dwcla TALK ようこそ新しい知の世界へ

教員が語る同志社女子大学の学び

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「作曲」
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「電子音楽」
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「創作」

デジタルとアナログ
西洋と日本、ハイブリッドで
新しい音楽をつくり出しています。

音楽学科

成田 和子特任教授

声楽家とボカロがコラボする、そんな新作を構想中です。

1970年代後半、パリ国立高等音楽院で音楽理論と作曲を学んでいました。80年代になるとコンピュータ音楽も学べるようになり、電子音響音楽を創作する機会を得たことをきっかけに、五線紙に記譜する作曲とコンピュータを用いる作曲のどちらも行うようになりました。作品によっては2つの方法を同時に用いることもあります。

現在、力を入れているのはオペラの作曲です。数年前にフランスで初演された「YUME-ユメ」は、能の演目である観阿弥の「松風」をもとに、台本はフランス人脚本家が書き下ろし、演出は人形浄瑠璃の人形を用いた独創的なオペラです。曲づくりにおいては日本と西洋の文化の融合を意識しました。パリをはじめフランス国内各地で再演され、話題を呼んだ作品のひとつです。

また、仏教寺院からの依頼で邦楽の作曲を10年以上続けてきました。笙や琵琶、箏といった和楽器は西洋の楽器とは異なる発展があり、独自の音楽表現や記譜法があります。西洋と日本の楽器を組み合わせた楽曲の作曲も意欲的に取り組んできました。子どものころから西洋音楽で育ってきた私にとって、邦楽は大人になって出会った音楽ですが、自分の根底にある感性と響き合い、強く魅力を感じています。

そのほか、さまざまな楽器や声楽のための作品など委嘱作品を中心に100曲ほど作曲してきました。曲づくりにあたっては、楽器に関する研究が必要であることは言うまでもありませんが、楽譜から追究するほか、実際に演奏家にお話を聞くことがよくあります。オペラでも室内楽でも曲づくりで最も楽しいのは、こうした演奏家とのコミュニケーションです。楽器の可能性を学べることはもちろん、同じ作品でも演奏家によって表現が異なるので、演奏家と共に曲をつくっていくことは刺激であり、励みにもなっています。

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このほか私が取り組んでいるのは、電子音響音楽の創作と演奏であり、そのひとつにスピーカーのオーケストラである「アクースモニウム」を用いたライブ演奏があります。デジタルコンソールとコンピュータで演奏を記録することができ、その演奏記録をアクースモニウム・システムを用いて再生します。約30本のスピーカーへの音量出力を制御するデジタルコンソールのフェーダは、自動ピアノの鍵盤が動くように働き、電子音響音楽の演奏を再現します。試聴会を行い、アクースモニウムと奏者との相互関係について、技術的・視覚的・音響的・音楽的な側面から分析研究を行っています。

試聴会では、3次元空間である会場で観客に聴いてもらうことにこだわっています。音の移動や強弱変化、音響の投射などが演出された空間音響を体験してもらいたいと考えています。分析研究のためだけでなく、会場で電子音響音楽を演奏することで、演奏・創作・研究そして教育に幅広く役立てることを目指しています。音響空間の再現性は仮想空間メタバースとの親和性が高く、今後メタバースの発展に伴い新しい可能性も探れると考えています。

電子音響音楽の創作は、曲づくりも構成もすべてコンピュータで完結できます。また、音を聞きながら創作するため、自分自身が作曲家・演奏家であり、聴衆でもあります。演奏家とコラボレーションする作曲活動とはまた違った表現の面白さがあります。

私の音楽には、アナログとデジタル、西洋と日本のハイブリッドが常に存在しています。現在構想しているのは、ピアノの生演奏と電子音を融合させ、声楽のソリストの生の声とボーカロイドがコラボレーションするような作品です。第一線の演奏家や研究者がそろった本学教員と協働し、共に音楽活動を続けてきた集大成として、新たな試みに挑戦しています。

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作曲・演奏・映像、自由な表現で音楽をつくりあげるゼミです。

学生の指導にあたっては、五線紙に記譜する作曲とコンピュータを用いた新しい表現、どちらも自由に使いこなせる能力の養成を重視しています。これからの作曲家は、曲づくりと演奏を担い、歌手にもボーカロイドにも歌わせる作品をつくる、そうしたマルチな能力が求められているからです。

