dwcla TALK ようこそ新しい知の世界へ

教員が語る同志社女子大学の学び

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「メディアアート」
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「社会人底力」

最新のデジタル技術を
使った芸術表現で
生命を探究しています。

メディア創造学科

森 公一教授

科学者とのコラボなどを行い、多様なメディアアート作品を発表しています。

新しいテクノロジーを使った芸術表現、メディアアート。デジタルテクノロジーが私たちに何をもたらすのか?このジャンルが注目され始めた1990年代半ばあたりから、アートを切り口として探ろうとするメディアアートの研究や制作を手がけてきました。最近では、新しいテクノロジーを活用して、地球や生命を再発見・再確認するためのアートを探究しています。

例えば2020年3月には、宇宙における美学をテーマとする研究プロジェクトの依頼に基づき、作品を制作し展覧会を開催しました。しかし行ったことのない宇宙の美を表現するのは難しく、人類が別の星に移住せざるをえなくなったという設定のもと、宇宙から地球を見直す「memento tera」(地球を想いましょう)をタイトルに掲げ、多様なアート作品を共同制作し提示しました。

ひとつは《宇宙瞑想》です。長い宇宙船の旅で人々の精神を支えるには瞑想が必要だと考え、赤外線によって深度計測が可能なセンサーを使用し、人の呼吸を光と音に変換する実験装置を制作。鑑賞者の息の出入りを光の明滅とチェロの音に変換し、自分の呼吸を見て聞いて瞑想を誘う体験的作品としました。

移住先の惑星で茶会を楽しむ映像作品《宇宙茶道》も発表しました。もともとはドイツのバウハウス創立100周年に関わる研究プロジェクトとして取り組んだ作品です。1930年代にバウハウスで学んだ日本人女性、山脇道子が「バウハウスは茶道に似ている」とコメントを残したことに着想。ドイツのプロダクト・デザイナーにデザインを、京都の伝統工芸作家に作陶を依頼し作った茶器をはじめ、宇宙茶道用の道具一式を製作しました。そして、千利休が残した茶室「待庵」の室内フレームだけを抽出したミニマルな空間を再現し、私が亭主となり、ドイツ出身で本学科の髙木毬子先生を正客とした茶会を行いました。その模様を学生と共に本学のスタジオで撮影し映像作品《宇宙茶道》に仕上げました。

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映像制作会社の勤務を経て1990年代に起業し、マルチメディア・コンテンツ《Cosmology of Kyoto》を企画・ディレクションし、CD-ROM作品として出版しました。PC上でユーザーが千年前の京都にタイムトリップし、歴史上の人物や架空のキャラクターたちと出会うインタラクティブなコンテンツです。当時としては先駆的なマルチメディア・コンテンツで、ゲームプレイを通して知識を得る、教育と娯楽を融合したエデュテインメントと呼ばれる新しい領域の試みだったことから世界でヒットし、カンヌをはじめとする様々な国際会議に招待されました。以降、デジタルテクノロジーと表現を結びつけることに興味を持ち、とりわけ脳科学とリンクした作品を多数発表しました。

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2010年には京都国立近代美術館で《光・音・脳》という作品を発表しました。人の快・不快情動に着目し、生体情報の計測を専門とする研究者たちとのコラボによってサイエンスとメディアアートを結び付けた試みに挑戦しました。京都大学大学院医学研究科の客員研究員として研究を行う中で、脳血流の計測を通じて人の快・不快を判定するという研究に出会い作品を構想。筒状の空間を光と音で満たし、鑑賞者の脳血流のヘモグロビン濃度の変化を測定することによって、快を誘発する「光・音」を探る実験装置兼アート作品を制作しました。この作品によって得られたデータを元に分析研究も行い、その成果をまとめた論文が神経科学系の国際誌に掲載されました。

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最近特に関心を持っているのは“呼吸”です。呼吸は、動植物にとって生命を維持するための根本的なシステムです。また呼吸は、地球の大気組成の変化に適応した生物進化の証しでもあります。自らの呼吸を通して、地球の歴史や地球そのものを感じることのできる作品に繋げられないか、模索しています。

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CMやシティプロモーション、数々の制作経験を積むゼミです。

私のゼミでは、配属直後の2年次秋学期に、公共CMを制作しACジャパン広告学生賞のコンペに参加します。学生自身が社会課題をリサーチし、アイデアを出し合い、30秒のCM制作に挑戦します。成功や失敗、喜びも悲しみも経験するなかで、クリエイティブ・シンキング、ロジカル・シンキング、クリティカル・シンキングを養っていきます。これまで準グランプリや優秀賞、審査員奨励賞などを獲得しており、創造とともに成長する喜びを学生は体感しています。
2020年度は新たな試みとして、協定大学であるアメリカの名門女子大学スミス・カレッジの学生と一緒にCMの企画に取り組みました。日本語を学ぶスミス大学の学生との混成チームを3つ作り、Web会議でディスカッションし、それをもとに学生が映像作品を制作しました。世界の仲間と意見を交わし、創造する貴重な経験になったようです。

