dwcla TALK ようこそ新しい知の世界へ

教員が語る同志社女子大学の学び

写真

「思想」
×
「現代文化」
×
「技術」

音楽、ゲーム、マンガ……。
身近なメディアに潜む
情報技術の根幹を発見していきます。

メディア創造学科

梅田 拓也助教

一人の思想家の研究から、現代文化と技術の結びつきを考えていく。

Twitterに漫画の感想を書き込むこと、Instagramのストーリーでバイト先の愚痴を書くこと、YouTubeでお気に入りのアイドルのチャンネルを見ること――僕たちが日常的に楽しんでいる文化は、いずれも情報技術なしには成り立ちえません。物心ついたころからコンピューターやネットがある中で成長してきた研究者のひとりとして、メディアの発展が社会をどう変えていくか、人文学的な視点から関心を持っています。

学生時代に学んだ哲学から、現代の情報技術について考えてみたいというのが研究の出発点でした。卒業論文と修士論文で、ドイツの社会学者のニクラス・ルーマンをテーマにしたのをきっかけに、ドイツのメディア研究に興味をもつようになりました。今は、ドイツのメディア研究を手がかりに、現代文化と情報技術の関係について考えています。

現在、特に注目しているのが、ドイツの文学者・メディア研究者のフリードリヒ・キットラーの思想です。彼が活動を開始した1970年代から80年代頃は、ちょうど初期のパーソナルコンピュータが登場した時期でした。彼は、いわゆる機械オタクで、文系の研究者なのに自分でシンセサイザーを作り、趣味でプログラミングを学んでいました。なので今僕は、彼が書いた論文や著書だけではなく、彼の書いたプログラムやコンピューターの使い方と彼の思想のつながりに注目して研究を進めています。

キットラーが、文学・哲学という伝統的な学問研究から出発し、最先端のメディアの研究へと関心を移していった過程が面白いと思っています。その過程を明らかにすることで、文系の人たちが技術を学ぶ必要性や、古くから続いている人文学という学問がどのように変わるべきかを学ぶことができるのではないかと考えています。

研究で最も大事にしている点は、自分の研究分野とは異なる分野の人にも伝わるよう発信することです。その活動のひとつが学術誌『メディウム』の企画・制作です。人文学的なメディア研究の議論のための場を生み出したいという問題意識からはじめました。クラウドファンディングを活用して創刊し、年1回発行しています。従来の学術誌と異なり、論文を作る過程でさまざまな人が議論できる場になることを目指しています。

創刊にあたっては、表紙のデザインや組版も担当しました。同タイプの雑誌や同人誌を何十冊か比べ、想定読者にとって馴染みやすく、継続発行しやすいデザイン・組版を追求しました。自分の研究内容や考えを、構造化して視覚的にわかりやすく提示する方法は学生時代から模索してきました。複雑なものを単純化し、構造が見えないものに構造を与えることが、真の意味での理解だと思っています。

写真
写真

Read More

ネット上で共有されているナゾの現象・習慣を取り上げ、技術に迫る。

授業では、映画、音楽、ゲーム、マンガといった身近なコンテンツに情報技術がどう関わっているのかを発見する学びを目指しています。そのひとつ「ソーシャルメディア論」では、SNSで日々起きている現象やネット上で共有されているナゾの習慣を取り上げます。例えば「インスタ映え」という言葉がありますが、これはどういう意味でしょうか。皆さん、なんとなくカラフルな写真だと思っているかもしれませんが、明確には定義できないと思います。授業ではこの概念の意味を、インスタグラムのインターフェースの仕組みから考えていきます。

インターフェースだけでなく、アルゴリズムやインフラのような技術的にコアな話題も扱います。例えば、YouTubeでアイドルの動画を観ているファンたちは、自分の推しを応援するため、ウェブサイトのアルゴリズムを意識しつつ戦略的に再生回数を増やそうとしています。また、Twitterではサーバーへの負荷を下げるために、検索できるツイート数が制限されていますが、このことがパクリ元を分からなくして、「パクツイ」という習慣(Twitter 上で他の人が投稿したツイートを自分のツイートのように投稿すること)を支えています。

