「プロダクトデザイン」
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「つなぐ」
観察して課題を発見し
人とモノ、人と社会の関係性を
再構築させるのが、デザインです。
人間生活学科
村井 陽平准教授
プロダクトデザイナーの活動と伝統工芸のデザイン研究を進めています。
ある業務用食器メーカーから依頼を受け、私がデザインを手がけたバイオマス樹脂製の子ども用食器「シェルミンキッズ」が、2023年度グッドデザイン賞と第17回キッズデザイン賞、ドイツのiF DESIGN AWARD 2024をトリプル受賞しました。
SDGsの推進によって、環境負荷の低減につながるバイオマス樹脂の開発が各企業で進められています。一方で、こうした新素材は流通量が少ないため、どうしてもコストが高くなり普及が進みません。私が依頼を受けた、57%が卵の殻でできている「卵殻プラスチック」もそのひとつでした。だからこそ、デザインを見直すことによって素材の魅力を伝え、その価値を理解して購入してもらう仕組みが必要だと考えました。
そこで、まずは卵殻プラスチックを使った商品であることがひと目でわかるよう、白と茶色の卵殻が混ざることで発生する、温かみのある素材の風合いを魅せることにしました。従来は塗装して隠していた素材の表情を、あえて一部塗装しないデザインにしたのです。
また、子ども用食器は環境にやさしい素材で作られているものもありますが、子どもの成長とともに捨てられがちです。そのため、幅広い年齢に対応させるように、子ども向けのヒヨコをモチーフにした仕切り皿は、取り外しを可能にすることで製品寿命を延ばすことを図りました。
さらに、子どもが持ちやすいよう手に引っかかる形状にし、重心を下げることで落下リスクの低減を目指しました。子どもが使いやすいモノは、どんな人も使いやすい、ユニバーサルデザインにつながります。そして、120人のお母さんの声を反映して、食器洗浄機に対応させました。
こうしたモノ以外にも、私は企業や行政から依頼を受け、さまざまなデザインを手がけています。例えば駅前の観光案内板では、伝統的な街にどのような色の看板が適しているのかを考え、設置する環境との調和を考えていきました。
デザイン業界では、モノの色や柄、カタチを作ることに注力していた時代もありますが、今は対象を取り巻く環境を分析して課題背景を捉え、人とモノ、人と人、人と社会の関係を見直していくことが求められます。
プロダクトデザイナーの活動に加え、国内外の伝統工芸のデザイン研究にも取り組んでいます。
伝統工芸とデザインのコラボレーションは多数ありますが、積極的に協働されていないもののひとつに和楽器があります。中でも三味線は、江戸時代に日本人にとって最も馴染みの深い楽器として栄えましたが、年間生産台数が減少していき、今後の存続が危ぶまれる状態にあります。また、極めて少ない生産数では、デザイナーのビジネスとして成立しないため、これまで積極的に関わられてこなかったのです。私は三味線職人との出会いから、このような厳しい状況を知り、だからこそ今デザイナーの力が求められていることが分かりました。
研究を通して三味線音楽を経験してみると、楽器としての潜在力は決して損なわれておらず、その魅力を伝えるための伝達システムが途絶えているだけだと気付きました。また、日本にはモノの姿や形を変えずに継承し続けるといった美学があり、それがかえって現代においてこの楽器を閉塞させていることが分かりました。もう少しユーザーに寄り添った形態の三味線も必要なのです。例えば、工芸品としての繊細な形状を守るための収納箱は大きく、持ち運べる楽器でありながら、持ち運びづらい楽器であるといった声が多くあります。そこで、これまで高度な職人技を要したジョイント部を、現代的な技術を用いることでコストダウンを図り、胴体に全てのパーツが収納できる、持ち運びの利便性を高めた三味線を開発しました。また、三味線はギターのように音階を目で確認できる「フレット」がありません。そのため、バイオリンのように経験を通して感覚的に身に着けなければ演奏することが難しい印象があり、敷居を高くしてしまっていると考えました。初心者が楽器の性能を引き出しやすくなるような工夫も、ユーザーの裾野を広げていく上では必要です。
「デザイン」と聞くと、何か新しいものや、お洒落なモノを生み出すことをイメージする人も多いかもしれません。しかし、三味線のように一見現代で見落とされがちですが、日本文化の中で培われてきたモノは非常に素晴らしいです。デザインを通して、それに気づくきっかけを構築することもまた、デザイナーに求められる社会的役割です。
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ゼミでは観察眼を磨き、実践的なデザインの考え方を鍛えていきます。
