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教員が語る同志社女子大学の学び

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「異文化
コミュニケーション」
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「英語教育」

文化や思考の違いを
理解した上での効果的な
英語の学びを探究しています。

国際教養学科

佐伯 林規江教授

英語教育を担う先生に向け、研究成果を提供しています。

「目標はネイティブのように話すよりも、通じる英語を話すこと」が、現在の英語教育のトレンドです。イギリスやアメリカといった英語圏の言語ではなく、世界中で異なることばを話す人同士がコミュニケーションツールとして使う共通言語だと捉えるEIL(English as an International Language)=「国際共通語としての英語」の考え方が主流になってきたためです。
事実、世界で話されている英語のうち2/3は英語を母語としないノン・ネィティブスピーカーによるものです。発音はもちろん、文法や語彙がネイティブのものとは異なることも多いです。日本の文化や日本人気質といった個性を正しく表現しつつ、意見交換や交渉ができ、互いに通じる英語を話す、という目標を理解した上で、どう日本人学習者に指導をするかが英語教育で重視されています。

急速なグローバル化とボーダレス化により英語を学ぶ目的が多様化し、変容を遂げるなか、「英語教育」を専門とする私は、「コミュニケーション」と「異文化理解」に着目し、それらに関わる領域として、英語の発音、プレゼンテーションをはじめとしたパフォーマンスの技法、日本人学習者への効果的な英語学習に寄与する研究を行っています。
例えば、どのレベルまで正しく発音すれば通じるかの評価を行い、その容認性や自己効力感との関係を調査。こうした量的・質的な研究成果を、英語学習者のみならず、英語教育に携わる教育者に向け、指導書やマニュアル、教科書といった形でアウトプットしています。

「お茶が入りましたよ」は、日本では日常的に使われる表現ですし、子どもでも違和感を感じることなく理解してくれますが、日本語を学ぶ外国人にはなかなか理解しづらい表現だとも言われます。主語を言わないことで「誰が」入れたのかをあえて言わない、ある意味日本人らしい控え目なこの伝え方は、そのまま英語に置き換えてしまっては、そのメッセージは「誰が」したのか責任の所在を明確にしない表現となってしまいます。積極的に「察し聴く」聞き手の存在がセットであってこそ「ありがとう」とスムーズな会話が成立する極めて日本文化的表現なのです。
こうした日々のやりとりの奥に潜んでいる言語的、文化的思考の違いも理解したうえで、国際語としての英語の学びを意識することが「異文化コミュニケーション」であり、私のもうひとつの研究領域です。「異文化コミュニケーション」の留意点やポイント(たまには落とし穴も)を英語のテキストや指導法に盛り込みながら教育者にも理解を促していくのが目的であり、経験を通して得られる異文化理解や付加価値が染みこんでいくような英語教育を目指しています。

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英語でクリティカルに考えステージで発表するゼミの大型プロジェクト。

私のゼミでは年に1度のプロジェクトとして、大学英語教育学会主催のOral Communication Festivalに参加します。全国各地の大学が集まり、学生が創作劇やスピーチ、ディベート、プレゼンテーション、朗読など自由なスタイルでステージ発表を行います。私のゼミではこのプロジェクトに「社会変革を起こすためのパフォーマンス」というジャンルで参加しています。
このパフォーマンスの出演に向けて、ゼミ生全員で1つのテーマを決め、留学先での経験やフィールドリサーチを通して情報収集し、英語で台本を作り上げていきます。自分たちで団体や企業に取材に出向くこともあります。

学生にとって未知の分野に自発的に、そして自律的に関わっていくことにより、コミュニケーション力のみならず、他者とコネクトする力や交渉力が実践的に磨かれます。チーム内での意見の相違や課題も発生しますが、それらを自分たちで解決することで1人ひとりが成長していきます。

リサーチに基いて集めたデータや事実をもとに台本を製作し、リハーサルを重ね、その撮影動画をみんなでシェアし、フィードバックもしあいます。発表言語はすべて英語ですが、リハーサルは日本語でも英語でも行います。論理的に考え発信する力のみならず、「話す」「聞く」を繰り返すことにより、英語の発音が格段に良くなり、リスニング力・表現力が伸びていきます。現在、社会の各場面で活躍している卒業生から「プロジェクトでの経験が、仕事でとても役に立っています」という声をよく聞きます。

2019年12月に開催されたOral Communication Festivalでは、本学がホスト校としてイベントの企画・運営を担いました。4年次生が中心となり、会場の「聡恵館ラーニングコモンズ」で、オープニングから大会の司会進行、パーティーのMCまで、すべてを英語で実施。イベント前には、マネジメントも自分たちで企画・運営。各大学チームのアテンドや各校代表者とのステージ発表のための機器やPC音響に係る打ち合わせ、宿泊サポート、各大学の先生とのやりとりなど1人で何役も果たし、それぞれが各部門のリーダーを務めました。ビッグイベントのホスト校に立候補した本学の学生の積極性と、それをやり遂げた行動力には、指導教員の私も感心しました。