こうした技術的な知識は、文系の学生こそ学んでおくべきだと考えています。デジタル人材が求められている今、文系で就職してもICTの知識は不可欠です。プログラミングのようなスキルだけではなく、その前提となる知識も必要となります。文系の学生にはとっつきにくい知識かもしれませんが、それを身近なコンテンツとの関わりから学んでほしいと考えています。

僕が危惧しているのは、情報技術の基礎となる知識が軽視されていることです。例えば、「データサイエンス」教育の重要性が叫ばれるものの、データやソフトウェアの活用方法ばかりが重視され、データに基づいて考えることの意義や、それを可能にするコンピューターの技術的基礎をゆっくり学ぶ機会は少ないです。「どうすれば技術を使えるのか」から少し足を踏み出して、「技術はどうあるべきか」ということを、自分の生活実感をもとに学び考えてみてほしいと思っています。

ゼミにおいても、日常的なコンテンツに情報社会の根幹をなす技術的前提がどれくらい根深く関わっているかを、さまざまな角度から検討していきたいと考えています。学生の関心の持ち方を大事にし、興味のあるコンテンツについて歴史や携わっている人の考え方まで引き出せるような研究に取り組んでもらえればと思っています。

写真
写真

Read More

スタジオ、機材、ソフトウェアすべてがそろう、
作りながら学べる理想の環境。

本学に着任して1年ほどですが、メディア創造学科の充実した設備と人的サポートに驚いています。例えば「テレビ番組のようなものを作ろう」と学生が思いつけば、大学内のスタジオがすぐに予約でき、機材も貸し出してもらえるし、編集用のソフトウェアも全てそろっていて、専用スタッフもサポートしてくれるので、30分後には番組が作り始められると思います。作りながら学べる理想の環境です。やろうと思えばどんなことも挑戦できます。

また、メディア創造学科には各々専門性を持った先生がそろっており、幅広い分野を学ぶことができます。自分がその時に興味を持ったことを深めていける環境が整っています。自分が何かやりたいと思ったら、そのやる気を応援する風土があります。

同志社女子大学の学生は、何かに夢中になっている人が多いと感じています。学生たちを見ていて、映画でもマンガでも音楽でも、何であれ、何か自分が夢中になれる世界を持っている人はとても面白いと思います。この大学には、そんな仲間がたくさんいるので、自分の本当に好きなものを共有できる。本当に好きなものを安心して共有できて、それを否定されない場はなかなかありません。そういう人に囲まれていれば、入学当初はそういう世界を持っていなくても、自分の世界を4年間で見つけられるのではないでしょうか。

写真

Read More

受験生のみなさんへ

ことわざで「二兔を追う者は一兔をも得ず」と言われますが、逆に、二兔を追ってください(これは僕の母校の校訓のパクリです)。受験生だからといって、自分が好きなことをあきらめて、勉強だけをがんばっていてはもったいない。一兔を追えというのは、二兔のどちらが大事がわかっている大人への戒めであって、何が一番大事なのかがまだわからない若い人には通じません。部活も趣味も恋愛も勉強も、何がこの先一番大事になるかなんてわからないから、全て全力でやった方がいい。あらかじめ自分の可能性を縮めずに、自分がやりたいと思ったことは何でも貪欲に取り組んでください。

写真

梅田 拓也助教

学芸学部 メディア創造学科 [ 研究テーマ ] 戦後ドイツのメディア理論の学説史

研究者データベース

関連リンク ひとつぶラジオ

卒業論文一覧

dwcla TALK

卒業論文テーマ例

  • 戦後以降の日本における脱毛の歴史:広告から見るムダ毛処理の動機について
  • データで見る『PRODUCE 101 JAPAN』
  • 「大人絵本」の誕生:戦後絵本雑誌の分析から
  • オンライン小説の社会学的研究:「テンプレ」から見る作者と読者の関係
  • コスプレと元ネタの関係:コスプレイヤーへのインタビューから
  • 2000年代のケータイ小説のメディア論:作品の表現と当時の掲載サイトの分析から
  • ジャニーズファンのTwitter利用についての社会学的研究:1番の敵はヤバい同担?
  • インディーズゲームにおけるMOD文化の研究
  • ダンス教育現場のエスノメソドロジー