dwcla TALK ようこそ新しい知の世界へ

教員が語る同志社女子大学の学び

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「地域」
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「景観」
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「デザイン」

文化的景観を生かした
地域づくりへの
貢献を目指しています。

人間生活学科

麻生 美希准教授

地域の課題に計画(デザイン)で応える研究を行っています。

世界遺産である白川郷の合掌造り集落は、まさに掌(てのひら)を合わせたような美しいかやぶき屋根の建物が100棟ほど保存され、現在も生活が営まれています。
16年ほど前、建築・都市計画を専攻していた大学院生の私は、合掌造りと集落景観がどのように保存・活用されているかに興味を持ち、白川村を訪れました。しかし実際に地域に関わってみると、景観保全の取り組みが功を奏し世界遺産にも登録された成功事例である一方、交通渋滞をはじめとしたさまざまな問題を抱えていることがわかりました。車でしかアクセスできない地域に観光車両が急増。救急車や消防車などの緊急車両も集落に入れないほど渋滞が発生して地域住民の生活が脅かされ、危機遺産リスト入りも危ぶまれていました。

当時、世界遺産登録から10年を迎えた時期であり、今後を見すえた保存管理計画の策定が始まり、私も研究者として関わることになりました。一般的に行政が策定する計画は、専門のコンサルタントが案をつくりますが、合掌造り集落は地元の人たちの手で守られてきました。地元の状況を細かく知らない外部の人間が一方的につくる計画では、“絵に描いたもち”になるのは目に見えていました。そこで地元の人に何度も集まってもらい、地域が考える問題や専門家が指摘する課題をひとつずつ整理して計画の素案を住民と行政が力を合わせて作成。それが『白川村世界遺産マスタープラン』です。

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都市計画は、地域で起こっている現象を解明し、原因と因果関係を分析するだけでなく、地域の問題を解決する、もしくは地域をより良くする計画(デザイン)につなげることを目指す学問です。白川村の経験から、私は地域コミュニティの活動の蓄積がまちづくりの原動力となることを実感し、コミュニティの力を生かした持続可能なまちづくりに寄与することを研究の目的としています。

主な研究のテーマは「文化的景観」です。文化的景観とは、地域の人が風土と向き合いながら生活を営むなかで長い年月をかけてつくられた眺めです。そこからは、歴史や文化、地域コミュニティのあり方など、その地域の個性を読み解くことができ、利便性や効率性では語れない暮らしの主体性や豊かさが見えてきます。白川村だけでなく北海道美瑛町や沖縄県竹富島、現在は北海道平取町や熊本県阿蘇地域で研究を行っており、その地域の風土や土地利用、人の営みとの関係性から文化的景観の価値を客観的に明らかにし、その保全の仕組みを提案します。地域が抱える課題にあわせて、例えば、法制度の導入を検討したり、具体的なルール案をつくったり、文化的景観の美しさの理由を伝えるパンフレット作成にも取り組んできました。

時代の変化とともにそれぞれの地域では新たな問題や課題も出ており、今後も「コミュニティ」や「文化的景観」を大切にした地域のデザインに貢献していきたいと考えています。

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地域を多角的に理解し、まちづくりの提案に取り組むゼミです。

「都市空間研究室」では、専門知識を深めるだけでなく、文献調査、フィールドワーク、地域の方々や行政に話を聞くヒアリング調査などを通して、地域に対する理解を深めます。特に、土地利用、建物の配置や用途、景観などの空間的な分析をすると、自分の知らなかった地域の姿が見えてきます。そして、都市計画の研究室ですから、最終的な目標は計画(デザイン)です。解決すべき問題や目指すべき姿・課題を整理し、具体的な空間や仕組みに関する提案を行います。

さまざまな利害関係者が関わる都市計画で最も重要なのは、地域を多角的に理解した上で提案を考え抜き、自分の言葉で表現すること。この研究室で身につけてもらいたい能力です。また、提案する相手にわかりやすいようビジュアルで表現することを重視しています。デザインソフトの使い方も学びながらオリジナルの地図をつくったり、スケッチを描くことにもチャレンジします。

