「ことばの教育」
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「国際理解」
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「多文化共生」
国際理解と多文化共生に
外国語教育からアプローチします。
現代こども学科
岩坂 泰子教授
言語学習を通して国際理解と多文化共生を目指す
研究と教育の活動に取り組んでいます。
私の研究テーマは小学校の外国語教育です。ことばは人間の心の発達や人間関係の構築のためにとても大切です。人は皆、まず母語を学びます。外国語は母語(第一言語)がしっかりしていなければなかなかうまく発達しません。現在私は、日本社会で増加している外国にルーツを持つ人々のこどもたちの母語、あるいは家庭の言語を教室でどのように活用できるか、また、ことばになりにくいモヤモヤした気持ちを、ことばによって表現するためにどのような手立てが有効か、といったことに興味を持っています。
出発は、外国語(第二言語)の学習・習得に関する研究でした。自分にとって外国語である英語を教えられるようになりたいと留学したアメリカでの教育実習で出会ったベトナムやハイチからの難民たち。過酷な境遇を生き抜いてきた彼らとの出会いはそれまで考えていた言語教育のあり方を根本から捉え直すきっかけとなりました。
帰国後は結婚・妊娠・出産を経て、子育てをしながら国際高校や幾つかの大学で英語を教えていました。子どもが小学生の時、公立の小学校で外国語が必修化されたことがきっかけで、 初等教育の中での外国語教育について学びたいと思うようになりました。そこで、教育大学の教職大学院に入学し、こどもの発達について学びながら小学校教諭一種免許取得を目指しました。2人のこどもを育てながら、学生と教員を掛け持ちする毎日でした。
そのような中で私が関心を持ったのは、日本でも増加しつつあった外国籍の子どもたちのことばの問題です。外国語といえば英語という印象を持つ人が多いと思いますが、近年の日本では外国人労働者の増加などによって、学校現場では英語以外の言語、例えば、ポルトガル語や中国語、ベトナム語などを母語とする児童が増えています。
日本の学校の授業では日本語、そして、「外国語」では英語しか扱われない。日本語も英語もかれらにとっては外国語です。家庭ではポルトガル語や中国語、ベトナム語が話されていますが、学校の友だちは、かれらが家で何語を話しているか、聞くチャンスはありません。このように、学校や社会で普段ふれることがほとんど無い言語を可視化し、多言語で学ぶことのできるような教材を開発することが、多文化共生の第一歩につながるのではと考えたのです。
そこで研究分野や領域が重なる人たちと共に、多言語の教材開発を始めました。世界には多様な言語があり、知らないはずの言葉でも言語同士を比べ、よく観察してみると規則性に気づきます。その規則をたどっていくと、おのずと言葉の普遍的な仕組みが分かっていく。開発したのはそんな教材です。
言語は人が作ったものであり、人が作りあげてきた言葉の中に文化が埋め込まれています。多様な言語あるいは言語の多様性に触れることは、言葉を通して人々の歴史や異なるものの見方考え方を知ることにつながります。
昨年、研究活動の一環で、大きな製造業の企業がある市の中学校で、他の研究者らと共に開発した英語の授業をさせていただく機会がありました。この授業は、英語「で」授業を行いつつ、生徒の活動では何語を使っても良い、という点が重要なポイントです。その学校の生徒の半数はブラジルルーツで、かれらの家庭言語はポルトガル語です。この学校の生徒にとって英語は、誰にとっても等しく「外国語」であるという意味で中立的な言語です。
しかし、日本語よりもポルトガル語の方が英語に近い側面があります。英語の授業は、日本語で受ける授業は、常に不利な状況にあるポルトガル話者の生徒にとって有利な条件となるため、かれらの自信につながりやすいのではないか。教える−教わるという普段の関係性が逆転することによって、クラス全体の学びが深くなるのではないか。そんな願いを込めて行った実践授業でした。
今後、学校現場では外国にルーツを持つこどもがさらに増えることが予測されており、多文化共生への道を模索する必要性はさらに重要になります。実際に現代こども学科の学生は、小学校や幼稚園に教育実習に行くと、日本語ではない言語を母語とするこどもに出会っています。それぞれの家庭の文化や慣習の違いにどう対応するか、という課題が日常的に起こっているのです。
教員が全てのこどもの家庭の言語を理解するのは現実的ではありません。しかし、教員とこどもたちが、多言語に触れ、ことばに埋め込まれた普遍性や独自性を知ることで、言語を学ぶ楽しさに気づいたり、さらには言語の学び方をあらためて問い直すきっかけになれば・・・。多文化共生は、こうした小さな喜びや発見の先に拓かれる希望ではないでしょうか。
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学生の行動力を活かして地域や社会とつながり、
