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教員が語る同志社女子大学の学び

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「学ぶ」
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「育つ」

こどもから学べる
教師がいる教室でこそ
こどもは育っていきます。

現代こども学科

吉永 紀子准教授

継続的に授業を見せてもらい、こどもの変化を教師と振り返ります。

「問題は教師から与えられるもの」ではない。こどもが自分で問いをもち、自律的に学ぶことのできる授業をどうつくっていくか。教育方法学を専門とする私の研究テーマです。そうした授業をつくるためには教師も学びが必要であり、教師の自律的な学びについても研究しています。

前任校がある福島県下の公立小学校に15年、愛知県下の公立小学校にも6年ほど定期的に通い、研究を続けています。その学校が大切にしている学びを実現し、継承できるように、外部の視点からお手伝いをしています。
アプローチとしては、継続的にひとつの教室の授業を見せてもらい、45分間のこどもの変化と年間を通した変化を見ていきます。そして「あの児童はこんなことを言いたかったのではないか」、「実はあの児童にはこんな力があるんじゃないか」といったようなことを教師と一緒に振り返り、教師自身が課題を見つけ出し、自律的に学べるようサポートします。こうしたリフレクションによるこどもと教室の変化を、国語科授業論の研究者である本学の松崎正治教授をはじめ、他大学の研究者らとも協働して共に見ていきます。

もちろん、小学校内で教師同士がお互いの授業を見てリフレクションをするのが本来のあり方だと思います。私はそこにお手伝いするチャンスをいただき、共に活動していくことで、研究成果を教育現場や学生指導に還元したいと考えています。
そして何よりも私自身がこどもの学びや授業に対する見方・考え方を更新して、深く学ぶ機会を得ているのです。

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「こどもから学ぶことのできる教師のいるところでこそ、こどもは育つ」と私は考えています。つまり授業が思うように進まないときに教師自身が「こどもが何かを発しているのではないか」、「自分の予定調和で進めていないか」と、こども目線で考えられるか、です。
大人がこどもから学ぶ姿勢をなくした途端に、教室はこどもが学べる場ではなくなります。簡単ではありませんが、複数の大人の視点でこども一人ひとりを見ていくと、教師も気づきを得て成長できると、これまでの経験から実感しています。こどもが見えるようになりたい、そう願って学び続けることが教師であり続けるために必要なのです。

こどもの自律的な学びの根っこは、人のことばを聴き、自分で考え、自分のことばで語れることです。友だちや教師のことばをじっくりと聴けるこどもを育てるためには、聴いてもらえる教室であることが重要です。授業ではどうしてもプレゼンテーション能力など、アウトプットに目が向きがちですが、人のことばを丁寧に聴くことができなければ、単にことばが飛び交っている空間に過ぎません。

こどもがこどもから学んでいくときの吸収力は非常に大きく、意見を言い合える教室が自律的な学びの場となります。「ちょっとその考えはおかしくない?」とそれぞれが問いを持ち、対話ができる教室は集団として大きく成長します。問題が与えられてから考えることを当たり前だと思わず、自分で問いを見つけ出し、人の話を丁寧に聴き、深く考えることは、こども時代から必要な経験だと考えています。

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問いを追究し、仲間と議論を交わし一人ひとりが成長するゼミです。

「こどもと教師が共に学び育つ授業」をテーマに掲げるゼミですが、教職に就くことを希望する学生のみならず、企業就職を目指すゼミ生もおり、卒業研究は多彩です。保育について、あるいは企業が求める女性リーダー像といったテーマもあります。私自身の研究テーマが「学び手が自律的に学んでいくこと」なので、それぞれが見つけた問いに向き合い、ゼミでの対話を重ねて追究することを目指しています。

ゼミ生のほとんどが教育実習という共通の体験をしているため、それをもとに多様な視点から議論ができるのもゼミの特徴です。教育実習を経ると、学生は驚くほど成長します。1か月間先生という服を着せてもらい、こどもたちに慕われて失敗も重ね、人が育つ場で学生自身も大きく育ててもらって大学に戻ってきます。異なる問いを持った学生が共通の経験を得て、現代社会を広い視野からとらえ考えるため、議論は非常に活発です。

ゼミ活動としては、毎年3年次生が取り組む「ミライバトン・プロジェクト」があります。毎年コンセプトを決めて、1人ひとりが取材やリフレクションを重ねて執筆を担当し、自分たちのことばでひとつの冊子を完成させます。教育実習やインターンシップ、ボランティア、部活動などでの経験について立ち止まって振り返り、仲間との対話から自分の学びを意味づける試みです。