このような提案課題に取り組んだことのない学生でも、自分で対象地域の情報を集め、論理立てて課題を設定し、具体的なアイデアを提案するという経験は手応えがあり、面白いようです。身につけた能力は、社会に出たときに、どんな場面でも発揮できると思います。

卒論テーマも学生自身が絞り込みます。たとえば、地域鉄道、商店街、福祉施設、防災、歴史的な町並みなど、多様なテーマを応援するようにしていますが、共通点は、地域に寄り添いくらしをよりよくすること。そのために研究に取り組むことは忘れないように伝えています。

ゼミ活動の一環で、京都のまちづくりに関わる機会も増えてきました。「姉小路界隈を考える会」とともに、京都市中京区の姉小路通で、おばんざいを切り口とした生活文化の掘り起こしや、増えつつある宿泊施設との良好な関係構築のためのプログラムの企画・実施を行ってきました。また、姉小路エリアの景観形成や三条エリアの道路空間の利用について考えるワークショップに学生が参加するなど、京都の立地を生かしたフィールドワークや活動にも積極的に取り組んでいます。

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歴史と文化の色濃い京都をフィールドに学ぶ幸せ。

都市計画は、建築学部や工学部で知識や技術を身につける方法もありますが、「くらし」から都市や地域のあり方を考えることが本学の生活科学部 人間生活学科の魅力です。「地域の人にとっての豊かな生活」を実現するために、その地域をどうデザインしていくか、「すまい」「よそおい」「つながり」分野を幅広く学び、考えられます。地域の人が幸せでなければ、都市計画の意味はありません。
人のくらしが反映された文化的景観を研究の対象としている私にとっても、本学科に着任したことはとてもよかったと思っています。

キャンパスが京都の中心にある、というのも魅力です。歴史と文化の色濃いまちで、周辺には住宅地や商店街が広がり、地蔵盆など生活に密着した文化に日々触れることができます。京都で学べるのは、本当に幸せなこと。研究仲間からも、立地のよさを羨ましがられるほどです。
何より本学に着任して私が感じている良さは、フラットな関係のなかで意見を交わし、チームワークよく活動する様子です。「女子大、最高」だと思います。

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受験生のみなさんへ

くらしは、だれにでも関係します。住まいや地域がどうあるべきか考えを深め、よりよい暮らしを構想し、具体的に表現することが求められている時代だと思います。ぜひ、人間生活学科で一緒にくらしのデザインについて学びましょう。

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麻生 美希准教授

生活科学部 人間生活学科 [ 研究テーマ ] 都市計画/世界遺産や景観の研究

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 自主防災から見た住宅地における地域ボランティアの役割と重要性
     −千葉県印旛郡栄町安食台3丁目を事例として−
  • 宝塚駅周辺の景観変遷
     −温泉の街から歌劇の街への発展を追って−
  • 学生主体のまちづくりイベントが地域に及ぼす影響
     −京都市 西陣地域の「都ライト」を事例として−
  • 商店街のもつ地域コミュニティ機能とまちづくりにおける商店街の役割に関する研究
     −京都市内の商店街を事例として−
  • 歴史文化型都市におけるオーバーツーリズムの研究
     −京都を事例として−
  • 愛される滋賀県の公立図書館における現状と課題
  • 歴史的変遷からみる水都大阪の水辺利用に関する研究
  • 滋賀県の宿場町の歴史資源を活かしたまちづくりに関する研究
  • 道の駅の地域活性化における役割に関する研究
     −近畿内の道の駅を対象として−
  • 分譲戸建住宅地における景観評価
     −住宅の形態とその並びに着目して−
  • 京都府内の地域鉄道を中心としたまちづくりに関する研究
  • 地域におけるコミュニティセンターが果たす役割
     −滋賀県栗東市における公民館からコミュニティセンターへの移行に着目して−
  • 都市公園の価値の動向
     −大阪市の3つの公園を事例に−
  • 大阪府におけるコンパクトシティの現状と課題
  • 太宰府市の地域遺産とそれを取り巻く地域住民