「女性」
×
「文学」
×
「社会」
コロナ禍を経験した
今こそ「国際化」を考え
実践するときです。
国際教養学科
Maria L.CORREA准教授
現代日本文学の女性作家の作品を中心に研究しています。
今から20年ほど前、母国コロンビアの大学で心理学を専攻していた私は、戦後の日本文学を研究対象としていました。とりわけ三島由紀夫に関心を持ち、三島の作品を精神分析的理論を通して物語にアプローチしていました。
最近では、文学と社会の関係を中心に研究を進めています。文学は社会とかけ離れた場所に存在するという考え方もありますが、私は、文学の中に社会が描かれ、文学も社会に影響を与えると考えています。そうした観点から、社会的行動のなかでも、女性運動やフェミニズムに焦点を当て、研究を行っています。
たとえば、「メキシコと日本における1960年代の学生運動と文学」というテーマで論文を執筆しました。この論文では、メキシコ人のエレナ・ポニアトウスカと日本の高野悦子を取り上げました。エレナ・ポニアトウスカは1968年にメキシコシティで陸軍が学生集会に発砲した事件を描いた作家であり、高野悦子は20年間の生涯における様々な葛藤を綴った日記が、死後出版され注目を集めた人物です。
そして現在は、女性運動と文学をテーマに研究しています。女性雑誌が多数発刊され、岡本かの子たちが活躍した大正時代から、現代の多和田葉子まで、20世紀初頭、20世紀半ば、21世紀初頭の3つの時間軸で、社会の動きと連動させて女性作家の作品を追究しています。
また2020年には、仲間と一緒に「犬」をテーマにした文学作品を集め、スペイン語訳の本を出版。大江健三郎、正岡子規、多和田葉子、倉橋由美子などの作品を取り上げました。
私が日本文学に関心を持ったのは、高校時代の日本への留学がきっかけです。当時は日本がどういう国なのか全く知らなかったのですが、奨学生として留学のチャンスを得たその先がたまたま日本でした。日本語は話せず、ラテンアメリカとは地理的に正反対の位置にあり、経済的にも社会的にも母国とは異なる日本という国を理解できないまま、コロンビアに帰国しました。
しかし、この留学を機に日本を理解したいという強い思いがわきました。留学先だった島根県に縁の深い小泉八雲の作品を読み始めたことで日本文学への関心が深まり、心理学を専攻していた大学では、戦後日本文学について文学・心理学の両面から研究するようになりました。
10代での留学で異文化に触れ、自分の知らない世界をもっと知りたいと考えるようになった。そんな私が、海外留学をカリキュラムに組み込む本学の国際教養学科で教壇に立つ意味の深さを感じています。
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女性と家族・社会について自分との関わりを考えるゼミです。
日本の文学作品について議論を交わす授業では、作品を英語で読む試みを行っています。中・高の教科書で触れた芥川や太宰の作品を英語で読み直すと、ほとんどの学生が驚きます。「大人になって、別の言語で同じ作品を改めて読むと新しい発見がたくさんある」と。
自分とは違う世界のものだと思っていた作品を英語で読み直し、仲間と深くディスカッションすることで、そこに描かれているのは、国や時代を問わない普遍的な人間の姿だと気づくのでしょう。遠い世界の話ではなく、現在の自分と直結していることを感じるようです。
作品を読むことで起きる、内面の変化についてもディスカッションします。「私はこういう読み方ができた」と、自信をもって話す学生が次々と出てきます。母語ではない言葉で作品を読み解き、母語ではない言葉で作品について語ることによって新しい視点を得られる。作品が自分のものになった、という感覚を持てるのだと思います。
ゼミでは、社会(とりわけ日本の社会)における女性をテーマにしています。学生も社会に参加している人間だという意識を持ってもらって、政治的・経済的・文化的な視点から日本について考えてほしいと思います。
まず卒業論文に取り組むにあたり、論理的に考え表現する方法を、英語でのディスカッションを通して身につけていきます。自分の考えを持つ、きちんと反論できる、こういった力を養ってほしいと思います。
次のステップでは、社会情勢を背景にした女性運動の歴史について学び、卒業論文に向けて、女性と家族・社会のつながりを考えていきます。たとえば社会課題のひとつになっている選択的夫婦別姓の問題について、そこにはどんな歴史があり、自分たちとどう関係しているのか、社会と自分自身の関わりを考察することを重視しています。
