体・心理・社会面における現状とそれに対する支援
  • 認知症を併存するがん患者への望ましい意思決定支援
  • 治療期の頭頸部がん患者の身体・精神・社会的状態とそれに対する看護師の関わり
  • 初回化学療法を受ける患者の思いとその思いに対して必要な看護
  • 終末期における治療に対する意思決定時のがん患者、家族の思いと意思決定後の家族の思い
  • がん患者およびその家族の相談内容から考える看護
  • 看護学生の死生観-その他の同学年の学生と比較して-