dwcla TALK ようこそ新しい知の世界へ

教員が語る同志社女子大学の学び

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「演奏技術」
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「教養」

本学での学術的な学びと
知性・感性を磨いて
ピアノの新しい世界へ。

音楽学科

河江 優教授

作曲家の意図を読み取り、現代のピアノへ“翻訳”していきます。

ピアノは他の楽器に比べて非常に音域が広く、ソロの演奏はもちろん、1台で大音量のオーケストラを奏でることもできます。芸術的に演奏するには、テクニックのみならず、音や響きへの感性を磨き、作曲家の特徴や意図を深く理解する必要があります。教員であり演奏家でもある私は、こうした作曲家や作品に対する調査・研究に取り組んでいます。

曲中のひとつのフレーズを弾くにしても、いつの時代の作品で、当時の演奏家がどのように弾いていたかの調査が欠かせません。例えば17、8世紀には、まだ現代の「ピアノ」という楽器は完成しておらず、この時期の、チェンバロやクラヴィコード、フォルテピアノのために書かれた作品を演奏するためには、“翻訳”のような作業が必要となります。
楽譜を前にして、「なぜこの曲を書こうとしたのか」「どんな意図で音符や記号をここに書いたのか」などについて、知識と想像力を働かせながら、最も理想的と思える演奏法を探っていきます。自然な流れで心地よく耳に響く曲であっても、西洋音楽は論理的に書かれています。その透徹した理論を「大学」という場の、系統立てられたカリキュラムのもとで学ぶことは非常に大切です。

私はバロックから近現代までの様々な作品に魅力を感じており、多種多様な学生の指導や興味に応えるべく、日々研究に取り組んでいます。その成果を発表する場、すなわち研究論文に匹敵する活動がリサイタルです。毎回、テーマを設けていますが、直近ではリスト、その前はショパンというように、一人の作曲家に焦点を当てて掘り下げようとする時もあれば、複数の作曲家や作品で、コントラストやつながりを考えて選曲し、組み合わせの妙を楽しんでいただくこともあります。
リサイタルに向けて作品を徹底して研究し、達成感を得られたとしても、後日、学生とその曲を勉強する中で突如新し いアイディアがひらめくこともあります。音楽の世界の追究に終わりはなく、知れば知るほど面白さが増してきます。

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1回目と8回目の演奏では、驚くほど変わります。

同志社女子大学において、学生の指導は、1人50分の個人レッスンとして行います。1対1の指導であるため、学生の成長を4年間じっくり見守っていくことのできるシステムです。
1年次生では、西洋音楽を演奏するために必要な楽譜の読み方や、基本的技術の習得を大切にしています。個々の学生の音楽的特性を考えながら、1人ひとりの課題に応じたきめ細かな指導を行っています。 

大学生活にも慣れる2年次生になると、外部のコンクールやオーディションなど、学外で演奏の場を持ちたいと考える学生が出てきます。地域で演奏会を行う学生、友人とアンサンブルを組んで活動を始める学生などもおり、社会とのつながりを模索し始める頃でもあります。
3年次生は最も音楽に集中できる充実した時期であり、内面的な成長も顕著になり、個々の音楽的資質が大いに伸びていく頃です。より高度な課題に挑戦させるとともに、学術的な文献を読ませるなど、自分で音楽を考えて作っていく方法を見つけるように指導しています。

実技試験は年2回、バロックから近現代までの課題に取り組みます。そして4年次生の1月には学内のホールで、バロックと古典、ロマン派、近現代という3つの時代区分で構成された30分以内のプログラムを組んで演奏を披露します。この最後の試験を聴くと、1回目と8回目の違いは歴然としており、その成長ぶりに感慨深い思いがします。

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高校までとは、まったく違う角度からピアノが見えてきます。

大学で学ぶピアノは、高校までのピアノとは異なるものです。同志社女子大学での学術的な学びによって、これまでとは違った視点からピアノが見えてきます。
異なる視点を得る背景のひとつには、「キリスト教主義」「国際主義」「リベラル・アーツ」を教育理念に掲げる本学での教養教育があります。西洋音楽の根底にはキリスト教が存在しています。聖書に親しむ時間を持ち、幅広い教養教育を学ぶなかで、自然とキリスト教への理解が進みます。
リストのピアノ曲に「エステ荘の噴水」という作品があります。楽譜に、ヨハネによる福音書の一節「しかし私が与える水を飲む者は、いつまでも渇くことがないばかりか、私が与える水は、その人のうちで泉となり、永遠の命に至る水が湧きあがるであろう。」が書かれた部分があります。学生はここを弾く時、訳が分かるというレベルではなく、背景となる聖書のエピソード全体を理解し、リストがイエスの言葉を引用した意図までを感じ取って演奏できるのです。

学生の進路はさまざまで、進学や留学など、勉強をさらに続ける学生や、教員、ピアノの先生になりたいという学生、一般企業への就職を希望する学生もいます。どんな進路を選んだとしても、長い間ピアノの練習を続けてきたまじめさ、粘り強さはいかんなく発揮されるでしょう。また、ひとつの曲を仕上げるために、数ヶ月間にわたって目標を定め努力する向上心や精神力の強さは、社会のさまざまな場面で生きてくるでしょう。
幾つになってもピアノを弾き、自分自身も周囲の人も楽しませることができる、その芸術を愛する心は、人生の支えになると思います。

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受験生のみなさんへ

自己の課題を集中的に訓練して過ごす時間、その成果を問う受験という場は、一度は通っておくべき道ではないかと考えます。その道を通り抜けると、目の前には見たことのない美しい音楽の世界が広がっているはずです。同志社女子大学でピアノとの新たな向き合い方を知り、自分の可能性に挑戦していって欲しいと思います。

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河江 優教授

学芸学部 音楽学科 [ 研究テーマ ] 美しい響きを生むピアノ奏法

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研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業演奏曲目例(※1人につき3曲演奏)

  • (1)
    ・モーツァルト:グルックの主題による変奏曲K.455
    ・シューマン:「幻想曲ハ長調op.17」より第1楽章
    ・ドビュッシー:「前奏曲集第1巻」より“沈める寺”
  • (2)
    ・ベートーヴェン:ソナタ第14番嬰ハ短調op.27-2 第1、第3楽章
    ・ショパン:舟歌嬰ヘ長調op.60
    ・徳山美奈子:ムジカ・ナラ
  • (3)
    ・モーツァルト:ソナタハ長調K.330より第1楽章
    ・ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズop.22
    ・ラヴェル:「鏡」より“蛾”
  • (4)
    ・バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻第12番へ短調
    ・ショパン:ポロネーズ第5番嬰へ短調op.44
    ・アルベニス:「イベリア」より“エル・アルバイシン”
  • (5)
    ・バッハ:パルティータ第1番変ロ長調よりプレリューディウム
    ・シューマン:クライスレリアーナop.16
    ・ショスタコーヴィチ:24の前奏曲より第24番ニ短調
  • (6)
    ・モーツァルト:ソナタ変ロ長調K.333より第1楽章
    ・ショパン:バラード第4番ヘ短調 op.52
    ・シマノフスキ:変奏曲op.3
  • (7)
    ・ベートーヴェン:ソナタ第27番ホ短調op.90 第1楽章
    ・リスト:バラード第2番
    ・グラナドス:演奏会用アレグロ