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教員が語る同志社女子大学の学び

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「方言」
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「森羅万象」

日本語を学ぶ最高の立地。
京の言葉、方言を通して
自分と社会を見ていこう。

日本語日本文学科

中井 精一教授

世界中でフィールドワークを重ね、方言研究を行っています。

方言には大きく分けて2種類あります。ひとつは社会方言と呼ばれるもので、性差や年齢差など社会的な立ち位置によって言葉遣いが違ってきます。もうひとつが地域差による言葉遣いの違いですが、私はこの地域差による方言研究を続けています。同じ日本語でも地域によりさまざまな言い回し・表現があり、それらは人の暮らしや社会のありようとつながっています。言葉を通して文化・歴史・社会を追究できるのが方言研究の面白さです。

例えば、豆腐の加工品である「がんもどき」は、関西では「ひろうす」「ひりゅうず」と呼ばれます。私が以前暮らしていた富山県では東西で異なり、西側は「まるやま」「まるあげ」東側が「がんも」「がんもどき」です。この場合、関西に近いか否かといった地理的な違いではなく、浄土真宗がどれだけ浸透しているかの違いが背景にあります。
「ひりゅうず」に興味を持った私は、ルーツが「ポルトガルのお菓子」であることを知り、かつてのポルトガル領マカオとブラジルで現地調査を行いました。しかし確証がつかめなかったので、ポルトガルまで出かけドーナツのような揚げ菓子「フィリョース」を確認してきました。帰国後、料亭の主人にお願いして「ひりゅうず」を作り、揚げてもらうと「フィリョース」と酷似していました。このように国内外を問わず、その場所に行って、現地を見て、その土地の人から直接話を聞くフィールドワークを大切にしています。

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研究成果は報告書・論文だけでなく、著書としても発表してきました。著書はフィールドワークでお世話になった方々にお渡しし、成果の報告を心がけています。日本語研究と聞くと研究室に閉じこもっているイメージがあるかもしれませんが、私はとにかく現場に出向きます。

もともと考古学者を目指していました。子どものころから野外活動が好きで、発掘にも関心があったので、考古学を学ぼうと大学に進みました。ところが4年生で方言研究の先生と出会ったことにより、進路を変えました。その先生は古い方言研究ではなく、社会を見る新しい方言の研究をされていたことに感銘を受けたからです。
古い方言研究は、言語学や日本語学を限定的にとらえ、その枠組みのなかで考えられてきました。しかし、言葉は本来森羅万象を表現するものです。新しい方言研究では、対象を限定せず、人びとの暮らしや社会に注目し、あらゆる社会の事象に興味・関心を持って言語を追究していきます。

「面白い。方言研究ならあちこちに出向いて人に話を聞くことができる。自分のやりたいことをすることができる」と大学4年生の私は考えました。言葉を考えることは、最終的には自分と対話をすることです。当時の私は自分が何者でどう生きるかを迷っていたので、言葉を通して社会や自分を知ることができる方言研究に惹かれたのだと思います。
多くの日本人に「日本人の母語は日本語」と思われていますが、日本語にはいろいろな日本語があり、私たちの母語とは、つきつめると方言だと言えます。方言は、家族や地域での生活で身についた言葉であり、それを抜きに言葉を見つめることができません。他の地域の方言について考えるときも、自分の出発点に戻って、自分と対話することから始まります。

方言研究の良い点は、どんな人にも身近で気軽に関心を持ってもらえる点です。大学で学ぶ日本語学と聞くと、国語をイメージする人が多いですが、高校までの国語は、ひとことで言えば「標準語と文学」の世界です。国語で、日本語そのものを学んだり、考えたりする時間はほとんどなかったと思いますが、本学の日本語日本文学科では、日本語についてじっくり学ぶことができます。方言を入口にして、古い日本語、新しい日本語、さまざま種類の日本語や文法などの日本語のルールなどが理解でき、どんどん興味が広がっていきます。「方言は病院の総合外来のようなもの」と私は思っています。まずは「方言」の窓口に来てもらい、そこから各人に合った言語の領域、専門に進むといった具合です。
しかも本学は、京都の真ん中にあります。フィールドワークで京の言葉を知り、自分の母語と対話し、そして文化や歴史へと関心を広げていける最高の立地だと感じています。

