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教員が語る同志社女子大学の学び

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「心理」
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「急性期」

生命の危機にある
患者さんのこころの支援と
ケアを研究しています。

看護学科

小笠 美春准教授

がんで手術を受ける患者さんの「心配ごと」解消に着目した研究です。

患者さんが生命の危機にあるとき、看護師には「命を助ける」ことと、もうひとつ重要な仕事があります。それは患者さんの心理面をサポートすることです。
言葉にならない患者さんの心理を察し、求められている適切な援助をする。生命が危機的な状況にある患者さんは、必ず心理面も危機的な状況にあります。体を回復させるには、心の回復が伴ってこそ。私の経験を交え、授業やゼミで、このことについてよく話をしています。

「患者さんの心理面を見る大切さ」が学生の体に染みこんでいるのでしょうか。
卒業生が働く病院にうかがうと、看護部の方から「同志社女子大学の卒業生は、患者さんとしっかりと向き合えていますよ」と、声をかけていただくことがあります。
多忙な現場で、患者さんの心理を見る看護ができているというのは何よりもうれしいです。

私の専門は、生命の危機にある患者さんの集中的なケアを担う「急性期看護」と呼ばれる領域です。研究テーマは「手術を受ける患者の心理と看護」。胃がんや肺がんの手術を受ける患者さんを対象に、がんと診断されてから入院、手術、退院後の生活において「心配ごと」に着目し、心理に応じた支援やケアを研究しています。

がん告知から入院までの間、患者さんには「どんな手術をするのか」といったさまざまな「心配ごと」が重くのしかかり、不安にさいなまれます。
最近は入院の短期化により、肺がんの手術でも体に小さな穴を開けて行う胸腔鏡手術であれば術後2、3日で退院できるため、患者さんにとっては退院後の生活も「心配ごと」です。
そこで私は、情報提供や疑似体験によって「心配ごと」をなくし、不安軽減ができないかを追究しています。
また、胃がんの手術を受ける患者さんの自己管理能力を評価する尺度も開発中です。それを使って入院中から患者さんの自己管理スキルを測り、能力に応じた教育を行うための研究を進めています。

私が急性期を専門としているため、ゼミには救急看護や災害看護に興味を持つ学生が多く、それぞれ関心のあるテーマを選んで卒業研究に取り組んでいます。
例えば、成人看護の授業で導入している視線計測機器を使った救命率アップに関する研究がそのひとつです。視線計測機器を装着すると、被験者が何をどれくらいの時間見ているかがデータで明らかになります。この装置を使い、人が倒れている場に遭遇した第一発見者が、まずどこを見るかを学生たちで実験し、研究しています。

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多様な施設での学外実習で、看護の違いが学べます。

本学では、実践的な能力を身につけるために、学外実習を積極的に行っています。
とはいえ学生の多くは患者さんと接した経験がないことから、患者さんを少しでもイメージできるよう、普段から私の経験を例によく話をします。
また、視覚的な情報からイメージをつかめるよう、授業では映像をはじめとした視聴覚教材やシミュレーション教材を積極的に使っています。

本学の「プラクティカル・サポート・センター」も大いに活用できます。この施設では、血圧測定モデルや心肺蘇生モデルなど、最新のシミュレーション教材がそろっており、看護技術の基本を人形などで繰り返し練習することができます。看護師資格を持った教員が常駐していることも、学生にとっては心強いと思います。
最近は患者さんの権利を守るために実習で採血などができないことが多く、経験の少ないまま医療現場に出ることに対して、看護学生は不安になりがちです。しかし、本学ならセンターで何度も練習し、自信を持って現場に出ることが可能です。

また本学には附属病院がないため、さまざまな病院・施設での学外実習に参加できるメリットがあります。病院ごとに看護の理念は異なり、その違いによって何を大事に看護するかが変わってきます。多様な看護を知ることで視野が広がり、自分が将来どんな看護をしたいかを考えることで進路選択にも役立ちます。

学外実習では私たち教員が実習先を訪問し、学生のフォローをしています。私が大切にしているのは、たとえ患者さんをうまく援助できなかったとしても、そのときに学生が何を感じ取っていたか、今後どうしたいかを丁寧に聞くことです。そうした対話から学生自身が気づきを得て、考えを深められます。この「気づき」が看護ではとても大切です。

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看護の世界に求められている「リベラル・アーツ」。

技術の進歩で医療が日々変化するように、看護も社会のニーズによって変化をしています。多様性が求められる今は、さまざまなバックグラウンドや価値観を持つ人と関わる看護師にも、どれだけ人間について理解しているかが問われています。

これはすなわち、同志社女子大学の教育理念の柱のひとつである「リベラル・アーツ」です。
リベラル・アーツという人間の根源的な教養という基礎があってはじめて、その上に看護の知識や技術を積み上げることができる、という考え方が広がりつつあります。
次世代の看護師を育成する看護教育においても、多様な学問を学び、人間観・世界観を養うリベラル・アーツを大事にしようという流れが生まれています。
同志社女子大学は、看護教育の世界でも一歩先に進んでいると私は感じます。

学生時代は、医療だけでなく多様な分野で学ぶ人との出会いも大切です。総合大学ならではの環境のもと、授業や課外活動を通してさまざまな価値観に触れ、教養を深めてください。

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受験生のみなさんへ

看護学生は学ぶ内容が多く、大変だと言われますが、実は大変なときこそ、自分が大きく変化して伸びている時期だと思います。卒業後も患者さんとの関わりから学び、成長させてもらい、自分の変化を感じることができます。
看護職は「患者さんのため」という奉仕の印象が強いかもしれませんが、実は患者さんから学ぶことばかりです。与えているつもりが、与えられていることを知る、実り多い職業です。

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小笠 美春准教授

看護学部 看護学科 [ 研究テーマ ] 胃がん患者のセルフマネジメント

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 看護大学3年生と4年生のベッドサイド環境の写真を用いた視線計測による危険予知能力の比較
  • 視線計測を用いた看護大学2年生と4年生の傷病者第一発見時の観察力と状況判断力の比較
  • 看護学生2回生と4回生における災害・防災意識および援助規範意識との関連の検討
  • 成人急性期看護学実習における看護学生のストレス・コーピングに関連する要因の検討