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教員が語る同志社女子大学の学び

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「日本語」
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「世界」

自分の中の当たり前を
一度すべて取り出し
母語や母文化を考えます。

日本語日本文学科

山本 由紀子准教授

学習者の人生を広げる手伝いができる、日本語教師の醍醐味です。

少子高齢化や人口減少によって、外国人労働者の受け入れが進められるなか、2019年6月に日本語教育の充実を促す「日本語教育推進法」という新しい法律が成立しました。国内で暮らす外国人の日本語教育の発展と、海外での日本語教育の推進を目指す法律です。長く日本語教師の養成に取り組んできた私は、かつてないほど日本語教育に注目が集まっていることを感じています。

日本語教育を専門とする私がとくに興味をもって研究しているテーマが「海外で教える日本語教師の養成」です。ひとくちに海外といっても、地域や国によってニーズは異なります。実際に日本語教師として台湾で活動した経験からアジアに興味を持っており、アジアでどういった教師が求められるのか、現地の状況や学習者、現地教員の視点から明らかにしたいと考えています。
例えば、日本語教育実習を行う海外プログラムで学生を送り出す際に、養成者はどのような事前指導を行うべきか。海外での教育実習の意義を追究すると同時に、実習参加者へのアンケートを行うなど調査・分析に取り組んだこともあります。

私が日本語教師に興味を持ったのは、高校3年生のときです。英語が好きで海外での仕事に興味があり、海外とつながる仕事を調べるなかで見つけた職業でした。「言葉が好きだから、私もなれるかもしれない」とかなり安易な気持ちで大学に進みました。ところが自分の中で当たり前になっている日本語や日本文化を一度すべて取り出し、対象化することは非常に難しく、同時にとても面白い学びでした。
その後、台湾で約3年半、日本語教師として活動しました。自分と異なる文化やバックグラウンドを持つ人たちが学習者であるため、母語や母文化を整理してどう教えれば興味を持ってくれるかを考え、授業を作っていきました。思った以上にクリエイティブな仕事で、やりがいを感じました。同時に中国語への興味が深まり、華語文学の翻訳に取り組むなど私自身の人生も豊かに広がっていきました。
指導によって学習者が変わっていくのを間近で見ることができるのは、教師に共通するやりがいです。決して押しつけではなく、その人の人生を豊かに押し広げるお手伝いをできるのが日本語教師の醍醐味だと思います。この実践経験が、私の研究の基盤になっています。

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言葉の力を磨くだけでなく、課題を見つけ発信する力を養成します。

5つの分野から日本語・日本文学を学ぶ日本語日本文学科において、私は「日本語教育」の分野を担当しています。授業では、例えば日本語の指導技術習得を目指す「教育基礎演習」があります。学生が教師と学習者の役で模擬授業を行った後、振り返りの時間を設け、録画した映像を見ながらディスカッションをします。「あのときの表情がよかった」、「この方法では学習者は戸惑うのでは」といったことを指摘し合い、学んでいきます。相手や環境によって教え方を工夫し、結果を次に生かせることを目標としており、回を重ねるごとに全員が成長を加速していきます。

私のゼミでは、言葉に強い関心を持ち、教えることに興味を持つ学生が多数います。日本語教育は社会との結びつきが強いため、日本社会を見るひとつの視座として興味を持ち、それを卒業論文のテーマにするゼミ生もいます。例えば、日本に住む外国人の現状や、自分の出身地域に住む外国人への支援のあり方といったテーマです。言葉の力を磨くだけでなく、社会の動きにも意識を向ける力は、卒業後もあらゆる場面でも生かされると思います。

日本語教育学の追究を通して、日本語の枠内にとどまることなく自分が持っている文化を見つめ直し、自文化と社会・世界との接点を深く考える力が身につきます。さらに自分の考えをどう発信するか、人とどのように接するかを常に考える能力も養成されます。
以前、就職活動中のゼミ生が目を輝かせてこんな報告をしてくれました。「日本語教育の学びが、面接でとても役に立ちました。相手にどう自分の意見を伝えるかを考えることは、日本語教育の指導のポイントと共通点が多いので、それを発揮できました」と。異なる考えや文化を持つ人に対して、いかに自分の中にあるものを伝えていくかは、相手が日本人か外国人かを問いません。

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留学プログラムが充実し、キャンパス内でも世界とつながれます。

「国際主義」を教育理念のひとつに掲げる同志社女子大学は、世界とつながるチャンスが豊富です。海外の教育機関で日本語の指導実習や授業のアシスタントといった現場を体験できるプログラムが充実しています。協定大学が世界各国にあり、協定留学では、欧米だけでなくベトナムやオーストラリア、韓国等で学ぶことも可能です。
また、日本語日本文学科を中心に海外からの留学生の受け入れを積極的に行っており、本学で学ぶ留学生に対する日本語教育の現場に、学生がティーチングアシスタントとして入るプログラムもあります。留学生と共に学ぶチャンスが増えて交流が深まっていくと、学生の表情がいきいきとしてきます。「私の大学生活が変わりました」と、わざわざ報告に来てくれる学生がいるほどです。自分にはない行動様式を知って世界が広がり、自分を客観視できるのだと思います。

本学科のある今出川キャンパスの周辺では、海外からの観光客や留学生が多く、外国人に道を尋ねられたり、会話を交わしたりといったことが日常茶飯事です。日々の生活のなかで、自分とは異なる言語・文化を持つ人と出会えるのは、京都の中心地にキャンパスがある本学だからこそ。日本語や日本文学、日本文化を研究したい人にとって、この1200年の都は理想的な学びの場であることは言うまでもありません。

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受験生のみなさんへ

大学入学後は、決して待ちの姿勢ではなく、大学にあるものはすべて活用して積極的に動いてください。授業以外の場面でもいかに自分の世界を広げ、それをチャンスとしてどのように活用していくかが充実した大学生活を送るポイントです。「あの子、動いているね」。周囲にそう伝わるぐらいでいてほしいと思います

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山本 由紀子准教授

表象文化学部 日本語日本文学科 [ 研究テーマ ] 実践力を備える日本語教員の養成

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 日本語教育におけるマンガの活用ー「こそあ」指導に焦点を当ててー
  • 対日イメージは留学期間中に変わるか
  • 高知市の日本語教室の現状と課題
  • マンガにおける当て字ー日本語学習者の理解に向けてー
  • 過去の地震災害と南海トラフ地震における『やさしい日本語』の活用法
  • 地方における技能実習生に対する日本語教育をめぐって
  • 同志社女子大学留学生の日本語能力の上達感とその要因について
  • 外国人医療の未来
  • 日本語能力向上のための授業外でのメディア利用について
  • 公立学校における外国人児童生徒への取り組みの現状と課題
  • 外国人アルバイトに生じるコミュニケーション問題
  • 地域日本語教室の「日本語学習についての調査表」―地域日本語教室の持続的な活動をめざして―
  • オーストラリアで働く日本語教師の資質
  • 日本語学習者に対するコソアの指導法 ー文脈指示用法に焦点を当ててー
  • 日本語教材としてのアニメ映像の利用方法と提案
  • 多言語環境に置かれた子どものリテラシー能力への学習サポートについて
  • 日本語教師が抱くカルチャー・ステレオタイプの意識
  • 外国人児童に対する母語教育の現状と課題
  • 中国帰国生徒に必要な日本語教育をめぐって
  • 外国人児童の第二言語習得と母語保持について