「環境」
×
「社会」
×
「生活」
人が地域で心豊かに
生きていくための
調査・分析を行っています。
人間生活学科
齋藤 朱未教授
農山村の持続的な発展への寄与を目指す研究です。
日本各地には、農家の方が生産した農作物を自分たちで調理し、提供する「農家レストラン」があります。なかでも私は、農山村の女性が起業し、経営する「農家レストラン」に着目して研究を続けています。
昔はお小遣いもなかった農山村地域の女性たちがどのように自立し、地域にどういった影響を与えているのか、主に私が学生時代を過ごした東北の農家レストランを対象に調査・分析を行っています。定期的に現地に足を運び、起業の動機や経営状態、後継者問題など、聞き取り調査を行うとともに、周囲の人に対しても、その活動をどう見ているのかなどアンケート調査を行いました。これら研究活動により、農山村地域の持続的な発展や、女性の起業活動支援への活用を目指しています。
私は「農村計画」の分野で研究を続けてきました。少子高齢化が進み地域活力が低下する農山漁村地域において、どうすれば人々が安心して心豊かに生活できるのか、環境、経済、都市部との関係などから学際的に考える学問です。私の研究の軸は、現地に出向いての聞き取り調査。とにかく、人に会って話を聞き、人の生活にクローズアップします。
前述の「農家レストラン」に加え、「東日本大震災によるコミュニティ再構築」も長く取り組んでいるテーマであり、岩手県陸前高田市と福島県飯館村で研究活動を行っています。津波により田畑が流された陸前高田市では、地域の方に話を聞いて現地調査を行い、農業の再生・復興のプロセスやその課題などを研究しました。
一方、原発事故の影響で計画的避難区域に指定され、全村民が一時避難した飯館村では、コミュニティ全体を見ています。かつては各集落で活発に地域づくりをしていた村の村民が、バラバラに避難せざるを得なかったことから元々のコミュニティが崩壊。そこで避難中の村民に聞き取り調査を行い、どうすれば帰村後の人間関係を再構築できるかを研究協力者として分析しました。それらデータを活用して、村民と研究の代表者が行政への提案を行っています。2017年3月に帰村が始まり、落ち着き始めた今、研究を再開したところです。
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フィールドワークを含め自分でやり遂げる達成感を感じてほしい。
「環境計画学研究室」である私のゼミでは、環境問題について考える学生や、私の研究分野である農村計画や都市計画から卒業論文のテーマを考える学生もいます。テーマ設定は、学生の好奇心と自律性にまかせており、それぞれ自分の考えのもとで卒業論文に取り組んでいます。例えば、京都市のゴミ問題にスポットを当て、家庭ゴミの出し方、市のゴミ処理に対する市民の意識調査を行ったり、林業のあり方に興味を持って京都の木材管理の調査を行う学生、病院給食と地産地消について研究する学生など、さまざまです。
いずれも「計画学」の研究であり、あるものごとに対して現状を調査して課題を明らかにし、課題をよりよい方向に解決すべく提案することが卒業論文の目的です。調査にあたっては、インターネットや書籍の活用のみならず、なによりも当事者や関係者に直接話を聞くフィールドワークの指標が必要であり、学生自らアポイントメントを取り、調査を行っています。学生には「ただ話を聞きたい」ではなく、自分の明らかにしたいことを明確に相手に示しなさいと伝えています。 そういったアポイントメントを取る際の注意点や事前準備、日程調整などの指導は私がしっかりと行い、調査結果に対しては細かく指摘をし、提出物などの締めきりは厳守です。しかし、あくまでも学生の自律性を重視した、ティーチングではないコーチングのスタイルをとっています。
こうした研究室での活動を通して、ものごとを多角的に見て考え、自分が置かれている状況を理解したうえで、やるべきことを的確に遂行する力を養ってほしいと考えています。何度も壁にぶつかりながらも、大学生活の集大成を自分の力で卒業論文として形作る。学生時代にしかできない経験であり、社会に出たときに、自分に対する自信や仕事への取り組みの土台になると思います。
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多様な学びから、自分だけのフィールドを見つけ出せる。
人間生活学科の学生は、なんらかの問題意識を持ち「具体的に活動したい」と熱意を持っている人が多いと感じます。興味関心の幅が広く、最初は具体的な対象が見えていなくても、学科で多様な分野を学ぶうちに対象が明らかになり、最終的に卒業論文として形になるようです。「くらし」にかかわる多彩な学びから、自分の興味を喚起できる分野を見つけ出せるのは、人間生活学科ならではだと思います。
ゼミにおいても、異なる対象に興味を持って研究をする仲間から、客観的な意見をもらえる良さがあります。研究テーマは違っても、課題を明らかにし、よりよい方向へ向けて解決したいという最終目標は同じ。学生同士は非常によく協力し合っており、これも人間生活学科で学ぶ魅力のひとつだと思います。
また、入学試験では文系科目で受験する人が多い学科であるものの、環境や都市計画といった理系寄りの分野に興味を広げて研究することも可能です。文理の枠を超えて興味のあるフィールドを追究し、自分の能力を伸ばすことができます。
多様な要素を組み合わせた学びは、人間生活学科のみならず、同志社女子大学の教育理念であるリベラル・アーツそのものだと思います。また、私が取り組んでいる環境、経済、社会といった多角的な視点で人々の生活を考える研究もリベラル・アーツにつながっていると感じています。専門的な知識だけでなく、幅広い知識や教養を吸収して社会に出ていくことができる。同志社女子大学だからこその学びだと思います。
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受験生のみなさんへ
“入学してから自分の学びたいことを見つけられる。また、学ぶ目的があって入学しても、途中で興味の対象が変わることもある。そうした中でも存分に学べるのが人間生活学科のよいところ。”多くの学生がそう言います。さまざまな立場の人の多様な見解から学ぶことができ、それらが身近な「くらし」に直結しているからだと思います。私たちと一緒に学びましょう。
卒業論文テーマ例
- 買い物難民の暮らしの向上にむけて -移動スーパーとくし丸を事例として-
- 京都府におけるこども食堂のあり方 -こどもの孤食を解決するために-
- 子どもの成長を促す公園のあり方 -木津川市内の公園の実地調査を通して-
- 京町家の継承に向けた実態把握
- 国内木材現場の発展的モデル構築に向けた検討 -オーストリア林業をモデルとして-
- 山口県周南市における農家レストランを活用した地域活性化の可能性
- イノシシ獣害対策におけるジビエへの利活用と普及可能性
- 転換期を迎えた地域おこし協力隊の変容とその未来像 -兵庫県三田市の活性化に向けて-
- 病院給食に地場産農産物を活用する利点と課題点 -学校給食と関連付けて-
- 持続可能でより豊かに暮らしていくために -ひとと環境にやさしい交通手段LRTに着目して-
- 宿泊施設としての空き家の活用と地域活性化
- 祭りの継承と変容 –奈良の春日若宮おん祭を事例に-
- 南丹市美山エコツーリズムの現状と課題
- 日本人の米離れと今後の課題について -米粉の活用を中心に-
- 御堂筋北地区に関する印象評価と分析
- 京都市の家庭ごみに対する市民の意識調査
- 空き家を活用したサテライトオフィス -徳島県神山町からみる新たなまちづくり-
- 歴史的変遷にみる鴨川景観と現在の景観対策 -室外機景観対策補助事業-