dwcla TALK ようこそ新しい知の世界へ

教員が語る同志社女子大学の学び

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「映画」
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「文学」

小津監督を中心に
台本や構想ノートから
映画を読み解いています。

日本語日本文学科

宮本 明子准教授

作家、里見弴との関わりなど新しい事例が明らかになりました。

この世を去って50年以上たった今も、世界中のファンや映画人に敬愛される映画監督の小津安二郎。映画や構図は整然と美しく、小道具の絵画ひとつにも一級品が使われ、お店の看板の文字は小津監督自身もデザインするなど、細部にわたり端正です。台本に書かれた監督の文字は細やかで美しく、驚くほどです。

私は日本映画を研究しています。台本や構想ノートなど、映画制作に必要となった資料を対象に、日本映画の成立過程を調べています。これら資料はいわば映画の設計図であり、映画を見るだけではわからなかった、作家の創造の過程が見えてきます。
従来の映画研究は映画を観ることで完結する場合が多いのですが、私はこれらの資料も対象に、現在は小津安二郎を中心に研究しています。2019年には、小津監督をよく知る国内外の映画人へのインタビューや、監督自身が出征中に戦場で撮影した写真など未公開資料を収めた『小津安二郎 大全』を出版しました。

映画と文学の関連についても研究を進めています。小津監督は自身が書いた台本について、完成後に手直しすることはないとみられてきました。ところが、ある台本だけは青鉛筆でたくさんの書き込みがあり、調査を進めると、書き込みは作家の里見弴によるものだとわかりました。映画『彼岸花』、『秋日和』に原作を提供したのは里見弴でしたが、それ以前に彼が小津作品に関わっていたことが明らかになりました。しかも、里見によって書き込まれたいくつかの科白が映画に反映されていたのです。

小津監督は生前、里見弴の小説が好きで手本にしていると語っていますが、どのように映画に取り込まれたのかは明らかではありませんでした。今後さらに調査を進めていくと、多数の事例や新しいことが見えてくるのではないかと期待しています。
東京や三重など、小津監督に関する資料館は全国にあり、そこで資料を紹介いただきながら調査を続けています。映画監督や銀幕の大女優、そしてご家族や小津監督ゆかりの方との出会いのおかげで研究を続けることができています。そのご恩に答えるためにも、みなさんの声や資料を集めて後世につなげていきたいと考えています。資料の散逸を防ぐため、紙の資料を正しく保存して後世に残していく方法も追究しています。研究成果は学会での報告だけでなく、広く市民の方が参加する講座や講演会、映画祭でのトークショーなど、開かれた場でご報告しています。

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映画・文学と社会のつながりの深さを卒論で追究していきます。

ゼミのテーマは「映画と文学」です。映画と文学のつながりを研究しています。映画だけ、文学だけを取り上げても構いません。卒業論文に取り組むにあたっては、「自分の関心を元に問を定めてみよう」と学生に伝えています。
問を定めるため、2019年度は2、3年次生を対象に、「かぐや姫」をテーマに掲げてゼミを行いました。古典文学の『竹取物語』について調べる、映画『かぐや姫の物語』から考えるなど、文学、映画それぞれに関心を持つゼミ生が自由に考察し、発表することができます。自分の言葉で表現し、また仲間の発表を聞くことで、あらゆる方向から研究ができることを実感し、卒業論文のテーマを見つけていきます。

卒業論文は多彩です。増村保造監督の原作と映画の比較をしたり、多くの作品がドラマ化・映画化されている作家三浦しをんの作品をもとに、メディアによる表現の違いを追究したり。ほかにも『美少女戦士セーラームーン』をはじめアニメーションを取り上げる学生や、映画の惹句に使われる「社会派」という言葉の意味を追究する学生もいます。映画を観るだけでなく、広告宣伝素材や映画配給の仕組みなど幅広い視点から調査・研究を重ねます。
こうした卒業論文への取り組みを通じて、映画・文学と社会とのつながりの深さを知り、柔軟な思考が育まれていきます。社会のひとつの構図を追究することで、「こんな考え方ができるのか」と新たな気づきを得る。それが人生のレッスンになるとも思います。