国際理解と多文化共生とは何かを深めるゼミです。
私のゼミのテーマは、国際理解と多文化共生です。私は、2023年4月に本学に着任したばかりなので、今年度はまず学生がどんなことに取り組みたいか、ブレーンストーミングを重ねています。学生たちからは、他国の文化に触れたい、各国の料理を食べてみたいから始まって、地域の小学校に出張授業に行きたい、ボランティアしたいなど、さまざまなアイデアが出てきていますので、できる限り学生の希望を実現させつつ、地域や社会で多様な人とどのようにつながっていけるか、いきたいかを共に考えています。また、海外からの留学生が学ぶ同志社大学のグローバル・コミュニケーション学部との交流や、地域の小学校での国際理解や多文化共生をテーマにした出前授業なども進めており、ゼミ活動を通して視野を広げ、それぞれのキャリア選択に活かしてほしいと考えています。
ゼミ生の中には、世界の貧困がどういう仕組みで起こっているのか、それに対して自分たちに何ができるのかといった社会的な視点で取り組む学生がいます。また、自分自身が幼いころに外国生活で言葉や生活習慣の違いで苦労をした経験から、日本で暮らす外国籍のこどもたちがどんなことに困っているかを知り、その解決に向けた支援策に関心を持つ学生もいます。
私が本学に着任して驚いたのは、学生の社会問題への意識の高さと、行動力です。例えばボランティアの参加を募ると、続々と手が挙がります。好奇心があってフットワークが軽く、打てば響く学生が多いので、私もかれらの経験や気づきを共有させてもらうのがとても楽しみです。
学生との関係の中で心がけているのは、かれらのやってみたい、挑戦したいという気持ちをできるだけ潰さないことです。自分で自分にブレーキをかけることなく、勇気を持って挑戦してもらいたい、そのための環境づくりをしたいと考えています。
日本は、妊娠・出産を担う女性にとってキャリアを構築する上でまだまだハードルが高い社会です。学生には、自分らしく生きるために何かを犠牲にすることなく、価値観の異なる他者と折り合いながら、自分なりの方法をしなやかに模索する仲間を増やしていってほしいです。
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必ずしも教員にならなくていい。学生の選択を尊重する大学です。
現代こども学科は、こどもとは何かを深く理解し、こどもが健やかに育つ社会づくりを目指して学ぶ学科です。卒業後の進路は、必ずしも教職を目指す必要はありません。様々な体験を通して自分で自分の未来を選びとれる学科です。本学科では、こどもの視点で社会を見つめ、これまでの「あたりまえ」を問い直すことを基本としています。そして、私たち教員は、学生自身の選択を何よりも尊重し、寄り添うことを大切にしています。
さらに、多くの女性のロールモデルがいること、卒業生と在学生のつながりが強いことも本学の強みだと思います。例えば2023年に行われた現代社会学部開設20周年記念イベントでは、入学したばかりの一年生が様々な業界で活躍する卒業生にインタビューをする企画がありました。
世界で活躍する先輩と直接話をした学生たちは「こんな機会を得られて本当に同女に入学してよかった、先輩と会えてよかった」と大興奮でした。
インタビューを受けた先輩も「同女の先生たちは、学生を信頼して、一人ひとりのチャレンジを応援してくれる。今の自分があるのは、そうした先生たちのおかげなんだよ」と語りかけてくれました。学生にとって自分につながる先輩の言葉は、ある意味で教員の言葉よりずっとパワフルで、かれらの心に届くことを実感した一場面でした。
本学の学生は、とても朗らかです。その朗らかさは、国境を越え、文化の違いを超えて、多様な人とつながっていくうえで大きな力になると思います。
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受験生のみなさんへ
人はつながりの中で生きています。世界のあちらこちらで紛争や戦争が起きている複雑で困難な時代ですが、共にあるために、私たちに何ができるかを一緒に考えていきましょう。私は同志社大学の神学部で学び、そして同志社女子大学に戻ってくることができました。本学の創立者である新島襄先生がおっしゃったミステリアス・ハンドに導かれているのだと思います。本学でみなさんにお会いできることを、心から楽しみにしています。
卒業論文テーマ例
- 放課後児童クラブの実態と考察:イギリスの取り組みとの比較を通して
- 女性のワークライフバランスの維持に向けた支援の検討
- 現代における女子大学生の結婚観:女性活躍推進に着目して
- 感覚統合を育む幼児のための運動遊び・保育環境に関する検討
- ディズニー・プリンセス作品に見られる女性像・男性像の変遷
- 弱視児童と共に学ぶアダプテッド・スポーツを取り入れた通常校体育授業の検討
- 児童の運動有能感を高める体育授業の研究
- 非認知能力を育む幼児教育のあり方
- 赤ちゃんと音の関わり:胎児と乳児への音楽による効果
- 幼児期の被服行動と大学生の被服に対する価値観の関連性について