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専門家との対話から生きた言葉を学んでいくゼミです。

ゼミにおいても、フィールドワークを重視しています。例えば「景色のなかに言葉がある」として、言語学領域では10年ほど前から街中のポスターや看板を調査する言語景観研究が始まっています。このテーマのパイオニアである研究者と共に私も活動しており、ゼミの学生と現地調査を行っています。
先日は、京都駅構内をくまなく歩き、ポスター調査をしました。すると「京」と名のつくお土産が非常に多いことに気づいた学生や、出身地とは違う警察・消防署のポスターの表現や、方言の使い方に着目した学生もいます。発見は新たな学びの始まりです。

本学から徒歩圏内にある出町枡形商店街でも、フィールドワークを行っています。商店街にはさまざまな専門店が集まっていて、その道のプロから生きた言葉を学べます。

商店街を歩いていると「すぐき」「堀川ごぼう」「はも」など、さまざまな言葉に出会います。東日本出身の学生のなかには、「はも」を知らない学生も多く、関心が一気に高まります。鮮魚店で「はも」の骨切りなど、その扱い方まで見せてもらい、食文化の違い、暮らしぶりの違いまでを学ばせてもらう。人と対話することで、言葉への感覚・感性を磨いていきます。

ゼミ生にはよく「研究の領域は国語学や日本語学の狭い世界ではない。広い視点を持って興味・関心を広げ、言葉に関する研究であれば、どんなことをテーマにした卒業研究でもかまわない」と言っています。
ゼミで身につけてほしい基本的なスキルとしては、フィールドワークをするための対話・取材のスキルです。それ以外は自分の好きなことを徹底的に追究してほしいと考えています。

就職活動ではまったく知らない人と対話をし、自分を認めてもらうことが必要です。方言の調査も、知らない人との対話から始まります。方言研究を通してさまざまな背景を持つ人と対話を重ねることで、自分自身を知り、森羅万象への興味を深めることができると思います。

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地域からの厚い信頼もあり、安心して学べる環境です。

京都御苑に近く、大正時代から続く歴史ある出町枡形商店街に最も近い大学が同志社女子大学。日本語日本文学を学ぶ環境としては日本一の場所にある大学と言ってもいいのではないかと思います。
人文学は最終的には「自己は何者か」を考える学問であり、方言研究は自分の母語を出発点に、自分と対話することから始まります。まさにリベラル・アーツです。リベラル・アーツを教育理念のひとつに掲げる本学にぴったりの学問であり、本学で「方言」を入口に「自分は何者か」を考えるきっかけにしてほしいと思います。

私たちが現地調査に出向き、地域のみなさんに快く話をさせてもらえるのは、やはり同志社女子大学の教員・学生であるからです。本学のブランド力の高さ、地域の方と積み上げてきた信頼関係の厚さを実感します。こうした環境のもと、日本全国から学びに来ている学生が、京都の人との対話から自分の地元について考え、地元を大切にする心を育んでいると思います。
恵まれた環境のもとで、生きた言葉を存分に学んでほしいと思います。

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受験生のみなさんへ

大学の行事には学生が積極的に参加し、率先してリーダー役を買って出て、みんなをまとめてくれている学生も多く、同志社女子大学の良き伝統を感じます。入学式のすぐ後から、こうした本学らしさと、その良さを実感できるはずです。

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中井 精一教授

表象文化学部 日本語日本文学科 [ 研究テーマ ] 地方方言に注目した日本語研究

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • テキストマイニングによる歌詞分析
     ~アイドリッシュセブンの楽曲を使用して~
  • 言語景観の日本語学
     ―大阪・京都の禁止表現と注意表現を中心に―
  • 原題と邦題の比較
     ―ディズニー映画をもとに―
  • ラブソングの歌詞に見られる愛情表現について
     ―Web茶まめを用いた計量的分析をもとに-
  • 語の変容と消滅
     ―九州男児のイメージと社会変化―
  • ジブリ映画が描く女性像について
     -女ことばと役割語の観点から-
  • コミュニケーションと言葉
     ―就職活動サイトにおける言葉遣いをもとに―
  • 敬語と対人配慮の実態
     ―接客マニュアルに注目してー