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留学中の学びや経験をベースに多くの学生が卒論に取り組みます。

国際教養学科の特徴である英語圏の大学への1年間の留学を経て、3・4年次生で取り組む卒業研究は、学生が自由にテーマを選びます。文化的差異にフォーカスし、コミュニケーション・ギャップやコンフリクトの発生原因とそれを乗り越える解決方法を独自の視点から考える学生、あるいは日本の小・中学校の英語教育に留学先の大学で学んだ外国語教育のエッセンスをなんとか取り入れられないか、研究する学生もいます。
留学中の気づきを元にテーマ設定をする学生や留学中の経験を社会変革や企業研究に結びつけてリサーチする学生も多く、1年間の留学が非常に有意義な経験であることがわかります。

留学を成功させるため、本学科では教養と実践のバランスのとれた教育をきめ細やかに行っており、私も「基礎ゼミ」に加えて「英語スキル」と「異文化コミュニケーション入門」の授業を担当しています。
英語4技能を高める「英語スキル」ではリスニングを担当し、TOEFL・IELTSのスコアアップをはじめ、留学先の大学で正規の授業を受けるにあたっての訓練を習熟度別で行っています。
「異文化コミュニケーション入門」では、異文化を理解するとはどういうことかを知り、カルチャーショックを上手く効果的に乗り越え、異文化交渉について心理学とコミュニケーション学の両面からアプローチし、学んでいきます。

留学を終えた学生の多くは、飛躍的に成長して帰国します。もちろん留学中は楽しいことばかりではありません。孤独のなかで困難を乗り越え、考え方や文化の異なる人への思いやりを育み、人としても大きくなります。20歳前後の多感な時期を日本とは異なる環境で生活し、現地で大学生として学ぶことが大きな成長につながっていると思います。
英語力においても、TOEICのスコアが劇的に伸び、これまでとは異なるビジョンが開かれていきます。身に着けた英語を「使って」何かを成し遂げようとする行動力はもちろんのこと、自分を表現する発信力や社会に働きかける問題解決力が総合的に磨かれていきます。

こうした海外留学やプロジェクトへの参加を通して、リーダーシップを育むチャンスに恵まれているのが国際教養学科です。学年を超えたイベントも多く、それらを経験するなかで、自分らしいリーダーシップの取り方がわかってくるのだと思います。チームの先頭に立つだけがリーダーシップではなく、チームの輪に入ってうまく舵取りをすることも、チームを後押しすることもリーダーシップです。グローバルに、社会のあらゆる場面で発揮できる、自分らしいリーダーシップを本学で育んでください。

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受験生のみなさんへ

1年の大学正規留学を終えて帰ってきた学生は、教養の幅を広げ、現地の社会や文化を自分の五感で体感して豊かなコミュニケーションカを身につけ、飛躍的に成長します。学生同士が留学先での互いの学びや経験を分かち合い、さらに異文化理解を深化させていきます。帰国後も、時間と資金を作っては留学先を再訪したり国際ボランティアに参加するなど、行動もマインドもボーダレスに軽やかに世界に飛び出していく姿は頼もしくもあります。しなやかに、そしてグローバルにこの社会を見つめています。

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佐伯 林規江教授

学芸学部 国際教養学科 [ 研究テーマ ] 異文化コミュニケーションと英語教育

研究者データベース

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卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • The Elements of Global Human Resource Acquired through an Overseas Experience
  • The Analysis of Japanese Female Students’ Refusal through Politeness Theory
  • The Impact of Study Abroad on Student’s Silence in a Classroom Discussion
  • The Way of Building Self-esteem of Young Japanese: Learning from child-raising in the US
  • Could Living in Western Countries Change Japanese Values for Decision Making?
  • Intercultural Communication and Politeness Strategy between Japanese and North Americans-in case of the first encounter-
  • The Awareness and Attitude towards Plurilingualism of College Students in Japan
  • The Relationship between Entrepreneurship and Experience in Foreign Countries
  • Identity Establishment of Bilingual Children and the Background Factors
  • Intercultural Communication and Stereotypes of People in Kansai
  • The Complexity of High-context Culture in Japanese Communication
  • The Relationship between Bridal Business and Modern Women’s Empowerment
  • Japanese Women’s Awareness of Common-law Marriage
  • Analysis of the Transitional Image of Working Woman in Hollywood Films since 1960’s
  • What are the Differences in Elements of Role Models between UK and Japan
  • Humors in American President’s Speeches: Their cultural and social backgrounds
  • Historical Change of New Words and Buzzwords: Focusing on words related to gender
  • Sustainability and Culinary Tourism in British Columbia: Looking at social perspective on Triple Bottom Line
  • Active-and Future-teacher's Anxiety toward the 2020 Renewal of the Elementary School English Curriculum
  • The Japanese Title Given to Foreign Films: Investigating the Recent Trend