ゼミでは3、4人の少人数でのグループワークも重視しています。皆で議論し、自分の意見を発表する場を積極的に設けています。私自身も学生時代には苦手意識があったため、何度も練習をしました。大学院生のときには大学のライティングセンターで指導方法も学びました。発表が不得手だった学生も徐々にプレゼンテーションの力が磨かれ、他の授業や就職活動の面接で役に立ちました、という声も聞いています。やさしく、まじめな学生が多いことから、学生のよさを伸ばす指導を大切にしたいと考えています。

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「なんでも挑戦してみよう」おおらかな雰囲気があります。

日本語日本文学科は、日本語と日本文化を横断的に学べる面白さがあります。例えば古典を学びたいと入学した学生が、多様な学びの過程で新しい世界に触れ、最終的には日本語教育に興味を持ち、自分の進路を定めるケースもあります。授業も多彩です。1年次生の文学の授業では、複数の先生がリレー形式で文学の楽しさを伝える「日本文学の世界」があります。日本近現代文学、文化を担当する私は、夏目漱石が自身で装丁した本『こゝろ』を紹介します。紙、形、色、文字のデザインに注目して書籍の世界に触れる授業は学生も関心が高いようです。

文学作品をもとに学生が脚本と演出を担当する創作グループ、「Nプロジェクト」をはじめ、表現の場が多数あるのも本学科の面白さです。
顧問を務める日本語日本文学会の会報誌『こむらさき』も、学生自身が企画・編集を担当しています。昨年は学生が「よしもと祇園花月」に取材を行い、アインシュタインさんや劇場スタッフの皆さんへインタビューを行いました。大学の規模が大きすぎないため、教員や学生間の意思疎通がとりやすく、「なんでも挑戦してみよう」というおおらかな雰囲気が学内に満ちていると感じます。

京都の中心地にキャンパスがあるというのは、映画と文学を学ぶには理想的な環境です。古くから映画と縁の深い京都市内には、映画の撮影所や、昔の映画機材の展示やユニークなイベントを開催している「おもちゃ映画ミュージアム」もあります。また街中では、映画のみならず音楽や美術にまつわるさまざまなイベントが開かれ、資料も豊富にそろっています。キャンパスの外にも、日本文化に触れ、文化を学ぶ機会がたくさんあります。

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受験生のみなさんへ

受験生のみなさんは今、自分のしたいことや好きなことを抑えて勉強に取り組んでいるのかもしれません。同志社女子大学は好きなことに存分に挑戦できる場があり、みなさんの可能性を伸ばすことができる大学です。未来のみなさんと会えるのを、心から楽しみにしています。

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宮本 明子准教授

表象文化学部 日本語日本文学科 [ 研究テーマ ] 表象文化論、日本映画史

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 谷崎潤一郎『痴人の愛』に描かれた近代
  • 谷崎潤一郎『春琴抄』の語りの特徴
  • 谷崎潤一郎『蘆刈』考:古典の引用をめぐって
  • 川端康成『古都』における植物の表象
  • 太宰治「駈込み訴へ」論:キリスト教受容に注目して
  • 太宰治「駈込み訴へ」論 :聖書の引用をめぐって
  • 三浦綾子『氷点』論:登場人物の三角関係
  • 市川崑監督『細雪』における着物の特徴
  • 三浦しをん『風が強く吹いている』各メディアで異なるライバルの表象
  • 映画からみる女性の社会的地位に関する研究
  • 少女と魔法:日本アニメ史から見る魔女ヒロインの表象
  • 少女漫画における「男装」ヒロインの表象
  • 異文化に「翻訳」される映画字幕:韓国ドラマを対象に
  • ポン・ジュノ監督の描く家族像
  • 映画『ジョーカー』におけるアーサーの化粧行為について
  • ディズニープリンセスの定義と条件
  • 『モアナと伝説の海』異文化展開におけるポスターの変化
  • ポスター・コマーシャルからみるスタジオジブリ
  • 2020年公開映画にみるキャッチコピーの特徴
  • 「鬼滅の刃」大ヒット理由とその影響