国際教養学科では、1年間の英語圏の大学への留学が学びの軸になっています。1年という期間が持つ意味は大きく、語学力だけでなく、政治や経済、教育などさまざまな学びが経験できます。異文化の中で生活するなかで、心身の健康も含めた自己管理能力を鍛え、日本とは何か、日本人とは何かを問いかけ、考える時間が持てます。
「日本人とは何か」への自分なりの答えがなければ、国際的な舞台に立ったときに建設的なディスカッションができません。自文化への考えがあってこそ、グローバルな視点での議論の席につけます。
1年間の留学から戻った学生の成長は、見事です。人間として大きく成長し、卒業後は外資系企業に就職する人、学びをさらに深めようと英語圏の大学や日本国内の大学へ進む人、またタイやオーストラリアで日本語教師の道に進んだ人もいます。世界で活躍している卒業生はたくさんいます。
コロナ禍で国際化が止まってしまった、と感じる人がいるかもしれません。しかし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大から、いかにグローバル化が進んでいるかが明らかになりました。今後、国際化の勢いは加速していくでしょう。だからこそ、国際化について真剣に考えるときではないかと思います。国際教養を学ぶのは今だ、と強く感じます。
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やりたいことを突きつめられる、安全・安心な環境です。
国際教養学科の学生はとても素直で、さまざまなことに積極的にチャレンジをする姿勢を持っています。2年次から3年次にかけて留学を経験し、就職活動が本格化する4年次になると、一気に大人の見方ができるようになりますが、それでも変わらないのは、積極性や知的好奇心です。
国際教養学科の教職員も、学生に負けず劣らず積極的でアクティブです。常に学生のことを大切に思っていて、学生と教員の前向きな雰囲気が学科全体に浸透していると感じます。
同志社女子大学で学ぶ醍醐味のひとつは、すべての学部・学科で女性について考えられる授業がそろっていることだと思います。豊かな学びを、ぜひ多くの女性に経験してほしい。そして、安全・安心な環境のもと、自信を持って自分のやりたいことを突きつめてほしい。人間としての軸を持ち、自分の意見を言える女性になってほしいと願っています。
私は京都に住んで長くなりますが、外部の人を柔軟に受け入れるインターナショナルな街だと思います。この京都にキャンパスを置く本学は、奈良や大阪、神戸にも近く、関西全域から学生が集まってきます。関西各地のよい仲間との出会いが経験できると思います。
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受験生のみなさんへ
将来は、世界を舞台に人生を切り拓いていきたいと思っている受験生にとって、本学の国際教養学科は最適な学びの場になると思います。日本にいながら世界を見ることができ、留学を経験して世界で日本のことを考えることもできます。実り多い4年間を過ごしてください。
卒業論文テーマ例
- Relative Child Poverty and Educational Inequality in Japan
- Post-war Japanese Cinema and Representation of Japanese Women
- Comparison between Young Japanese and Korean People's Political Views through their Use of Social Media
- Contemporary American Society and Marvel Comic Books Superheroe
- Muslim Veil Controversy in the West
- What is Joshiryoku?
- Analyzing the Representation of Japanese People in Hollywood films during WW2
- Sacredness in Japanese Animation's Seichi Junrei
- Housewife Fantasy in Female University Students in Japan
- Identity of Dual Nationals in Japan
- History of the Notion of Death in Three Great Religions: Buddhism, Christianity, and Islam