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教員が語る同志社女子大学の学び

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「光」×「色」×「心」

モノの価値が高まり
生活の質が向上する
そんな「光環境」を追究しています。

人間生活学科

奥田 紫乃教授

人の肌や食品の色、住宅や店舗、美術館の光環境を研究対象としています。

例えば新しいリップを買って自宅で塗ってみると、お店で見た色とは印象が違っていた、そんな経験をした方も多いのではないかと思います。
これは顔を照らす「光」の存在が影響しています。光がモノに当たり、モノの表面で反射された光によって、私たちは「色」を感じることができます。木目の美しい家具や優しい風合いの器など、くらしを彩る多様なモノの素材を照らすのも光です。

私は、このような生活空間の中にあるモノの色と光環境について研究しています。特に、生活の中で身近な対象である人の顔の見え方について長く研究してきました。
レースカーテン越しの人の顔の見え方とプライバシーの関係や、夜の街路の歩行者の顔の見え方と安心感の関係、化粧品の色によって肌の色がどのように見えるのか、照明光の色が変わると顔の印象はどのように変化するのかなど、光と色が人の心に与える影響を分析することを研究の基本としています。

最近は、美術品鑑賞のための照明に関する研究にも取り組んでいます。省エネルギーで、照射光に熱を含まないことから、美術館の照明にLEDが用いられるようになっていますが、これまで使用されていた蛍光灯とは光の特性が大きく異なるため、照らされた美術品の色の見え方も異なっています。
美術館にある多彩な作品を見せるにあたり、照明はどうあるべきか、スペインの研究者を含む様々な分野の研究者と共同で研究を進めています。

光に照らされたモノの色を研究する際には、光の量や色、モノの表面の特性を物理的に計測することが求められます。一方、物理的な計測が難しい「質感」にも注目しています。
例えば、人工的に作られた食品サンプルや、木目をプリントした壁紙は、肉眼では本物でないことがすぐにわかります。
私たちの目はとても敏感にモノの特性を捉えることが可能で、それが「質感」であると言えます。どのような光環境であれば質感が感じられるのか、そして環境や条件を整えることで、モノの価値がどのように高まり、生活の質が向上するのかを追究しています。

私の研究は「光環境」分野の「視環境設計」や「視覚心理・生理」に分類されます。建築・住居の分野では、設計やデザインに落とし込むことが最終的な目標ですので、研究結果が社会にどう役立つのかを常に意識し、授業やゼミでの指導においても重視しています。
人間生活学科では「生活をデザインする」ことを学びのテーマに掲げていますが、単におしゃれなモノを作るといった狭義のデザインではありません。豊かな生活や心地よい環境を作るための解決策の提案こそがデザインであり、授業やゼミでもその解を追究しています。

また、生活者がよいモノを見る目を養い、より高品質なモノを求める姿勢があれば、企業もよりよい製品づくりに力を注ぎ、豊かな生活空間が実現するはずです。そういった視点を持ってくらしをデザインし、マネジメントできる生活者を育てていくことも、本学科の教員である私の使命だと考えています。

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インテリアから街並みまで、光と色が心に与える影響を
様々な方法で分析・評価します。

研究室のテーマは「視覚情報の分析と心理評価」です。光に照らされるモノの色や質感などの目から入ってくる情報が、人の心にどんな影響を与えるかを明らかにしていきます。

学生はそれぞれが注目する視覚情報を対象として研究テーマを決め、分析・評価を重ねます。心理評価実験やフィールド調査、アンケート調査などさまざまな手法を駆使して研究活動を行っています。

自分が追究したいテーマを絞り込むために、まず3年次の春学期ではグループワークに取り組みます。調査を実施し、そしてその結果をプレゼンテーションすることを通して研究活動の流れを学びます。
飲料の色彩測定、建物外観の色彩調査、内装材の質感評価、絵画作品の見え方評価など、年度によってテーマは異なります。例えば、クロード・モネの風景画と照明に関するテーマでは、照明の色をわずかに変化させると、小さく描かれた花が色鮮やかに見えることで絵画の奥行き感が変わっていくことに、学生が心を動かされていました。
さらにその絵画をどんな言葉で評価するかを考えるグループができるなど、学びが広がりました。

生活に身近な「色」、住空間の「照明」、「インテリア」に関心を持っている学生が多く、卒業研究のテーマもそうした分野が多く選択されています。
例えば照明や内装材の変化による心理的な影響をテーマに掲げた学生は、住空間の模型を製作し、壁紙を変えることで室内がどのように感じられるか、という評価実験を行いました。4年次生の実験に評価者として協力した3年次生がそのテーマに関心を持ち、同じ研究テーマに継続して取り組むことによってさらに分析を深めるといったケースもあります。