デザインの基本は、課題発見と解決です。プロダクトデザイン研究室では、課題を発見する観察眼を磨くことを重視しています。
例えば、3年次生は「カレンダー」の課題に取り組んでいます。「カレンダー」と聞けば、日付と曜日を示したありふれたカレンダーを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし、「カレンダー」とは何かをもう一度見直し、特定のユーザーを想定して付加価値を加えたり、機能の取捨選択を行って何かに特化させることで、これまでのカレンダーの固定概念を打ち破り、新しいカレンダーを生み出すことができます。今年度の学生作品では、県外からきて一人暮らしをする学生が、ゴミ出しの曜日を把握することの難しさに気づき、それを改善するカレンダーを考案しました。人の生活を観察し、何かより良くできることを発見することがデザインの基本です。
地域とのプロジェクトや、企業との産学連携にも積極的に取り組んでいます。
デザインは1人ではできません。さまざまな人が集まって、初めて形になります。学生にはデザインの考え方を身につけるとともに、コミュニケーション能力を磨いてほしいです。ゼミでは、プレゼンテーションに対する質疑応答や議論の時間を多く設けています。これら経験を重ねて、それぞれが研究テーマを絞り、卒業研究に繋げていきます。
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芸術大学出身の私だからわかる、本学で学ぶアドバンテージ。
私は2023年4月に本学に着任しました。女子大である本学は、設備をはじめあらゆる所に女性の目線が反映されているように感じます。
女性の活躍に伴い、企業は女性目線の商品やサービス開発に注力しています。そして、住宅やインテリアなど、家庭でモノを選択するシーンでは、女性が決定することが多くなってきています。本学で女性ならではの感性を磨いていくことで、世の中をより良くしていくことに繋がると考えています。
私がデザインした卵殻プラスチックの食器も、お母さんが子どもに食器の物語を語り、地球環境を守っていくことの大切さを伝えていくことで、未来はよい方向へと導くことに寄与できるのではないかと考えました。子ども用品ではありますが、母親を強く意識した商品としてデザインしているのです。
人の生活に纏わることを広く学ぶことができる人間生活学科の中で、デザイン分野を学べることは、本学の魅力の一つです。学科には、ユニバーサルデザインを専門に研究されている先生、照明やファッション、住居を研究されている先生など、生活科学に係る幅広い学びが経験できます。さらには、学部学科を超えると、幼児教育や音楽、食物を専門とする先生もいらっしゃる。総合大学だからこその多彩な学びと出会えることは、大きなアドバンテージだと思います。芸術大学で長く学生時代を過ごした私だからこそ、それを実感しています。
京都は古いモノを大切にしてきた街であると同時に、新しいモノを積極的に取り入れてきた街です。伝統と新しいテクノロジーが融合しているこの街で学ぶ意義は非常に大きいと感じています。私は京都の大学院で学びながらロンドンに留学し、その後は国内のいくつかの街に住んだ経験があります。他の地域に住むと、改めて京都の魅力に気付きこの街に戻りたいと考えるようになりました。
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受験生のみなさんへ
私は大学卒業後に民間企業で働き、大学院に進学して研究を行いました。大学は、人との出会いの場だと思います。友だちや先生、いろいろな人との出会いを通じて多様な価値観や視点を得て、それが人をつくっていくのでしょう。本学でたくさんの人と出会ってください。
卒業論文テーマ例
- 非ホジキンリンパ腫患者に対するR-CHOP療法施行患者向け服薬指導シートの評価
- ESHAP±R療法における服薬指導シートの有害事象予測精度の評価
- 急性骨髄性白血病に対するシタラビンとイダルビシン寛解導入療法における
- 服薬指導シートの臨床的有用性の評価
- 副作用報告データベースを用いたベンダムスチン関連皮膚障害発現までの好発時期
- 有害事象自発報告データベース(JADER)を用いたポナチニブによる心毒性の好発時期の評価
- 医薬品副作用データベースを用いたポマリドミドによる肺障害の評価
- 医療データベースを用いたニボルマブによる心臓関連の有害事象の評価
- 有害事象自発報告データベース(JADER)を用いたエベロリムス誘発有害事象の網羅的解析
- 副作用報告データベースを用いたベバシズマブによる肺毒性の評価
- ファーマコビジランスデータベースを用いたトラスツズマブによる肺有害事象の評価