将来を考える大切な時期でもあり、自分自身と向き合うと同時に、「あなたのすごいところはこんなところ」と仲間からのフィードバックを受け、新しい自分を発見することもあります。このプロセスを通して見えてきたものを、まだ見ぬだれかの学びにつなげたい、との想いをこめ、ゼミの卒業生が「ミライバトン・プロジェクト」と命名しました。
3年次生では、協働してひとつのものを作る経験をし、人に伝える文章を書く能力を磨き、大学生活の集大成である4年次生では自分の問いを追究して、それぞれが卒業論文に取り組みます。

ゼミも学生が出ていく社会も、こどもたちが学ぶ教室も、一人ひとりの声を尊重し、安心して対話ができる場であってこそ、新しいものを生み出し、組織・集団としての力がつくと思います。ぶつかりあいも含めて個々人が尊重し合い、当たり前を疑いながら自分で問いを持てる居場所を作っていく。ゼミで得たこの経験の種を、卒業後は広く社会に広げてほしいと願っています。

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新しい自分に出会える大学です。私も出会えました。

学科のディプロマ・ポリシーにも明記されていますが、現代こども学科では、既成概念にとらわれずに新しいものの見方や考え方を育むことを大切にしています。新しい見方を育むためには、経験・学びはもちろんのこと、多様な人との関わりが欠かせません。
その点、本学科はこどもを取り巻く社会全体を考える学科ですから、実に多様な人がいます。卒業生は教育・保育の現場だけではなく、人がどう育っていくかを考え、企業の人事部門で力を発揮している人も多数います。教員も互いの専門を尊重しながら常に「新しいことをしよう」と考え、行動しています。

私は1年次生の最初の授業で、いつも学生に「絶対に新しい自分に出会えるよ」と伝えています。人が豊かに育つ社会に興味を持ち、自分を育てることに関心を持つ仲間から刺激を受け、新しい自分に出会えるよ、と。

私自身も同志社女子大学に着任してから、新しい自分に出会えました。指導がうまく進まなかった着任当初、「みんなからどう見えているか教えてくれない?」と学生に相談しました。すると、たくさんの素直な意見が集まり、私の本質を見直すきっかけを与えてくれて、自分の見方を変えることができました。新しい自分に出会える経験をしてきた学生のおかげで、私も同じ経験をさせてもらい、今があります。

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受験生のみなさんへ

現代こども学科では、もちろん小学校や幼稚園の教員免許や保育士資格を取得できますが、それらは学んだ結果であり、社会貢献するときに必要な手段です。手段を目的にするのではなく、自分が何に関心をもって学びたいか、どんな自分になりたいかを考えてほしいと思います。本学科はそれが見つかる場所であり、みなさんが本気で学びたいことを徹底的に学べる場です。  

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吉永 紀子准教授

現代社会学部 現代こども学科 [ 研究テーマ ] 子どもと教師が共に学び育つ授業

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 専門職としての保育者の言葉がけと援助 
     ―子どもが泣いている場面に着目して―
  • LGBTや性同一性障害に係る子どもに対する教育現場の現状と対応 
     ―多様な性意識を持つ子どもが過ごしやすい学校生活を送るために―
  • 行きたくなる学校図書館に必要なもの 
     ―空間・蔵書・人の3視点から考える子どもと図書館の新たな関係―
  • 絵本の読み聞かせによる親子間のコミュニケーション 
     ―ブックスタートの取り組みを通して―
  • 子どもにとって望ましい共食の在り方とは 
     ―共食が成り立つために必要なこと―
  • 言葉を通して自尊感情を高める学級づくり
  • ユニバーサルデザインの視点を活かした協同学習
  • 日記行動がもたらす青年期の発達課題における意義 
     ―自己物語を書くことの重要性―
  • 保育現場における「遊び」への保育者の援助のあり方
     ―保育者による環境構成とことばがけに着目して―
  • 失恋が青年期後期に与える影響
     ―失恋時のストレス尺度、ストレスコーピング、失恋後の立ち直りに焦点をあてて―
  • 子どもに浸透する道徳授業
     ―道徳的実践力に着目して―
  • 保育者と教師の相互理解を基盤にした保幼小連携
     ―両者の意識が変容するプロセスに着目して―
  • 小学校4年が「わかる・できるようになる」算数授業
  • 園生活の積み重ねから見る子どもの遊びこむ姿
     ―知が育つ過程を支える保育者の専門性―
  • 児童が主体的に思考し続ける授業づくり
     -教師の発問の重要性―
  • 展開していく子どもの遊びと遊びを促す環境構成
     ―各インドアプレイグラウンドならではの付加価値に着目して―
  • 小学校の学級に潜む「綱渡りの関係」
     ―スクールカーストを通して見た人間関係―
  • 児童期初期の学級で「協同的関係」を育む
     ―児童主体の教育と教師の支援の在り方―
  • 幼児期の他者との関わりが自尊感情の形成・発達に及ぼす影響
     ―母子関係における両者の自尊感情に着目して―
  • 児童の友人・仲間関係の構築から考える「安心できる学校」づくり
     ―学校内外の人的環境に焦点を当てて―