dwcla TALK ようこそ新しい知の世界へ

教員が語る同志社女子大学の学び

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「サウンド」
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「デザイン」

さまざまなプロダクトと
人の“対話“である
音のデザインを追究。

メディア創造学科

和氣 早苗教授

わざわざ発せられる音に囲まれ、私たちは暮らしています。

スマートフォンのタッチパネルに軽く触れ、新しいアプリをダウンロードして難なく使いこなす。こうした使いやすさや心地よさを可能にするのが、人と機器(プロダクト)をつなぐ「ユーザインタフェース(UI)」です。
ではスマートフォンから目を離し、耳をすませてください。エアコン、電子レンジ、コンビニのレジやATMなど、多様なプロダクトと接する私たちは、多くの音に囲まれていることに気づくでしょう。これらプロダクトの音は、ユーザーに情報を伝えるためにわざわざ発せられるものです。
私は「プロダクトのUIサウンドデザイン」をテーマに、人と機器をつなぐ音を効果的にデザインし、機器を使いやすく、使用自体を心地よくするための研究を行っています。

例えば、キッチンから聞こえる音が何の音かわからない。電子レンジで食品を温め、すぐに取り出さないと何度もビープ音が鳴ってストレスだ。ATMのタッチパネルの操作と音のタイミングが合わない。これらはプロダクトのサウンドが効果的にデザインされていない例です。
しかし、UIサウンドをデザインすることで、必要な情報を適切なタイミングでユーザーに伝えることができ、操作性・使いやすさが向上します。もちろんプロダクトや企業のイメージアップにつながり、プロダクトの先進性を音で表現するといったことも可能です。

現在私は、さまざまな企業との共同研究により、プロダクトのUIサウンドデザインを行っています。実際に音を作る作業はサウンドデザイナーの方が中心に担ってくれ、私は効果を実験・評価し、音響心理学やUIの知見を元にアドバイスを提供することを強みとしています。サウンドデザインにより操作性や使い心地がどう変わったか、実際に人に使ってもらって認知・心理学的な効果を評価し、その結果からデザインの指針を出します。 

AIスピーカーが注目されていますが、スマートフォンや家電製品とやりとりするための音声についても、女性の声か男性の声、どちらがいいのか、声のトーンはどうかなど、研究を進めています。
また、安全性向上のための聴覚への情報伝達も研究テーマのひとつです。自動運転の実用化に向け、多様な情報をドライバーに提供するシーンが増えており、ドライバーにどうすれば適切な音で情報を伝えられるかについても研究しています。

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学生の研究成果が、企業に採用されるプロジェクトも。

ゼミでは、2年次生が4〜5人のグループを作り、家電製品や体温計、体重計、エレベーターなど、ひとつの製品を取り上げてプロジェクトに取り組みます。その製品にはどんな情報を伝えるためにどういった音が使われ、どんな問題があるのかを調査。それらを改善するためにパソコンのソフトを使って自分たちで音を作り、提案書を作成します。最終的には企業に出向いてプレゼンテーションをすることを目標としています。

最近のプロジェクトの成功例としては、鉄道駅の券売機の音のデザイン研究があります。
券売機の多くは、きっぷを購入する際、取り出し口からきっぷが出てくると同時にビープ音が鳴ります。取り忘れ防止の警報音ですが、ユーザーとしては心地よいものではありません。そこでよりよい音のデザインについて、鳴らし方や音も含めて学生が研究をしました。

学生はまず、本学の最寄り駅において、きっぷ購入の際のユーザーの行動を調査しました。お金を入れてきっぷを取るまでにどんな行動をするのか、先にお釣りをとるのか、きっぷを取るのか、そこまでに何秒かかるかを実験的に観察。
結果、3秒待った後にビープ音を出せば、聞かずに済む人には聞かせることなく、必要な人には知らせることが可能だという結果を導き出しました。

音のデザインについては、京都という立地からきっぷ購入者は交通系ICカードを持たない観光客が多いと考え、和風のメロディを選択。複数のデザインコンセプトを考えてユーザー評価を行い、サウンドセットを作成しました。
券売機メーカーに持ち込み提案をしたところ、導入が検討されることになりました。