ただし、基本となるのは音楽理論ですが、楽器演奏や歌うことも重要です。ポピュラー音楽の作曲、クラシック音楽の研究でも、音楽理論のマスターは必須であり、クラシック音楽の基礎を固めておくことで色々なジャンルの音楽に門が開かれていきます。コンピュータで楽器を鳴らす場合でも、楽器のことを知っていればデジタル環境での作品づくりに大いに役立ちます。そのため私が担当する音楽理論の授業では、和声や対位法、アナリーゼやオーケストレーションなどをしっかりと身につけてもらうよう指導しています。

「音楽創作」を掲げるゼミでは、創作の経験が多くても少なくても「音楽をつくりたい」という想いを持つ学生が集まっています。想いは同じですが、表現方法は実に多彩です。

音楽のジャンルや枠にとらわれることなく音楽表現を探りながら、4年次生の2月に開催する発表コンサートに向け、卒業制作作品をつくり上げていきます。
例えば、本学のメディア創造学科の学生とコラボをして映像に音楽を付けたり、吹奏楽や合唱の作品をつくる学生もいます。ピアノ曲を作曲して自分で演奏し、そこに自分が描いた画像を同期させてラブストーリーのアニメーションを創るといった力作もありました。曲づくりにとどまらない、自由な発想のもとで独自の表現を追究します。

表現したいものが出てくるまで時間がかかることもありますが、私が学生にアドバイスするのは「できることは、すべてやってみよう」です。そのプロセスで必要な技術的サポートは私が担います。

吹奏楽経験者が多いことから、ピアノ以外にクラリネットやサクソフォン、フルートの演奏、またエレクトーンのオーケストレーションができるゼミ生もおり、発表会でその演奏技術を発揮しています。各々親しんできた音楽や楽器が異なり、作品も表現も多様性に富んでいます。

ゼミ生の創作活動を見ていると「もっと音楽の可能性を探りたい」「新しい表現方法に触れたい」という想いから、音楽文化専攻を選んだことがよくわかります。実際にゼミ生の一人は「ピアノはずっと弾いてきたので、大学ではピアノ以外の自分の可能性を広げたいと」と本専攻を選んだ理由を語り、それを実現した充実感が卒業制作作品から伝わってきました。まさに私が学生に期待していることです。

卒業生のなかには、プロのミュージシャン、作曲家や演奏家、教員、銀行や広告代理店をはじめとした一般企業に就職した人、音楽制作会社に勤務しながら本学で後輩の指導にあたっている人もいます。それぞれの道へ飛び立ち、大きく羽ばたいている卒業生がたくさんいます。

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音楽創作に挑戦しながら演奏技術も磨けるのが音楽文化専攻です。

学生一人ひとりのこれまでの音楽経験を存分にふくらませていけるのが本学の音楽学科の魅力です。各分野のトップレベルの先生から個別指導で学ぶことができ、パイプオルガンを備えた新島記念講堂や頌啓館ホールなど、音楽を演奏し、楽しむ環境も整っています。

自分の目標に応じて演奏技術を磨けるのが演奏専攻、音楽文化専攻は音楽における研究や創作を追究しながら、同時に好きな楽器の演奏技術を磨くことが可能です。ピアノや声楽を4年間学ぶことができ、楽器実技として2年次生で新しくヴァイオリンを始めたという学生もいます。一度も触ったことがなかった楽器にも出会って学べるのは本学だからこそ。柔軟なカリキュラムのもと、各自の音楽性を伸ばせるのが音楽文化専攻です。

また、最大の特長は、総合大学にある音楽学科だという点です。全学科の学生が受講可能な「共通学芸科目」では、幅広い知識・教養を身につけることができます。
課外活動やイベントを通して他学部他学科の仲間とのコラボレーションを経験することによって、自分の新しい可能性を見つけることもできるでしょう。興味・関心を大きく広げる4年間を過ごせるキャンパスです。

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受験生のみなさんへ

本学で学ぶみなさんの前には、さまざまな門が並んでいます。たたけば必ずその門は開かれ、奥に進んでいけば多様な学び・経験を得ることができます。恐れずに、楽しみながら進んでください。

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成田 和子特任教授

学芸学部 音楽学科 [ 研究テーマ ] 作曲、音楽創作とテクノロジー

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 木簡四重奏編成楽曲『深淵』『天使のはしご』
  • ピアノ楽曲『八月の雨』
  • マンドリンオーケストラ楽曲『陽だまり』
  • 吹奏楽曲『永遠の樹』
  • 短編映画制作コンペティション出品作品『PTA戦争』
  • 電子音楽曲『君影草』
  • クラリネット五重奏曲『紬』
  • エレクトーン作品『小作品No,1』『AM7:28』
  • ピアノ即興曲『景色1.星空 2.朝日 3.海』
  • 合唱曲『キセキのたまご』『ありがとう』
  • 映像音響作品『Primula』