こうして2年次で制作の基本を体験した後、3年次ではクライアントワークのプロジェクトに挑みます。2020年度は兵庫県加古川市から依頼を受け、シティプロモーションに取り組みました。Web会議で市長へのヒアリングを行ったうえで、市民向けプロモーション動画を企画。コロナ禍で実写から急きょアニメーションに変更し、シナリオ・作画・演出すべて学生の手によるショートアニメ作品《残念カコメンかつめしだ》5話を制作しました。市職員を主人公に加古川市内で繰り広げられるラブコメディは、市民の方だけでなく、動画配信サイトでも多くの人に見てもらっています。

3年次の秋学期からは個人作品の制作に取り組み、進級制作展での発表を目指します。映像作品やインスタレーション作品、写真作品や絵本作品など自由にメディアを使って表現します。そして、さらにバージョンアップしたものを4年次で卒業制作として発表します。個展の開催やWeb上での作品展示など、アウトプットの方法は問いません。周囲からフィードバックをもらい、作品テーマの考察を深めて報告書として提出してもらいます。

卒業制作は個性あふれる作品ばかりです。例えば、自身の親の離婚をテーマに、空間全体を作品とするインスタレーション・アートがありました。幼いころの経験をエッセイで表現し、それを大きな紙に印刷して展示。また親への思いをつづった文字を空間にぶらさげることで、鑑賞者に見てはいけないものを見たような感覚にさせる作品で、大きなインパクトを与えました。

このほか、ゼミや学年・学科を超えたプロジェクト「The 48 Hour Film Project」もあります。48時間以内に7分以内のドラマを作るという、世界の各都市で行われるショートムービー作品のコンペです。主人公の名前や職業などが発表されるのは当日。そこから一気に作品を仕上げます。ゼミの学生が中心となって全学生に参加を呼びかけ、演出・撮影・編集・録音などのチームごとに事前勉強会を重ねます。学年・学科を超えて仲間と制作に取り組むことによる学生個々の成長は見事です。優秀作品は世界大会に進み、さらに優秀な作品はカンヌ国際映画祭で上映されます。学生には「私をカンヌに連れてって」と伝えています。

社会の価値観が多様化するなか、あらゆる角度から柔軟に発想し、他者のアイデアとの化学反応を楽しむクリエイティブ・シンキングの重要性が高まっています。そのアイデアや考えを構造化し、分析して答えを導くのがロジカル・シンキングであり、答えが定まった段階で「本当にそれでよいのか」を問うクリティカル・シンキングが必要になります。この3つを循環させ、社会に何が重要かを考え行動できれば、あらゆる場所・業界で通用する社会人としての底力になると思います。そんな力を身につけた卒業生たちは、広告代理店や映像制作会社などで活躍するほか、アーティストやデザイナー、女優などとしてクリエイティビティを発揮しています。

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一人ひとりの創造性を引き出し、「あしたを変える」力を育みます。

ゼミでも学内プロジェクトでも、一人ひとりが創造性を発揮し、結束力高くチャレンジできるのが女子大のよさであり、本学の風土だと思います。率直に意見を交わし、チームビルディングを発揮して物事を推し進めていく能力は、社会を改良する力につながります。20世紀は戦争の世紀で、基本的に男性が社会をリードし、そうした空気が今も漂っています。この空気を根本的に変えるには、女性の力が必要です。女性の社会進出がよりよい社会を築いていくと思います。

「あしたを変える」力を育む大学が同志社女子大学であり、メディア創造学科は、その力のもとになる個々の創造性を引き出し、成長を支える学科です。

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受験生のみなさんへ

「周りに比べて自分は才能がない」「創造なんて特別な才能を持った人だけに可能なこと」と思い込み、創造することに自信を持てない人、創造をあきらめる人がいるかもしれません。でもそれは固定された考え方「マインドセット」の問題です。変化することのない「才能マインドセット」から、変化する「成長マインドセット」に切り替え、創造しながら学び成長する喜びを味わえば、自分が好きになり自信が持てます。生涯、成長し続けましょう。

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森 公一教授

学芸学部 メディア創造学科 [ 研究テーマ ] メディアと芸術

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研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 短編映画作品《PTA戦争》《家族はつづく》
  • 短編映画作品《眼》
  • 映画脚本《シナプス教》
  • ドキュメンタリー作品《地芝居 -ふるさとを見つける-》
  • 公共映像作品《#生理のホントノコト》
  • ミュージックビデオ作品(リリックビデオ)作品《TELL ME》
  • アニメーション作品《ホッホじいやの相談室》
  • インフォグラフィックス動画作品《冷蔵庫の奥の真実》
  • ラジオドラマ作品《エンジェルシェアー》
  • インスタレーション作品《こころの穴は埋まらないけど》
  • インスタレーション作品《キリエノナカ》
  • インスタレーション作品《編む、赤い糸》
  • インスタレーション作品《人間の味》
  • 写真作品《flowerism》
  • 写真作品《赤いニット》
  • 絵本作品《ぶたにくになるまで》
  • 絵本作品《ミサトの就職活動》《タクミの就職活動》
  • パッケージデザイン作品《soushi −ナプキン×和紙−》
  • ブランド戦略《にいちゃんの金時芋》
  • エッセイ風短編集《7才,15才,22才》