このように研究から導き出した提案が企業に受け入れられ、新たな音が導入された場合、例えば電子レンジなら、日本中の多くの家庭に自分たちのデザインしたUIサウンドが入る可能性があります。日常に大きなインパクトを与えられる研究であり、学生にとっては得難い成功体験となります。

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“文理芸”から学べるのが同志社女子大学の強みです。

4年次の卒業研究では、よりベーシックなテーマを取り上げます。例えば、機器のエラーや危険を知らせる警告音に関する研究がそのひとつです。音の強さ・速度・リズム、また視覚情報である色との組み合わせを変え、どうすればねらった警告度の警告音を作ることができるのか。学生が実験計画と実験用のソフトを作成し、ユーザー実験を行い、その結果を分析・検証しました。学会発表をする学生も多く、広く公表された知見は次世代のプロダクトの音のデザインに活かされます。

主観を入れずに実験・検証を行うことで、客観的に物事を捉える力、データ分析力、論理的に考え議論する力が身につきます。こうした能力は、社会のどんな職種でも求められる、文系・理系にとらわれない、文理融合の素養です。
一方で、完全に客観的なアプローチだけではUIサウンドのデザインは不可能であり、創造力や表現力といったアートの感性が不可欠です。文理にアートを融合した、“文理芸“の視点で学べる同志社女子大学のメディア創造学科の強みだと思います。

授業を受ける前、学生は音というと音楽を想像するケースが多いです。しかし「サウンドデザイン演習」で音を集中して聴くうちに、私たちがいかに多様な音に囲まれ、普段はそれらに意識を向けていないかを知ります。音が氾濫する現代社会で、私たちは無意識のうちに耳を閉ざしてしまっているからです。やがて学生は、音が音楽だけでなく、非常に身近で幅広いものだとわかってきます。
また、見慣れたドラマやアニメーションの音がいかによく考えてつけられ、表現されているかを知ると多くの学生が驚き、聴覚メディアの価値に気づきます。
視覚や聴覚のさまざまなメディアがあるなかで、音からのアプローチの重要性や可能性について、文系・理系・アートの幅広い視点から学んでほしいと思います。

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受験生のみなさんへ

ものごとには、いろいろな側面があります。感じることができ、分析することができ、そして作りかえることができる。主観的に気づき、客観的に捉え、そして新たな創造へとつなげていく。ぜひ、いろいろなことを経験してほしいと思います。その中で、自分の内面に目を向け、自分の頭で考えて、そしてチャレンジをしてほしいと思います。みなさんの未来に役に立つだけでなく、それ自体がとても楽しいことですから。

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和氣 早苗教授

学芸学部 メディア創造学科 [ 研究テーマ ] 情報を表す音のデザイン

研究者データベース

関連リンク ひとつぶラジオ

卒業論文一覧

dwcla TALK

卒業論文テーマ例

  • 感嘆詞の調査と音響的特徴分析
  • 同志社女子大学周辺のサウンドスケープ研究
  • ピッチ差を利用するサイン音の印象評価とサイン音生成システム
  • ペルソナ/シナリオ法によるウェブサイト構築および改良実験
  • ロボットの感情音調査と実デザイン
  • 京都市のWEBサイトの改善提案と作成
  • 視覚障害者のための安全な駅 ~ サイン音と設備からみる駅の環境 ~
  • 効果音の違いによる映像解釈の変化
  • 現代音楽のロックへの影響についての調査とアルバム“WATER DROP”の制作
  • ネーミングに着目した音韻の研究~言葉とイメージの関係~
  • 表示における色の効果について
    ~記憶との関連性とメッセージ性の強さ~
  • 音声の印象を表すイメージマップの開発
  • 音を通して京都の魅力を伝えるWebサイトの制作
  • 音声対話システムに対する発話スタイルの研究
    ~ユーザの心理特性による発話スタイルの変化~
  • タッチパネルにおける操作反応音の有効性検証
  • 感情が表れる足音の特徴の研究
  • 音声とサイン音を組み合わせた対話デザインの提案と検証
  • POSレジのUIサウンドデザインと評価
    ~プロダクトUIサウンドデザインの一事例報告~
  • 安心感を与える音色のデザイン条件導出
  • 環境騒音下でも聞こえやすく心地よい報知音のデザインに向けて
  • 自動車内サイン音のサウンドデザインと評価