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食に関心を持つ学生は、「見た目のおいしさ」をテーマに、食べ物をおいしそうに見せるための照明や器に着目し、おいしく見せる照明環境や、より甘みを強く感じさせる色彩条件などの視点で、評価実験を行いました。
また、京都の中心に位置する今出川キャンパスの立地を生かし、地域のまちづくり活動に参加しながら京都の街並みの色彩を研究する学生や、京都で開催されたプロジェクションマッピングによる光のイベントをテーマに選んだ学生もいます。外国の街並みに興味をもつ学生は、都市照明で知られるフランスのリヨンや、カラフルな街並みで知られるイタリアのチンクエ・テッレで現地調査をしました。

調査・分析の過程で、条件設定や評価方法には様々な選択肢があります。学生には、自分がどのようなことを明らかにしたいのかを突き詰め、目的に応じた研究手法を選択してほしいと考えています。
快適なくらしを提供する上で、唯一の正解は存在しません。環境条件と心理評価との関係をデータで示すことにより、それぞれの人にとっての最適値を選択できるようにすることが大切です。心理評価を数値化することは難しいですが、柔軟に発想し追求できる面白さがあります。

こうした自立的な研究活動を通じて、学生たちの卒業論文に取り組む姿勢は受動的な態度から能動的へと劇的に変化します。物事を深く考えると同時にあらゆる視点から可能性を探り、その成果と考察をわかりやすく伝える力が磨かれます。プレゼン資料ひとつとっても、見る人の視点に立ったわかりやすいデザインへと進化します。
卒業後はハウスメーカーや工務店、内外装材や住宅設備機器のメーカー・商社など、住宅関連の企業で多くの学生が活躍しています。本学で磨いた力を発揮して、それぞれのフィールドでよりよいくらしを提案してほしいと思います。

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くらしの問題を解決したい、
そんな他者への思いやりにあふれた学生と共に学んでいます。

人間生活学科の学生は、とても親和性が高いと感じます。相手の立場で物事を考え、行動できる学生が多いため、授業でもゼミでも仲間で協力しながら学んでいます。

研究室に配属された直後は「人見知りで人と話すのは苦手です」と語っていた学生も、しばらくすると笑顔でグループ活動に参加しています。どんな人にとっても居心地がよい学科だと思います。

これはなぜか。人間生活学科で学びたいと考える根本に、くらしの問題を解決したい、困っている人の力になりたい、全ての人々にとって快適な生活環境を作りたいという思いを持っているからではないかと思います。
そんな他者への思いやりを持つ仲間と学ぶなかで、よい影響を受けているからでもあるでしょう。

住空間に関心を持っていた私は大学に進学する際に、工学部ではなく生活科学部を選択しました。豊かなくらしの創造という観点から住空間を学びたいと考えたからです。本学の生活科学部 人間生活学科を選択する学生も、同じ気持ちなのではないでしょうか。
生活者の視点で物事を捉え、自分が関心を持った分野を突きつめることができるのが本学科の魅力です。本学科での学びは生涯を支える力になると思います。

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受験生のみなさんへ

日常生活の中には、学びや研究のヒントがたくさんあるので、日々のくらしをよく観察してください。自分の住環境では当たり前のことであっても、他者にとっては当たり前でないことも多く、関心を持って周囲を見てみると、新しい気づきがあります。そして大学では、当たり前を打ち破るような生活の解を探し求めてほしいと思います。

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奥田 紫乃教授

生活科学部 人間生活学科 [ 研究テーマ ] 居住環境の評価と快適性

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 照明光の分光分布が肌の見え方に与える影響
  • リップカラーの違いが化粧肌の見えや好ましさに与える影響
  • ネイルカラーが手肌の色の見えや手の印象に与える影響
  • 照明の光色が絵画の印象に与える影響-クロード・モネの絵画を対象として―
  • 退色した絵画を好ましく魅せる照明環境-浮世絵の赤色に着目して-
  • 飲食空間に適した照明環境-照明のバランスと料理の見えを両立する照明条件-
  • 住宅の台所空間における各種調理作業に適した光環境に関する研究
  • 器の色が緑茶のおいしさ・印象に与える影響
  • 片頭痛をもつ人がくつろぎやすいLED照明環境の検討
  • リビング空間における壁面色彩とくつろぎやすさの関係
  • 北欧デザインの壁紙が室内空間の印象に与える影響
  • 窓の形状・配置の違いが室空間の広さ感と印象に与える影響
  • 視覚・触覚によるフローリング材の質感及び印象に関する研究
  • 自然素材を模した壁紙が室内空間の印象に与える影響
  • 紅葉を美しく見せる照明条件
  • 夜間街路歩行時の歩行者の顔の視認性に関する研究
  • 景色を美しく見せる格子デザインに関する研究
  • 町家カフェにおける窓装備の透視性能がカフェ内外の好ましさ評価に与える影響
  • 夜間における都市景観の形成に関する実態調査-光の街リヨンを対象として-
  • 職住共存地区における歴史的建造物からみた「地域の色」の特性と継承-京都三条通の色彩に着目して-