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教員が語る同志社女子大学の学び

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「表現」
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「小説」

文学を深く味わい
ともに表現力を磨く。
学びの目標です。

日本語日本文学科

生井 知子教授

多くの草稿を残した志賀直哉はじめ白樺派の作家を研究。

簡潔で的確な文章から"小説の神様"と評される志賀直哉。完成した作品だけを読むと、さすがだと感じますが、草稿(下書き)を追究していくと、何度も書き直していることがわかります。最初のころの文章は決してうまいとは言えず、表現の可能性をあらゆる方面から探り、推敲を重ねた上で完成に至ったことがよくわかります。

日本の近現代文学を専門とする私は、志賀直哉を中心とした白樺派の作家を研究しています。志賀直哉は多くの草稿が残っている作家で、それらを細かく研究していくと、1行を書き直すことや、わずかな書き方の違いがいかに作品のテーマに影響するか、ということがわかってきます。
一方、同じ白樺派でも、武者小路実篤は推敲よりも発表を優先するタイプの作家であるなど、書き手によって表現はさまざまです。また、文章の技巧のみならず、作家の全作品を通して研究することで、作家自身の人間性や思考のパターンにもアプローチしています。

私が学生のころは、文学研究すなわち小説でしたが、同志社女子大学で教鞭を執り始めてからは、小説のみならず演劇まで対象を広げて研究を行っています。そのきっかけのひとつとなったのが「演劇もやってみたい」という本学科の学生の熱意に応えるべく、「身体表現」の授業をカリキュラムに加えたことです。
小説をもとに自分の身体を使って表現することで、読むだけではわからなかった表現に気づくことがあります。また、言語だけに頼らず、音楽や造形と一体となれる演劇を通して、新たな視点から小説を読み解くことも可能です。研究者の私にとって面白いアプローチであり、こうした体験型授業を通して学生にもさまざまな刺激を与えたいと考えています。

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村上春樹から中島みゆき、ジブリ作品まで卒業論文は多彩です。

日本語日本文学科は、日本語学、日本語教育、近現代文学、古典文学、日本文化からなる5つの分野を学び、日本の表象文化を追究していく学科です。そのなかで私が担当する「近現代文学」分野では、学生自らが作品を作り、鑑賞する"体験"を通じて日本文学を学ぶことに重きを置いており、前述の「身体表現」の授業もその一例です。

私の授業でも1年次から創作に取り組み、表現を深く考察する面白さを体験から学んでいきます。まず、映画や演劇、マンガなど多様なジャンルの表現と小説のそれとの違いを学生自らが考え、議論し、そのうえで小説を書いていきます。
日本語表現や文学への関心が高い学生が多いため、それぞれが懸命に創作に取り組み、そして新しい気づきを得ます。語り手を誰にするか、文体をどうするか、といった創作の初歩から、1行を書く難しさに気づき、一人よがりではない、読者に伝えすぎない表現とは何かをつかみとる過程の中で、文学を味わう、深く読むことを目指しています。

こうして身につけた考察力や表現力を土台に、ゼミでは卒業論文に結びつく研究を行います。
小説にとどまらず、広く表象文化から学生が関心のあるテーマを選び出します。
これまでの卒業論文のテーマとしては、「宮沢賢治『銀河鉄道の夜』論」、「村上春樹『ノルウェイの森』論」、また「サザンオールスターズ」や「中島みゆき」、「風の谷のナウシカ」などもあります。アニメを論じるにも、作品の1コマ1コマを丁寧に考察していかなくてはなりません。明治時代の小説を取り上げるならば、その時代の社会状況の理解が不可欠であり、村上春樹であれば彼の原体験である学生運動の知識が欠かせず、幅広い調査が必要です。

また、一人の作家を取り上げる場合でも、多様な作品を研究することにより作家の書き方の特徴や表現の工夫点が明らかになるため、できるだけ多くのデータを集めることも大切です。卒業論文の取り組みだけで文学の本質に迫り、高度な表現力が身につくわけではありませんが、4年間の学びの集大成として、ひとつのテーマを突きつめていく経験は、卒業後の人生を支える力になります。

ゼミ生の進路はさまざまですが、中学校・高校の国語科教諭を目指す学生もいます。文学を味わう楽しさを知り、自分の言葉を持っている教員が指導すれば、生徒にとっては国語の授業がより面白くなるのではないでしょうか。ゼミ生の活躍により、文学を深く味わえる人が増えていくのではないかと期待しています。

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表現を楽しむ喜びを共有する、そんな仲間と出会えます。

ここ数年、同志社女子大学の卒業生が世代を超えてオンライン句会を催しており、大変盛況です。本学科の俳句の授業を選択していた卒業生が中心となって始めたもので、多様な年代の卒業生が定期的にインターネット上で自作の句を発表し、評価し合っています。
各々仕事や家庭を持つ忙しい彼女たちですが、創作意欲旺盛で、自分の作品を語る言葉や、ほかの人の俳句を批評できる力を持っています。知性・人間性の豊かな女性たちが世代を超えて交流し、文学を味わう楽しさを共有する。リベラル・アーツを教育理念の柱とし、長い歴史を紡いできた同志社女子大学で学んだ卒業生ならではの活動だと思います。

卒業生の句会からもわかるように、感性は人からの批判があってこそ磨かれるものだと思います。 自分の表現を人にぶつけて、意見を聞き、そこから気づきを得て、さらに自分の表現に磨きをかける。時間はかかりますが、ともに感性を磨く仲間がいることは、人生を豊かに耕すことにつながります。
そうした仲間に出会えるのが同志社女子大学であり、日本語日本文学科です。多様な考え方や感じ方を受け入れる柔軟性があり、授業やゼミではお互いの考えを否定しないおおらかさがあります。他者を受けとめる、やさしい学生が多いと感じます。安心して学べる環境のもとで感性を磨き、数多くの学生が社会に羽ばたいています。

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受験生のみなさんへ

文学を学んだ人と学ばなかった人との違いは、とても大きいと思います。言葉の選び方や使い方だけでなく、人生への向き合い方が違うように感じます。文学を学ぶということは、頭の上から大量に知識や言葉を注ぎ込むのではなく、自分自身の内面をじっくりと耕していくことです。時間をかけて花を咲かせ、やがて豊かな実りになっていくと思います。

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生井 知子教授

表象文化学部 日本語日本文学科 [ 研究テーマ ] 「白樺」派の作家たち

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 宮沢賢治論 ―「銀河鉄道の夜」を中心に―
  • 夏目漱石『文鳥』論
  • 泉鏡花世界における女性像
  • 有島武郎『一房の葡萄』研究
  • 太宰治「斜陽」論
  • 『春琴抄』論
  • 「忍ぶ川」論
  • 柳宗悦が追い求めた真なる美とは ―美の価値観―
  • 武者小路実篤論
  • 梶井基次郎「檸檬」論
  • 安部公房『箱男』論
  • 谷崎潤一郎論『蘆刈』論
  • 江戸川乱歩 人間椅子論
  • 初野晴「向こう側の遊園」論
  • 森鷗外「舞姫」論
  • 吉屋信子論―『花物語』を中心に―
  • 谷崎潤一郎『少年』研究
  • 堀辰雄「羽ばたき」論
  • 太宰治「葉桜と魔笛」論
  • 田山花袋「少女病」研究